【浮体式洋上風力】国交省、海上施工の技術開発7件を採択。FLOWCON・五洋建設・戸田建設ら

【浮体式洋上風力】国交省、海上施工の技術開発7件を採択。FLOWCON・五洋建設・戸田建設ら

2026年7月24日、国土交通省港湾局は「浮体式洋上風力発電の最適な海上施工方法の確立に向けた技術開発制度」の第1回公募について、7件の技術開発案件を新規採択した。国の委託研究開発として予算を支給する枠組みで、費用負担限度額は1件あたり各年度で上限1億5,000万円、実施期間は原則3年以内である。

採択一覧を眺めて最初に気づくのは、そこに「風車」も「浮体」も一件も入っていないことだ。7件はすべて、できあがった浮体式風車を海に据え付けるための技術に充てられている。クレーン、係留索、アンカー、海底岩盤の掘削、気象海象予報、そして基地港湾の使い方——である。

国内の洋上風力の議論は、浮体形式(スパー/セミサブ/TLP/バージ)や風車の大型化に集中しがちだ。だが浮体式のコストと工期を実際に支配しているのは、設計図の上にある構造物ではなく、それを海に運んで固定するまでの一連の作業である。今回の採択は、政策側がその認識に立っていることを示す資料として読める。

目次

採択7件は「据え付ける手」への投資だった

まず採択案件の全体像を確認しておく。国土交通省が公表した別紙(五十音順)に基づく一覧は以下の通りである。

技術開発案件名代表機関/分担機関期間
海上作業基地を活用した施工方法に関する技術開発
海上作業基地の施工法検証(動揺解析、水理模型実験等)および施工判断システム開発
浮体式洋上風力建設システム技術研究組合(FLOWCON)R8〜R10年度
(3年間)
基地港湾利用に適した国産リングリフトクレーン生産システム確立に向けた技術開発
高張力パイプ鋼の国産クレーンジブ部への採用に向けたモックアップ実証、設計・製造技術の確立
株式会社タダノインフラソリューションズR8〜R9年度
(2年間)
パルスパワー衝撃破砕技術を用いた浮体式洋上風車の海洋底岩盤掘削
発破工法と比較して水深の影響を受けず安全な完全非火薬破砕工法の確立
戸田建設株式会社/国立大学法人熊本大学R8〜R10年度
(3年間)
浮体式洋上風力発電海上施工のための高精度気象・海象予報に基づく作業可否予測システム開発
実時間の高精度気象・海象・動揺予測に基づく予報変化発報機能を有するシステムの構築
株式会社気象工学研究所/株式会社環境GIS研究所R8〜R10年度
(3年間)
浮体式洋上風力発電における繊維ロープを用いた省力化係留施工技術の開発
合成繊維ロープとチェーンのハイブリッド係留の施工方法確立、繊維ロープ海底仮置き時の品質影響評価
株式会社吉田組/東京製綱繊維ロープ株式会社R8〜R10年度
(3年間)
洋上施工を革新する経済的・高性能アンカリング技術の開発
高把駐性・高耐震性を備えた経済的な新アンカーの設計法および施工法の確立
五洋建設株式会社/国立大学法人東京海洋大学/国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所R8〜R10年度
(3年間)
洋上風力発電における基地港湾利用調整システム構築に関する技術開発
不確実性下で基地港湾利用を動的に評価し、施工計画と港湾リソース配分を最適化するシステムの構築
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所/国立大学法人東京海洋大学R8〜R10年度
(3年間)
出典:国土交通省「令和8年度 浮体式洋上風力発電の最適な海上施工方法の確立に向けた技術開発制度 新規採択案件一覧」(2026年7月24日)より作成

顔ぶれも特徴的だ。マリコン(五洋建設、戸田建設)、クレーンメーカー(タダノインフラソリューションズ)、ロープ・繊維(東京製綱繊維ロープ、吉田組)、気象コンサルティング(気象工学研究所、環境GIS研究所)、そして公的研究機関と大学(海上・港湾・航空技術研究所、東京海洋大学、熊本大学)。発電事業者も商社も、風車メーカーも一社も入っていない。国費が入ったのは、純粋に施工側のサプライチェーンである。

この制度自体は2026年4月7日に公募が始まった新設枠で、技術開発テーマは「港湾における洋上風力発電設備の施工に関する効率化・高度化」と「海上における洋上風力発電設備の施工に関する効率化・高度化」の2本立てだった。契約は単年度で、毎年度の評価結果に基づいて継続の可否を判断する設計になっている。

なぜ浮体式は「施工」がコストと工程を支配するのか

着床式洋上風力では、SEP船(自己昇降式作業台船)が海底に脚を降ろして船体を持ち上げ、実質的に陸上と変わらない安定した作業床をつくる。その上のクレーンで風車を組み立てる。揺れない足場があるから、陸上の建設工事の延長として工程を組める。

浮体式ではこれが使えない。基礎そのものが海に浮いているからだ。水深50m超、EEZを視野に入れれば数百mの海域では、SEP船の脚は届かない。結果として、施工の考え方が根本的に変わる。

浮体式の海上施工は、大きく次の工程に分解できる。

  1. 部材製造・輸送:鋼材やコンクリート部材を製造工場からヤードへ運ぶ
  2. 浮体組立:ドックまたは港湾ヤードで浮体基礎を組み立て、進水させる
  3. 基地港湾への曳航・係留:組み上がった浮体を風車搭載場所へ移す
  4. 風車搭載:タワー・ナセル・ブレードを浮体上に載せる。工程全体で最も難しい
  5. 設置海域への曳航:数十kmから百km超を、船団を組んで低速で曳く
  6. アンカー設置・係留索敷設:本来は先行工程。海底にアンカーを打ち、係留索を仮置きしておく
  7. 係留接続(フックアップ):曳航してきた浮体と係留索をつなぎ、位置を保持する
  8. ケーブル接続・試運転:ダイナミックケーブルを接続し、系統につなぐ

このうち工程を律速するのは、④の風車搭載と、③⑤の曳航に伴う港湾占有である。

五洋建設ら7社が2025年1月に設立した浮体式洋上風力建設システム技術研究組合(FLOWCON)の試算は、この構造をよく示している。15MW機を60基設置する海上施工の基本シナリオでは、ドック等に保管していた浮体基礎を基地港湾へ曳航し、風車を搭載し、設置水域へ移すまでの全体期間が2基あたり最短で26日かかると見積もられている。さらに大型浮体の曳航を秋田県能代港でシミュレーションしたところ、幅150mの船団が時速3〜4kmで進むため、港湾を半日以上占有することが判明したという。

ここに日本固有の制約が重なる。台風と冬季季節風である。作業可能な気象海象ウィンドウが欧州より短く、しかも予測が外れれば船団は洋上で待機するか退避する。曳船、アンカーハンドリング船、クレーン台船を組んだ船団の傭船費は1日あたり数千万円規模になり得るから、待機はそのまま原価に乗る。

そして政策目標との落差が大きい。第7次エネルギー基本計画(2025年2月閣議決定)は2040年までに浮体式を含む30〜45GWの案件形成を掲げ、洋上風力産業ビジョン(第2次)は浮体式単独で2040年までに15GW以上を目標としている。45GWを15MW機で割れば3,000基。年平均でも数百基規模の設置が必要になる計算だ。これに対し、現行の施工能力は年10基程度が限界とされてきた。桁が2つ足りない

浮体式のコスト構造を風車価格や資本コストで語る議論は多いが、この差を埋めるのは施工生産性であって、風車の値段ではない。

採択7件を工程にマッピングする

採択案件の記載内容に沿って整理すると、7件は4つのカテゴリに分かれる。いずれも上記の工程分解のどこかに直接対応している。まず全体の対応関係を俯瞰しておこう。

浮体式洋上風力の海上施工工程と、国交省・採択7件の対応関係

工程①〜⑧のどこに国費が投じられたか。係留・アンカー系(工程⑥⑦)に3件が集中している。

陸上・港湾フェーズ

部材製造・輸送

鋼材・コンクリート部材を製造拠点からヤードへ搬入

採択案件なし

浮体組立・進水

ドックまたは港湾ヤードで浮体基礎を組み立て、進水させる

採択案件なし

基地港湾への曳航・係留

組み上がった浮体を風車搭載場所へ移動。幅150mの船団が港湾を半日以上占有

⑦ 基地港湾利用調整システム/海技研・東京海洋大

風車搭載

タワー・ナセル・ブレードを浮体上に搭載。工程全体で最大の難所

② 国産リングリフトクレーン/タダノIS① 海上作業基地/FLOWCON(洋上搭載への転換)⑦ 基地港湾利用調整システム/海技研・東京海洋大
曳航フェーズ

設置海域への曳航

船団を組み時速3〜4kmで曳航。浮体2基あたり②〜⑤で最短26日(FLOWCON試算)

① 海上作業基地/FLOWCON(港湾占有の回避)
洋上フェーズ

アンカー設置・係留索敷設 ※先行工程

浮体到着前に海底へアンカーを打設し、係留索を仮置きしておく

⑥ 経済的・高性能アンカリング/五洋建設・東京海洋大・海技研③ パルスパワー衝撃破砕(岩盤掘削)/戸田建設・熊本大⑤ 繊維ロープ省力化係留/吉田組・東京製綱繊維ロープ

係留接続(フックアップ)

曳航してきた浮体と係留索を接続し、位置を保持する

⑤ 繊維ロープ省力化係留/吉田組・東京製綱繊維ロープ⑥ 経済的・高性能アンカリング/五洋建設・東京海洋大・海技研

ケーブル接続・試運転

ダイナミックケーブルを接続し、系統連系のうえ試運転へ

採択案件なし

全工程横断(特に③〜⑦の海上作業)

気象海象ウィンドウの判断が稼働率=待機日数を左右する

④ 作業可否予測システム/気象工学研究所・環境GIS研究所

採択7件一覧(別紙・五十音順の掲載順)

  • 海上作業基地を活用した施工方法/FLOWCON(3年)
  • 国産リングリフトクレーン生産システム/タダノインフラソリューションズ(2年)
  • パルスパワー衝撃破砕による海洋底岩盤掘削/戸田建設・熊本大学(3年)
  • 高精度気象・海象予報に基づく作業可否予測/気象工学研究所・環境GIS研究所(3年)
  • 繊維ロープを用いた省力化係留施工技術/吉田組・東京製綱繊維ロープ(3年)
  • 経済的・高性能アンカリング技術/五洋建設・東京海洋大学・海技研(3年)
  • 基地港湾利用調整システム構築/海技研・東京海洋大学(3年)

出典:国土交通省「令和8年度 浮体式洋上風力発電の最適な海上施工方法の確立に向けた技術開発制度 新規採択案件一覧」(2026年7月24日)。工程分解および各案件の工程対応は、公表された案件概要の記載に基づき本サイトが整理した。日数・船団幅は浮体式洋上風力建設システム技術研究組合(FLOWCON)の試算による。

採択が集中したのは工程⑥⑦の係留・アンカー系。一方、①②⑧には一件も入っていない。国が「まだ手当てが要る」と判断した領域と、そうでない領域の線引きがそのまま現れている。

(1) 係留・アンカー系——最多の3件

7件中3件が工程⑥⑦に集中している。これは大水深対応の難しさを反映した配分だ。

吉田組・東京製綱繊維ロープの「繊維ロープを用いた省力化係留施工技術」は、合成繊維ロープとチェーンを組み合わせたハイブリッド係留を対象とする。カテナリー係留のチェーンは水深に比例して長く重くなり、浮体の余剰浮力を食いつぶす。合成繊維ロープは軽量だが、施工中に海底へ仮置きした際の汚損・摩耗・砂噛みが品質リスクになる。案件概要が「繊維ロープ海底仮置き時の品質影響評価」を明記しているのは、まさにその実務課題を突いている。

五洋建設・東京海洋大学・海上・港湾・航空技術研究所の「経済的・高性能アンカリング技術」は、高把駐性に加えて高耐震性を設計要件に挙げている点が日本的だ。欧州の浮体式係留設計では通常前面に出てこない条件である。

戸田建設・熊本大学の「パルスパワー衝撃破砕技術」は、海底が岩盤の場合の課題に対応する。日本近海はドラッグアンカーが効かない岩盤海底が多く、掘削が必要になる。従来の発破工法は水深が深いほど成立しにくく、漁業影響や騒音の問題も抱える。概要が「水深の影響を受けず安全な完全非火薬破砕工法」と書いているのは、この二重の制約への回答である。

(2) 基地港湾の揚重とリソース配分——2件

タダノインフラソリューションズの「国産リングリフトクレーン生産システム」は、工程④の岸壁側を担う。15MW級のナセルを地上高150m級まで揚げる作業には超大型のリングクレーンが要り、現状は海外の重量物ハンドリング事業者の機材に依存している。高張力パイプ鋼をジブ部に採用して国産化を図る本件は、施工能力の話であると同時に、機材調達の経済安全保障の話でもある。7件中で唯一、期間が2年間に設定されている。

海上・港湾・航空技術研究所・東京海洋大学の「基地港湾利用調整システム」は、ハードではなくソフトに国費を入れた案件だ。基地港湾は全国に7港しかなく、複数プロジェクトが同じ岸壁とヤードを取り合う。概要にある「不確実性下で基地港湾利用を動的に評価し、施工計画と港湾リソース配分を最適化する」という記述は、気象による工程変動を織り込んだスケジューリング問題を解く、という宣言に読める。港湾を1つ増やすには10年かかるが、使い方の最適化なら3年で効く——という判断が透けて見える。

(3) 洋上での風車搭載=大型クレーン代替——1件

FLOWCONの「海上作業基地を活用した施工方法」は、7件の中で最も射程が長い。岸壁で風車を載せる代わりに、大型クレーンを載せた作業基地を洋上に浮かべ、そこで搭載する構想である。実現すれば、上述した「幅150mの船団が港湾を半日占有する」という制約そのものを回避できる。

ただし採択された技術開発の中身は「動揺解析、水理模型実験等」と「施工判断システム開発」だ。実海域の実証ではなく、水槽と数値解析による成立性検証の段階である。FLOWCONは2026年度末までに専用港湾と海上作業基地のあり方を取りまとめる方針を示しており、今回の採択はその作業と重なる位置にある。

(4) 作業可否ウィンドウ——1件

気象工学研究所・環境GIS研究所の「作業可否予測システム」は、全工程に横断的に効く。注目したいのは「予報変化発報機能」という記載だ。予報を出すだけでなく、予報が変わったときに現場へ知らせる。船団が動き出してから海象が変わる状況で、続行か中断かを何時間前に判断できるかが、待機日数と安全の両方を決める。地味だが、稼働率という最大のコストドライバーに直結する案件である。

こうして並べると、7件の配置が見えてくる。曳航そのものを対象にした案件はなく、風車搭載(④)に1件、係留・アンカー(⑥⑦)に3件、港湾側(③④)に2件、全工程横断に1件。係留・アンカーと港湾オペレーションが、当面のボトルネックとして特定されていると読むのが素直だろう。

年1.5億円×3年は実証原資か、設計検討か

次に規模感を評価しておきたい。1件あたり各年度上限1億5,000万円、3年で最大4億5,000万円。7件すべてが上限を取っても年間10.5億円である。

比較対象を並べると位置づけがはっきりする。グリーンイノベーション基金の浮体式洋上風力発電実証事業(フェーズ2)は上限850億円。ベスタスがナセル最終組立工程を国内移管する計画に対するGXサプライチェーン構築支援事業の支援は最大約13億円。五洋建設と東洋建設が自航式ケーブル敷設船に投じているのはそれぞれ約300億円である。本制度の1件あたり4.5億円は、2桁小さい

浮体式洋上風力をめぐる公的支援・民間投資の規模比較

今回の技術開発制度は、1件あたり最大4.5億円。他の枠組みとは桁が2つ違う。

本制度:海上施工の技術開発(1件あたり上限)国交省/年1.5億円 × 3年 4.5億円
本制度:7件合計(年間・全件が上限を取った場合)国交省/単年度契約、毎年度評価 10.5億円
ナセル最終組立工程の国内移管(ベスタス)経産省 GXサプライチェーン構築支援事業/最大約13億円 約13億円
自航式ケーブル敷設船の建造(1社あたり)五洋建設・東洋建設/民間投資 約300億円
浮体式洋上風力発電実証事業(フェーズ2)経産省・NEDO グリーンイノベーション基金/上限850億円 850億円

バー長は850億円を100%とした実数比。出典:国土交通省(2026年4月7日・7月24日報道発表)、経済産業省・NEDO、各社公表資料。ケーブル敷設船の投資額は報道ベース。性質の異なる制度・投資を並置しているため、金額の多寡がそのまま優劣を意味するものではない。

4.5億円のバーはグラフ上でほぼ点になる。ただしこれは制度の失敗を意味しない。役割が違うのであって、問われるべきは「この金額で何をするつもりか」である。

実際、採択案件の概要に並ぶ動詞を拾うと性格がわかる。「動揺解析、水理模型実験等」「モックアップを用いた実証」「設計法および施工法を確立する」「システムを構築する」。実海域フルスケールの実証を含む記述はひとつもない。これは実証事業ではなく、設計・要素検証フェーズへの資金である

ただし、それを不足と断じるのは早い。海上施工の要素技術は、仕様が固まらなければ実証にも進めない。アンカーの設計法が定まらないうちに実海域で打っても、得られるデータの解釈が定まらない。4.5億円で「何を作るべきか」を確定させ、その先の大型実証や民間投資へバトンを渡す——という役割分担であれば、金額と内容は整合している。

むしろ懸念すべきは金額より2点ある。

ひとつは時間だ。多くの案件は令和10年度(2028年度)末に終わる。政府は2029年度を目途に大規模浮体式の案件形成を進め、2030年前後から海上施工に着手する想定である。設計確立から実証、そして商用施工までのバッファがほぼない。

もうひとつは契約構造だ。本制度は3年計画でも契約は単年度で、毎年度の評価結果に基づいて継続可否を判断する。公募要領も、今回の採択が次年度以降の金額を保証するものではないと明記している。モックアップや試験機材、専任人員といった3年分の投資を前提とする案件にとって、この不確実性は決して小さくない。

上流は撤退、下流には張り続ける——非対称の構図

この採択を、直近1年の国内洋上風力の動きの中に置くと、対照的な構図が浮かび上がる。

開発(エクイティ)側では撤退が続いている。2025年8月、三菱商事を中心とする企業連合が秋田県2海域と千葉県銚子沖の計画から撤退した。2026年6月26日には、エクイノールが日本の洋上風力市場からの撤退を発表している。

一方で、施工・供給網側への公的支援と民間投資は止まっていない。今回の技術開発制度7件に加え、ベスタスのナセル最終組立の国内移管、五洋建設・東洋建設のケーブル敷設船建造、商船三井と深田サルベージ建設によるアンカーハンドリング船の新造準備。上流が引く一方で、下流には資金が入り続けている

この非対称には合理性がある。開発事業者の撤退は、インフレ・金利・売電価格といったプロジェクト単位の事業性の問題であり、条件が変われば戻り得る。対して施工能力の欠如は、誰が開発事業者になろうと残る構造制約だ。しかも施工コストが下がれば、開発の事業性そのものが改善する。上流が冷えているときに下流を仕込むのは、順序として理にかなっている。

ただしリスクは裏返しになる。案件形成が滞れば、施工能力に投資した側は稼働先を失う。作業船も港湾設備も、遊ばせれば固定費を垂れ流す資産である。国が技術開発だけを支え、案件形成が2029年度目途からさらに後ろへずれるようなら、サプライチェーンのほうが先に力尽きるという順序もあり得る。

なお、施工負荷を「据え付け方」ではなく「機種選定」から下げようとする動きもある。電源開発、東京電力ホールディングス、中部電力、川崎汽船、住友重機械工業、アルバトロス・テクノロジーの6社によるFAWTコンソーシアムは2026年7月8日、浮遊軸型風車(Floating Axis Wind Turbine)の小型実験機を長崎県壱岐市内の実証海域に設置し、7月2日から1年間の海上実証を開始したと発表した。ロータ直径9.3m、浮体直径1.7m、最大出力20kW、海底アンカーに接続した3本の係留システムで位置を保持する。垂直軸型は発電機などの重量物を風車の下部に配置できるため低重心となり、支持構造を軽くできる。搭載工程の難易度そのものを下げ得るアプローチであり、今回の7件とはレイヤーが異なるが、狙う出口は重なっている。

2028年度末、7件の成果が出そろう。そのとき問われるのは、おそらく個々の技術の成否ではない。確立された施工技術を受け取るだけの案件と港湾が、そのとき用意されているかどうかである。国は今回、風車ではなく「据え付ける手」に張った。その手が仕事を得られるかは、別の政策の宿題として残っている。


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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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