宇宙データセンターと小型EV、1週間でユニコーン2社 Starcloud $170m・Also $200m、合計$2.35B|クライメート資金調達 #032

宇宙データセンターと小型EV、1週間でユニコーン2社 Starcloud $170m・Also $200m、合計$2.35B|クライメート資金調達 #032

今週は、〔スタートアップ資金調達〕に$645m、〔M&A / Exit〕に$1,443m、〔プロジェクト・デット〕に$257mが集まりました(合計$2,345m、非開示は集計外)。

目次

3行サマリー

スタートアップ資金調達動向:
Rivianスピンアウトの小型EV開発Also が$200m Series Cで評価額$1Bに到達、DoorDashとの自律配送提携も同時発表。宇宙データセンターのStarcloudが$170m Series Aでユニコーン入り、地球上の電力・用地制約を迂回する軌道コンピューティングに資金が集まった。

プロジェクト資金調達動向:
マサチューセッツ州Medwayの250MW BESSにAdvantage Capitalが$158mのITCタックスエクイティを投下、ISO-NE域内最大級。Origis Energyのカリフォルニア太陽光+蓄電にもRBCから$59mのタックスエクイティが入った。

政策動向:
ARPA-Eが核融合技術に過去最大$135mのコミットメントを発表。オンタリオ発電がOECD初のSMR運転許可をカナダ原子力安全委員会に申請した。

今週の資金調達動向

サマリー(USD概算)

グループ件数開示額合計主な資金種別代表案件
スタートアップ/コーポレート(エクイティ/研究助成等)10$645.0mSeries A–C、SeedAlso $200m、Starcloud $170m
M&A / Exit6$1,443.0m(開示3件)買収Frontier Waste $900m、Vibrant Energy $539m
プロジェクト系(PF/デット/資産売買)8$257.0m(開示5件)PFタックスエクイティ、PFデットVC Renewables $158m、Origis Energy $59m

— 注:合計は概算・非開示を除く。為替目安:£→$1.33、A$→$0.68、€→$1.10、C$→$0.74、¥→$0.0067(端数は$0.1m未満切り捨て)。通貨併記は一次発表に準拠。

A. スタートアップ / コーポレート

企業/国金額/ステージ概要主な投資家
Also/US$200.0m/Series CRivianスピンアウトの小型EV開発、DoorDashと自律配送提携、評価額$1BGreenoaks Capital、DoorDash、Prysm Capital
Starcloud/US$170.0m/Series A宇宙空間データセンター開発、軌道上H100 GPUでAI学習に成功、評価額$1.1BBenchmark、EQT Ventures、776 Ventures、Macquarie Capital
Xoople/ES$130.0m/Series B地理空間データ基盤プラットフォームNazca Capital、Buenavista Equity Partners、CDTI、Endeavor Catalyst
Starfish Space/US$110.0m/Series B衛星寿命延長サービスActivate Capital Partners、Point72 Ventures、Shield Capital
SmartD Technologies/CA$11.0m/Series ASiCベース高効率モータードライブ開発Desjardins Capital、Hammond Power Solutions、Boreal Ventures、SE Ventures
Soma Energy/CA$7.0m/SeedAI駆動エネルギーインテリジェンス基盤、元AWSエネルギーチーム創業Category Ventures、Haystack、Panache Ventures、RRE Ventures
Astranova Mobility/IN$7.0m/Series AEVフリート資産管理プラットフォームIvyCap Ventures、AdvantEdge Founders、ADB、Trucks VC
Plume/FR$4.0m(€3.3m)/SeedAIによる再エネサイト選定・エネルギー改修支援AENU、Better Angle、Collaborative Fund、Kima Ventures
Nirova/US$3.0m/Seed嫌気性消化槽の最適化プラットフォーム非開示
Satellites on Fire/AR$3.0m/Seed衛星リアルタイム森林火災検知AIDalus Capital、Air Capital、Draper Associates

※ファンド:Eka Ventures(UK)が消費者ヘルス・サステナビリティ特化のFund IIを$107mでクローズ(British Business Bank等)。上記件数・合計には含めていない。

Starcloud — 特集

会社の概要

Starcloudは2024年1月にカリフォルニア州エルセグンドで「Lumen Orbit」として創業し、現在はワシントン州レドモンドに本社を置く宇宙データセンター企業です。CEO フィリップ・ジョンストン氏(元McKinsey)、CTO エズラ・フェイルデン氏(元Airbus Defence and Space)、チーフエンジニア アディ・オルテアン氏(元SpaceX Starlink / Microsoft Azure)の3名が共同創業しました。2024年夏にY Combinator(YC)を経て、YCデモデー史上最大級のシード資金を獲得。今回のSeries Aで累計調達額は$200m、評価額は$1.1Bに達し、YC史上最速でのユニコーン到達となりました。

何ができるのか

Starcloudは低軌道(LEO)に衛星を配備し、その上でAI推論・学習ワークロードを実行する「宇宙空間のデータセンター」を構築しています。2025年11月に打ち上げた初号機Starcloud-1には、NVIDIA H100 GPUを搭載し、軌道上で大規模言語モデルの学習、Google Geminiの推論、モデルのファインチューニングに成功しました。いずれも民間衛星として世界初の実績です。顧客はCrusoe、AWS、Google Cloud、NVIDIAなどが初期パートナーとして名を連ねており、2026年後半打ち上げ予定のStarcloud-2から商用ワークロードの受託を開始します。

技術のしくみ
地上データセンターの3大制約(電力・冷却・用地)と宇宙データセンターによる解消の対比図。左側に地上DCの制約アイコン、右側にStarcloud衛星の太陽光発電・放射冷却・用地不要の利点を配置し、下部に太陽光から地上ダウンリンクまでのデータフローを示す
地上データセンターが抱える電力・冷却・用地の制約を、軌道上インフラがどう解消するかの概念図。
Starcloudは太陽同期軌道で稼働率95%超の太陽光発電と宇宙空間の放射冷却を組み合わせ、地上の立地制約をバイパスする

宇宙データセンターの基本コンセプトは、地上のデータセンターが抱える「電力・冷却・用地」の3大制約を軌道環境で解消するものです。太陽同期軌道では稼働率95%超で太陽光を得られるため、地上太陽光の約5倍の発電効率を実現できます。冷却面では、宇宙空間の放射冷却を活用し、Starcloud-2には民間衛星史上最大の展開式ラジエーターを搭載予定です。Starcloud-1のH100搭載で得た実測データ(熱挙動・放射線耐性・通信遅延など)が設計にフィードバックされており、ジョンストン氏は「H100は宇宙に最適なチップではないが、最先端の地上チップが軌道で動くことを実証するために選んだ」と説明しています。

Starcloud衛星3世代の技術ロードマップ。Starcloud-1(2025年11月打上げ済、H100搭載、軌道上LLM学習成功)からStarcloud-2(2026年10月予定、Blackwell B200、発電能力100倍、商用開始)、Starcloud-3(2028〜29年目標、200kW・3トン、Starship対応、電力コスト約0.05ドル/kWh)への進化を時系列で示す
Starcloud衛星の3世代ロードマップ。
初号機のH100実証から、2026年のBlackwell搭載商用機、2028〜29年のStarship対応大型機へと段階的にスケールアップし、地上DCとのコスト競争力を目指す

次世代のStarcloud-2ではNVIDIA Blackwell B200チップとAWSサーバーブレードを搭載し、発電能力は初号機の100倍になります。長期的にはSpaceXのStarship対応の大型衛星Starcloud-3(200kW・3トン級)を開発し、打ち上げコストが$500/kgに下がれば電力コスト約$0.05/kWhで地上データセンターと競争力を持つと試算しています。

料金・導入の進め方

現時点で一般向けの料金体系は公開されていません。ビジネスモデルは、軌道上のコンピュート容量をクラウドサービスとして提供する「エネルギー&インフラプレイヤー」型です。Starcloud-2(2026年10月打ち上げ予定)が初の商用運用衛星となり、Crusoeのクラウド基盤を通じて顧客がAIワークロードをデプロイできるようになります。経済的な競争力はStarship商用運用の開始(2028〜2029年想定)が鍵で、それまでは実証・データ収集フェーズと位置づけられています。同社はFCCに最大88,000基の衛星コンステレーション申請を提出済みで、大規模展開に向けた規制面の準備も進めています。

他社との違い
  • 軌道上実証の先行優位:民間初のH100搭載衛星を打ち上げ、LLM学習・推論・ファインチューニングをすべて軌道上で成功させた唯一の企業。2年分のテレメトリデータは競合にない設計資産となっている。
  • インフラ事業者としてのポジショニング:SpaceXが自社AI(Grok/Tesla)向けに100万基衛星を計画する一方、Starcloudはサードパーティ向けのクラウド基盤に特化。AWS・Google Cloud・Crusoeとのパートナーシップで既存クラウドエコシステムとの接続を担う。
  • 資本効率と実行速度:プリシードの$3mのみで初号機を設計・製造・打ち上げまで21ヶ月で完了。創業17ヶ月でユニコーン到達というYC史上最速記録は、この実行速度に裏打ちされている。
どこで効果が出やすいか/日本での示唆

宇宙データセンターは、地上でのデータセンター立地制約が深刻な地域ほど価値が大きくなります。日本は国土面積が限られ、再エネ適地と需要地の距離が遠く、データセンター用地の確保や系統接続に時間がかかるため、長期的にはこの技術の恩恵を受けやすい市場環境にあります。実際、日本の大手商社や通信事業者は宇宙インフラ投資を加速させており、NTTの宇宙統合コンピューティング構想やソフトバンクの低軌道衛星通信網など、関連領域での動きが活発化しています。今週のKingdom(シンガポールBESS)PFデットにMUFG Bankが参画した件にも見られるように、日本の金融機関がエネルギーインフラの新領域に資金を投じ始めており、宇宙データセンターも将来の検討対象になりうるでしょう。ただし、Starcloudの経済性がStarshipの商用運用開始に強く依存している点は、投資判断上の重要なリスク要因です。

B. M&A / Exit

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
Frontier Waste Solutions/US$900.0m/買収テキサス州24拠点の廃棄物収集事業をGFL Environmentalが取得、テキサス・トライアングル高密度化
Vibrant Energy/IN$539.0m(₹5,000 Cr)/買収Macquarie保有の再エネIPP 1,337MWポートフォリオをInox Clean Energyが取得、C&I顧客基盤を強化
RPD Technologies/US$4.0m/買収プロセスエンジニアリング・プロジェクト開発会社をAbundia Global Impact Groupが取得
Nor-Cal Controls/US非開示/買収太陽光EPC向け自動化・エンジニアリングサービスをMortensonが取得
Planetrics/UK非開示/買収気候データ分析プラットフォームをSLR Consultingが取得
ClimSystems/NZ非開示/買収気候リスク評価ソフトウェアをSLR Consultingが取得、Planetricsと同時

C. プロジェクト系

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
VC Renewables/US$158.0m/PFタックスエクイティマサチューセッツ州Medway 250MW BESS、ISO-NE域内最大級、Vitol支援
Origis Energy/US$59.0m/PFタックスエクイティカリフォルニア州の太陽光+蓄電プロジェクト、RBC Community Investmentsが出資
HVR Energy/ES$15.0m(€12.75m)/PFデットスペインのグリーン水素プロジェクト、政府系ICOから融資
Victory Group/KE$15.0m/デットケニアの持続可能なティラピア養殖事業、AgDevCoが融資
Graphite Energy/AU$10.0m/デット熱エネルギー貯蔵技術による産業用化石燃料ボイラー代替、Catalytic Impact Capitalが融資
Appcycle/JP 🇯🇵非開示/協調融資青森県弘前市発、廃棄りんご由来バイオレザー「RINGO-TEX」の量産化資金、日本政策金融公庫・みずほ銀行
Münch Energie/DE非開示/PFデットドイツ最大級BESS クラスター 500MWhの一部50MW/100MWh案件、IKB Deutsche Industriebank
Kingdom/SG非開示/PFデットStonepeak支援のBESSプラットフォーム初号PF、MUFG Bank

🇯🇵 日本との関連:Appcycleは青森県弘前市に本社を置くスタートアップで、廃棄りんごの搾りかすからバイオベースレザー「RINGO-TEX」を製造しています。今回、みずほ銀行と日本政策金融公庫による協調融資を受け、量産ライン拡充と国内外の販路拡大を加速します。みずほ銀行による青森県のシード期スタートアップへのプロパー融資は同行初の事例とされています。また、シンガポールのBESSプラットフォームKingdomのPFデットにはMUFG Bankが参画しています。

参考文献・出典リンク一覧

一次情報・企業プレス・公的資料

CTVC

CTVC Issue 291(本稿は同号の「Deals of the Week(4/6–4/13)」を起点に、一次情報で裏取りし独自に要約・分析しました。先週号は #290)。

略語集

略語正式名称・説明
BESSBattery Energy Storage System(蓄電池エネルギー貯蔵システム)
EVElectric Vehicle(電気自動車)
ITCInvestment Tax Credit(投資税額控除、米国連邦)
ISO-NEIndependent System Operator of New England(ニューイングランド独立系統運用機関)
PFProject Finance(プロジェクトファイナンス)
SiCSilicon Carbide(炭化ケイ素、パワー半導体材料)
SMRSmall Modular Reactor(小型モジュール炉)
IPPIndependent Power Producer(独立系発電事業者)
C&ICommercial & Industrial(商業・産業用)
GPUGraphics Processing Unit(画像処理装置、AI計算に使用)
ARPA-EAdvanced Research Projects Agency–Energy(米エネルギー省先端研究計画局)
OECDOrganisation for Economic Co-operation and Development(経済協力開発機構)
VPPVirtual Power Plant(仮想発電所)





ニュースレターを購読する

NetZero Insights Japanの新着・注目トピックを週1で配信します。更新情報を見逃したくない方は是非ご登録ください。

 

※ 時々メールマガジン限定の情報も配信するかもしれません。

 

 

このフォームで取得したメールアドレスは、NetZero Insights Japanのニュースレター配信にのみ利用します。

ニュースレターの購読を申し込むことで、プライバシーポリシーに同意したものとします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

目次