大阪ガスとSonnedixは、大分市で39MWの太陽光発電と30MW/125MWhの蓄電池を組み合わせた国内最大級プロジェクトに参画しました。出力制御が急増する九州で、再エネを無駄なく生かしFIP時代の収益モデルを検証する重要な案件です。
3行サマリー
- 大阪ガスとSonnedixは、大分市で39MW太陽光+30MW/125MWh蓄電池の国内最大級プロジェクトを2026年11月運開で進める。
- 大阪ガスはFITからFIPへ移行後、発電・放電電力を全量買取りし、アグリゲーションと市場取引で収益の最大化をねらう。
- 出力制御が急増する九州で、PV+蓄電池+FIP+アグリゲーションの「フルセット型案件」が、GX-ETS時代の標準モデルになり得る。
大分PV+蓄電池プロジェクトの全体像
大阪ガスとSonnedixは、大分県大分市の太陽光発電所敷地内に、定格出力30MW・定格容量125MWhの蓄電池を新設します。既設の太陽光発電設備は出力39MWで、これらを合わせた案件は国内最大級の再エネ併設型蓄電池プロジェクトと位置づけられています。
この案件では、太陽光発電(Photovoltaic Power Generation: PV)=太陽光を電気に変える設備と、蓄電池エネルギー貯蔵システム(Battery Energy Storage System: BESS)=電力を貯めて出す大型電池設備が一体で運用されます。運開時期は2026年11月の予定で、建設後は長期にわたって地域の電力系統を支える存在になります。
設備の建設は東芝エネルギーシステムズが担い、蓄電池には海外でも実績のあるモジュール製品が採用されます。Sonnedixと大阪ガスの共同出資会社が発電事業者となり、大阪ガスがアグリゲーションと市場取引を担当します。
Daigasグループは、系統用および再エネ併設型を合わせて、2030年度までに蓄電池運用規模1,000MWの達成を掲げています。この大分案件は、その中で「PV+蓄電池」を本格ビジネスとして成立させるショーケースになる可能性が高いと考えられます。理由は、大規模で実運用データが豊富に得られ、他地域への横展開の判断材料になり得るためです。
出力制御と系統制約:なぜ大分で蓄電池なのか
九州電力エリアでは、再生可能エネルギー(Renewable Energy: RE)=太陽光や風力など自然由来の電力の導入が急増しています。結果として、送電線が受け止められる量を超える時間帯が増え、発電側に出力制御=系統が受け入れられない分の再エネ出力を止めてもらう措置が頻発しています。
近年の統計では、九州電力エリアで年間の出力制御率がおおよそ6〜8%程度に達する年度も出てきており、発電事業者が計画どおりに売電できないリスクが現実的になりました。
大分の本案件では、こうした状況に対して、BESSに日中の余剰電力を蓄え、夕方や夜の需要が高い時間帯に放電する設計をとります。この運用によって、太陽光の出力制御量を減らし、売電機会の損失を抑えられます。同時に、急激な出力変動を吸収することで、系統の安定運用にも貢献します。
九州のように出力制御が常態化しつつあるエリアでは、「PV単体」より「PV+蓄電池」の方が、事業性と系統受容性の両面で優位になりつつあります。事業者にとっては、売電量の底上げと収益の安定化が期待でき、系統側から見ても再エネ導入余地の拡大につながります。
FITからFIPへ:PV+蓄電池+アグリゲーションの稼ぎ方
この太陽光発電所は、固定価格買取制度(Feed-in Tariff: FIT)=一定単価で長期売電できる制度から、フィードインプレミアム(Feed-in Premium: FIP)=市場価格にプレミアムを上乗せする制度へ移行する予定です。FITでは「いくらで売れるか」があらかじめ決まっていましたが、FIPでは「いつ売るか」が収益を大きく左右します。
大阪ガスは、FIP移行後に発電・放電される電力を全量買取りし、自ら市場取引と蓄電池の遠隔制御を行います。アグリゲーター(Aggregator: Agg)=複数の電源や蓄電池を束ねて市場参加させる事業者として、大阪ガスが時間帯ごとの最適な発電・充電・放電パターンを設計する形です。
昼間の電力価格が低い時間に蓄電し、夕方の価格が高い時間に放電して売電することで、同じ1MWhの発電でも収益を引き上げることができます。
FITの世界では、発電量をいかに増やすかが主な関心でした。一方、FIP+BESSの世界では、「発電量×時間帯別価格」を踏まえて収益を最大化する運用戦略が鍵になります。そのため、PV+蓄電池+FIP+アグリゲーションのフルセットがそろうと、リスクとリターンをコントロールできる余地が大きく広がります。
GX-ETS時代の再エネビジネスと大阪ガスの狙い
日本政府は、グリーントランスフォーメーション排出量取引制度(Green Transformation Emissions Trading Scheme: GX-ETS)=大口排出事業者向け排出量取引制度を段階的に導入しています。GX-ETSでは、CO₂を多く排出する事業者ほど排出枠の確保や削減対策のコストが重くなり、低炭素な電源やサービスの価値が相対的に高まります。
大阪ガスは、都市ガス事業でCO₂を排出する一方で、再エネ・蓄電池・水素など低炭素技術への投資を拡大しています。蓄電池運用1,000MWという目標は、単なる新規事業ではなく、GX-ETSを見据えた電源ポートフォリオ転換の一部と見るべきです。ガスと電気、蓄電や需要家サービスを組み合わせることで、長期的な収益と脱炭素の両立を狙っています。
今回の大分案件は、出力制御の多いエリアでPV+蓄電池を組み合わせ、FIPと市場取引、GX-ETSという新ルールをまとめて先取りする試みです。ここで得られるデータと運用ノウハウは、他地域の案件設計やパートナー選定に生きると考えられます。特に「低炭素電源をどう束ね、どの市場で価値を取りに行くか」という戦略の中核を、実案件を通じて具体化できる点が重要です。
事業開発への示唆:出力制御リスク×FIP案件をどうマップするか
事業開発の観点では、この案件は「どこからPV+蓄電池案件のパイプラインを作るべきか」を考えるうえで分かりやすい指標になります。有望なのは、出力制御が多いエリア、FIT期限が近くFIP移行が予定されるメガソーラー、系統接続余力が限られる地域の重なりです。
実務としては、まず各エリアの出力制御実績・見通しと、FITからFIPへ移行する既存案件のリストを重ねてマッピングする必要があります。その上で、系統の混雑状況や市場価格の時間帯パターン、調整力市場の規模などを組み合わせて、「どの地域で・どの順番で・どんなスキームを採用するか」を整理します。
例えば、九州・北海道・北陸など出力制御リスクの高いエリアでは、PV+蓄電池+FIP+アグリゲーションをセットで検討する方が合理的だと考えられます。理由は、蓄電池とアグリゲーションを前提にしないと、出力制御や価格変動により事業性が不安定になりやすいためです。
最終的には、地区ごとの「出力制御リスク×FIP案件」をマップ化し、蓄電池アグリゲーションと再エネ併設案件のパイプラインを一覧化することが重要です。ここで「系統制約が厳しいエリアほど、先にフルセット型案件を展開した事業者が交渉力を持つ」という視点を持てると、案件組成の優先順位が明確になります。
筆者の視点
私は、大阪ガスの蓄電池関連ビジネスの勢いが非常に強いと感じています。理由は、今回の大分案件のような国内最大級プロジェクトに加え、2030年度までに1,000MWという明確な運用目標を掲げており、「単発案件」ではなくポートフォリオとして蓄電池事業を位置づけているからです。
今回のプロジェクトでは、既設39MWの太陽光に30MW/125MWhの蓄電池を併設し、大阪ガスが自らアグリゲーターとして市場取引と遠隔制御を担います。これは「発電所への出資」「蓄電池の導入」「アグリゲーション」の三つをまとめて押さえるモデルであり、収益構造とノウハウの両方を自社側に蓄積できる設計です。
また、GX-ETSの本格化を踏まえると、ガス・電気・蓄電池・需要家サービスを一体で提案できるプレーヤーは、エネルギー転換期において高い競争力を持つと考えられます。大阪ガスはLNG調達やガス火力運用の経験を持ちながら、蓄電池や再エネの案件形成に踏み込んでおり、低炭素電源と柔軟性リソースを両方扱える事業者として存在感を高めている印象です。
蓄電池ビジネスは、案件規模や市場設計の変化によって収益性が揺れやすい分野でもあります。その中で、今回のような大型案件を通じて運用データを早期に蓄積し、価格シグナルと系統制約の両方に対応できる運用モデルを固めていくことは、今後の展開を考えるうえで大きなアドバンテージになると感じます。
参考情報・出典
- 大阪ガス「大分県大分市における太陽光発電所への国内最大規模の再エネ併設型蓄電池の設置について」(2025年11月4日)
- 東芝エネルギーシステムズ「大分県大分市において国内最大規模の太陽光発電所併設型蓄電池の建設プロジェクトを受注」(2025年11月4日)
- ソネディックス・ジャパン「初の蓄電池事業の着手について」(2025年11月4日)
- 経済産業省「成長志向型カーボンプライシング構想(GXリーグ・GX-ETS関連)」各種資料(2023–2025年)
- 経産省「2023年度出力制御見通し他について(九州本土の出力制御率6.7%見通し)」(2023年8月)
- 九州電力送配電「過去の出力制御実績(再エネ出力制御必要性検証データ)」
- OCCTO「再生可能エネルギー発電設備の出力抑制に関する検証結果」(2018–2025年度)

