核融合スタートアップ史上級ラウンドの週:Inertia $450mとNineDot BESS PF $431m|クライメートテック資金調達 #024

核融合と都市型蓄電投資を象徴する近未来的なエネルギーインフラのイラスト

今週は、〔スタートアップ資金調達〕に$1,140m、〔M&A / Exit〕は全件非開示(集計上は$0m換算)、〔プロジェクト・デット〕に$1,109mが集まりました(合計$2,249m、非開示は集計外)。

目次

3行サマリー

スタートアップ資金調達動向:
2026年2月9〜16日の1週間で、商用核融合を開発するInertiaがSeries Aで$450mを調達し、スタートアップ/コーポレート資金は合計$1,140mとなりました。大型ラウンドが多く、電力システム、資源循環、素材リサイクルなどインフラ寄りテーマに資金が集まりました。

プロジェクト資金調達動向:
米NineDot Energyが分散型蓄電プロジェクト向けにデット$431mを確保し、Grenergyなど再エネ開発企業の調達も続きました。プロジェクト系は合計$1,109mで、系統側の蓄電・再エネポートフォリオへの長期資金供給が目立ちます。

政策動向:
米財務省・税務当局の外国支配ルールに続き、米環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)が2009年の温室効果ガス「危険認定」(Endangerment Finding)撤回の最終規則を発表し、長期の気候規制と投資前提が揺れています。

今週の資金調達動向

サマリー(USD概算)

グループ件数開示額合計主な資金種別代表案件
スタートアップ/コーポレート(エクイティ/研究助成等)22件$1,140mSeries A/B/C、Seed、コーポレートデットInertia(米・商用核融合)Series A $450m
M&A / Exit5件—(全件非開示)戦略的買収、事業ポートフォリオ拡大LiquidStack(液浸冷却)などの買収案件
プロジェクト系(PF/デット/資産売買)6件$1,109mプロジェクトファイナンス型デット、長期設備融資NineDot Energy(米・蓄電プロジェクト)デット$431m

— 注:合計は概算・非開示を除く。為替目安:£→$1.33、A$→$0.68、€→$1.10、C$→$0.74、¥→$0.0067(端数は$0.1m未満切り捨て)。通貨併記は一次発表に準拠しています。

A. スタートアップ / コーポレート

企業/国金額/ステージ概要主な投資家
Inertia/US$450m/Series Aレーザー方式の商用核融合エネルギー開発Bessemer Venture Partners, GV, Modern Capital, Threshold
Skyryse/US$300m/Series Cヘリコプター・小型機向け自動操縦プラットフォームAutopilot, ArrowMark Partners, Atreides Management, BAM Elevate, Baron Capital
Tem/UK$75m/Series B再エネ調達・契約のマーケットプレイスLightspeed Venture Partners, AlbionVC, Allianz, Atomico, Hitachi Ventures, Revent
Neara/AU$64m/Series D送電線・インフラ向けデジタルツインソフトウェアTCV, EQT, Partners Group, Skip Capital, Square Peg Capital
metiundo/DE$48m/Series Aスマートメーター・データ統合基盤Octopus Energy Generation
Alva Energy/US$33m/Series A次世代核分裂プロジェクト開発Playground Global, 8VC, Alumni Ventures, Mercator Partners, Logos
Hades Mining/DE$18m/Seed鉱山オペレーションの電化・自動化ソリューションHV Capital, Headline, FounderLake, Founders Factory, Interface Capital
Hauler Hero/US$16m/Series A廃棄物収集・ルート最適化のSaaSFrontier Growth, K5 Global, Somersault Ventures
Mitra EV/US$27m/Series A+デット商用フリート向けEV化プラットフォームUltra Capital, S2G Investments
Capalo AI/FI$13m/Series A蓄電池ポートフォリオのトレーディング・最適化Heartcore Capital, Innovestor, Inventure, PROfounders, Tesi
Green Rebel/ID$13m/Seed植物性代替肉ブランドの展開AgFunder, Teja Ventures, Unovis
WTenergy/ES$12m/Seed産業廃棄物・バイオマスのガス化リサイクルSuma Capital, Cemex Ventures, Shell Ventures
Apeiron Labs/US$10m/Series A海洋モニタリング用自律ロボット・データ解析DYNE Ventures, RA Capital Management, S2G Investments, Assembly Ventures, Bay Bridge Ventures
Uplift360/LU$9m/Seed防衛・産業向け高機能素材のケミカルリサイクルExtantia, Fund F, NATO Innovation Fund, Promus Ventures
Dionymer/FR$7.7m/Seed生分解性ポリマーのバイオプロセス開発UI Investissement, AFI Ventures, AQUITI Gestion, BNP Paribas Développement, Bpifrance
HAMR Energy/AU$7m/Series A低炭素合成燃料の開発Airbus, Qantas Climate Fund, Thyssenkrupp Uhde
Geolinks Services/FR$7m/Seed地熱・地下資源向け地球物理モニタリングCalderion, BRGM Invest, Bpifrance, EIT InnoEnergy
Powerline/US$7m/Seed分散エネルギー資産の監視・運用プラットフォームMaC Venture Capital, LG Technology Ventures, J-Impact Fund, Alumni Ventures, CLAI Ventures
Derapi/US$7m/Seed分散型電源向けAPI・データ連携基盤Earthshot Ventures, Aurora, Breakthrough Venture Capital, GreenSky Capital, M1C
Evergreen Connect/US$6m/Series A培養肉開発とサプライチェーン構築Bold Capital Partners, Good Startup, S2G Investments
Gorlem/JP$5.3m/Seed建設・ビル向けAI需要予測と最適化ANRI, Hankyu Hanshin Real Estate, MIRAITRONC, Shimizu Corporation, Takenaka Corporation
Upside Robotics/CA$5m/Seed農業用自律ロボットの開発Plural, Garage Capital

Inertia — 特集

https://inertia.com/
会社の概要

Inertiaは、米カリフォルニア州リバモアを拠点とする商用核融合エネルギーのスタートアップです。国立研究機関レベルで実証されてきたレーザー核融合技術を、民間主導で発電事業に落とし込むことを目指しています。今回のSeries Aで$450mという極めて大きなラウンドを実現し、核融合スタートアップの中でも資本面で一気に先頭グループに躍り出ました。

何ができるのか

Inertiaが目指しているのは、将来的に既存の火力発電所並みの出力を持つ核融合発電プラントを商用運転できる状態にすることです。まずは実証機レベルでの安定点火と繰り返し運転を実現し、その後スケールアップしたプラントを複数サイトで展開する構想です。電力会社や大口需要家は、長期の電力購入契約を通じてゼロエミッション電源を確保できるポテンシャルがあります。

技術のしくみ

Inertiaは、レーザー核融合と呼ばれる方式を採用しています。小さな燃料ペレットにレーザーを照射し、一気に圧縮・加熱することで核融合反応を起こす「慣性閉じ込め」型の技術です。磁場で高温プラズマを長時間閉じ込めるトカマク型とは異なり、非常に短い時間の反応を高速に繰り返す設計になります。高出力レーザーやターゲット供給、熱取り出し・発電設備など、レーザー以外のエンジニアリング要素も多く、総合力が問われるテーマです。

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料金・導入の進め方

商用プラントはまだ先ですが、実現すれば、長期固定価格の電力購入契約(PPA)や容量市場・フレキシビリティ市場と組み合わせた収益モデルが想定されます。初期は一部の先進的な電力会社やデータセンター、重工業プレーヤーなどがアンカー顧客となり、その後は金融機関・インフラファンドがプロジェクトファイナンスを組む形が現実的です。今時点でユーザー側に必要なのは、核融合を長期の電源ポートフォリオ候補として、他のゼロエミ電源(原子力、再エネ+蓄電など)との比較軸を早めに整理しておくことです。

他社との違い
  • 磁場閉じ込め型ではなくレーザー慣性閉じ込め型にフォーカスし、既存レーザー技術の応用でスケールアップを狙っている点。
  • Series Aの時点で$450mという非常に大きな資本を確保しており、実証機建設・運転までを一気通貫で進められる体制を整えつつある点。
  • 電力会社・大口需要家との長期契約を前提にした事業設計を打ち出しており、単なる研究開発にとどまらない「商用化ロードマップ」が明確な点。
どこで効果が出やすいか/日本での示唆

Inertiaのような核融合スタートアップは、まずは米国・欧州の自由化電力市場で、系統混雑が小さく、長期契約で投資回収しやすいエリアから展開していく可能性が高いです。一方で、日本でも大型データセンターや水素製造など超大口需要のプロジェクトが増えており、「安定したゼロエミ電源」を長期確保する必要性は同じです。

日本の事業会社の立場では、再エネ・蓄電・原子力に加えて、核融合をどのタイミングからポートフォリオ候補に含めるかが論点になります。今すぐの電源ポートフォリオには入れにくいものの、投資・提携・オフテイクの選択肢を早めに整理しておくと、10〜20年スパンでの選択肢が増えます。また、今週のNineDot Energy向けデットには邦銀も関与しており、蓄電・次世代電源への長期融資という観点でも、日本の金融機関のスタンスを見直すヒントになりそうです。

B. M&A / Exit

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
LiquidStack/US非開示/Trane Technologiesによる買収データセンター向け液浸冷却ソリューションの取得
Eion Carbon/US非開示/Terradotによる買収強化風化による炭素除去サービス事業の統合
Allwood Recycling Solutions/UK非開示/Papiloによる買収木質廃棄物リサイクル事業のスケールアップ
Inflor/US非開示/Remsoftによる買収森林管理ソフトウェアのポートフォリオ拡充
FM Conway/UK非開示/ubitricityによる買収インフラ・路上充電事業の統合

C. プロジェクト系

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
NineDot Energy/US$431m/デット(プロジェクトファイナンス)米ニューヨーク州の分散型蓄電プロジェクト群向け融資
Grenergy/ES$355m/プロジェクトファイナンスデット太陽光+蓄電ポートフォリオ開発向け資金調達
Revera Energy/UK$150m/デット欧州の再エネ開発案件向け長期融資
Drivn/IN$80m/デット電気自動車リース用車両ポートフォリオ拡大資金
Enfinity Global/US$65m/デット太陽光・蓄電案件の建設・運転資金
TWAICE/DE$28m/デット蓄電池解析ソフトウェアの拡張に向けたEIB融資

参考文献・出典リンク一覧

一次情報・企業プレス・公的資料

CTVC

CTVC Issue 283(本稿は同号の「Deals of the Week(2026/2/9–2/16)」を起点に、一次情報で裏取りし独自に要約・分析しました。先週号は #282)。

略語集

略語正式名称・説明
EPAEnvironmental Protection Agency(米環境保護庁)。米国の環境保全・大気汚染・気候変動対策などを所管する連邦政府機関。

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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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