Deep Sky×AirbusがカナダでDAC稼働 250t/年CO₂除去とBE Catalyst支援の全体像

カナダのカーボン除去事業者Deep Skyが、アルバータ州の試験場「Deep Sky Alpha」でAirbus開発のDACユニットを稼働させました。年間250tCO₂を除去するパイロット設備で、Breakthrough Energy Catalystの約4,000万ドル支援とRBC・Microsoftのオフテイクが連動する点が特徴です。

目次

3行サマリー

  • Deep SkyがAirbus開発のDACユニット(250tCO₂/年)をカナダ・アルバータ州で運転開始した。
  • Breakthrough Energy Catalystの約4,000万ドル支援とRBC・Microsoftの長期オフテイクがプロジェクトを支えている。
  • 複数DAC技術を束ねる「Deep Sky Alpha」は、日本企業のCDRクレジット調達や自社技術実証のモデルケースになり得る。

Deep Sky×Airbusプロジェクトの概要

Deep Skyは、カーボン除去(CDR)専業のプロジェクトデベロッパーで、カナダ・アルバータ州イニスフェイルに試験場「Deep Sky Alpha」を整備しています。ここでAirbus開発のDAC(Direct Air Capture)ユニットが2025年末に運転を開始しました。

ユニットの除去能力は年間約250tCO₂で、設計から建設・設置完了までに要した期間は約8カ月とされています。
※Deep SkyとESG Newsの2025年11〜12月付けリリースにおいて、能力とリードタイムが明記されています。

Deep Sky Alphaでは、このAirbusユニットに加えて、複数のDAC技術が順次導入され、合計で数千t/年規模のCO₂除去を目標にしています。

要点:250t/年という小さなユニットだが、航空OEMとCDR需要家を結ぶ初号機としての意味合いが大きい。

AirbusのDAC技術とモジュール設計

AirbusのDACシステムは、コンテナ型のモジュールとして設計されており、ファンで大気を取り込み、選択的にCO₂を吸着・放出する固体吸収材を用いる一般的なDAC方式に分類されます。設備は分割可能なモジュール構造で、将来的な並列増設を前提にしています。

Airbusは2050年ネットゼロを掲げており、SAF(持続可能な航空燃料)だけでは埋まらない残余排出の一部をDAC由来のCDRクレジットで相殺するオプションを検証中です。今回のDeep Skyとの協業は、航空業界向けCDRサプライチェーンの実証という意味合いがあります。

モジュール単体の規模は小さいものの、寒冷なアルバータ州での運転データを通じて、エネルギー効率や運転安定性の学習が進むと考えられます。カナダ北部での実証は、加熱・融雪・気象条件など他地域と異なる負荷条件を確認できるためです。

要点:Airbus DACはモジュール化された一般的なDAC技術だが、「航空×CDR」の具体的なオプションを検証する役割を担っている。

Deep Sky Alpha:技術アグノスティック試験場というコンセプト

Deep Sky Alphaの特徴は、特定の技術に依存せず、複数のDAC技術を同一サイトに集約する「技術アグノスティック」の試験場である点です。Mission Zero TechnologiesやSkytreeなど、10社前後のパートナーが参加する計画が公表されています。

同じ気象条件・電源条件・O&M体制の下で、各DACユニットのエネルギー消費、稼働率、メンテナンス性などを比較できるため、投資家やオフテイカーにとって「どの技術をどれくらいポートフォリオに組み込むか」を判断しやすくなります。

Deep Skyは、こうした実運転データの蓄積を通じて、最終的には10万〜100万t/年クラスの商業プラント設計に結びつけるロードマップを示しています。Deep Sky公式サイトでは、Alphaを「スケーラブルでリスクの低いCDRの加速拠点」と位置づけています。

要点:Deep Sky Alphaは「複数DACを同条件で走らせて比較する」ことで、コスト学習とスケールアップを加速させる役割を持つ。

ファンド+大口需要家+プラットフォームという資金スキーム

今回のプロジェクトでは、Bill Gates氏らが支援するBreakthrough Energy Catalystが約4,000万ドルを拠出し、初期CAPEXのリスクを吸収しています。同時に、カナダ・アルバータ州の公的支援も組み合わさり、高リスクな「初号機フェーズ」を後押ししています。

需要側では、RBC(Royal Bank of Canada)とMicrosoftがDeep SkyからのCDRクレジットを複数年にわたって購入する長期オフテイク契約を締結しています。これにより、Deep Skyは将来キャッシュフローの見通しを得やすくなり、技術パートナーやEPCとの契約も進めやすくなります。

全体として、「ファンド+大口需要家+テック・アグリゲーター」の三位一体モデルが構築されている点が重要です。DAC単体では事業性が見えにくい段階でも、この組み合わせによりリスクが分散され、プロジェクトが成立しやすくなります。

要点:高コストなDACの初期案件は、カタリティック資金と長期オフテイク、技術プラットフォームの三者が組むことで事業性を確保している。

日本企業への示唆:CDR戦略と技術実証の選択肢

航空会社・旅行会社・大企業が2030年以降のCDRクレジット調達を考える際、Deep Skyのような北米案件は有力な候補になります。航空、IT、金融といったセクターに近いプロジェクトであるため、自社事業とのストーリーを描きやすい点もメリットです。

同時に、日本発のDACや鉱物化技術が生まれた場合、国内だけで数百t/年の実証サイトを用意するのは簡単ではありません。Deep Sky Alphaのような「海外試験場」を活用すれば、グローバル市場に訴求できる実運転データを、比較的短期間で取得するシナリオも見えてきます。

CDR戦略を検討する日本企業は、①海外CDR案件の候補リスト化、②自社のネットゼロ目標との整合性評価、③将来の技術実証先としての試験場活用の可能性、という三つの観点で整理しておくと動きやすくなります。

DAC技術全体の位置づけや主要スタートアップの整理については、別途まとめたDACの基礎解説記事DACスタートアップ紹介記事もあわせて参照すると、技術比較がしやすくなります。

要点:日本企業にとってDeep Sky型プロジェクトは、「CDRクレジットの調達先」と「自社DAC技術の海外実証拠点」という二つの観点から重要なウォッチ対象になる。

筆者の視点

今後フォローしたい論点は、少なくとも次の3点です。第一に、Airbus DACユニットの実運転データ(エネルギー消費、稼働率、O&Mコスト)がどこまで公開されるか。第二に、Breakthrough Energy CatalystやRBC・Microsoftが、次のフェーズで追加投資やオフテイク拡大に踏み込むか。第三に、Deep Sky Alphaに参加するDAC技術のラインナップがどの程度多様化するかです。

これらの情報が出そろうほど、「どの技術とどの地域のCDR案件に賭けるか」を定量的に検討しやすくなります。ネットゼロ戦略を策定中の企業は、今回のAirbus×Deep Sky案件を一つのベンチマークとして、CDRポートフォリオ設計の前提をアップデートしていくことが重要になりそうです。

参考リンク集

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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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