さつまいもで発電してEVを急速充電?Terra Charge×霧島酒造の“地産地消インフラ”

さつまいも発電の電力でEV急速充電する模式図

EV充電ビジネスは設置場所の争いに加え、「どの電気を使うか」で差別化する段階に入っています。今回の取り組みは、再エネ電源×EV充電×地域ブランドを1つの観光体験として束ねた事例としても注目できます。

目次

3行サマリー

  • Terra Chargeは2026年1月に、霧島酒造との連携による「サツマイモ発電EV急速充電」の開始を発表しました。
  • 霧島酒造のサツマイモ由来バイオマス発電電力を使い、宮崎・都城の新拠点で120kWの急速EV充電サービスを提供します。
  • 観光拠点での地産地消モデルとして展開し、今後の横展開やスポンサー連携を見据えたEVインフラの設計例になります。

今回の発表の位置づけと背景

今回の取り組みは、EV充電スタートアップのTerra Chargeと焼酎メーカーの霧島酒造が組み、地域のバイオマス電源と急速充電を直接結びつけた点に特徴があります。単に「再エネ由来の電気を使う」だけでなく、原料となるサツマイモと焼酎づくり、観光体験まで一連のストーリーとして設計しています。

EV導入が進むなかで、企業や自治体は「充電できるかどうか」から「どのような価値のある充電場所か」に関心を広げています。再エネ電源と結びついた充電スポットは、来訪者にとっての選択理由や、企業のサステナビリティ説明の材料にもなります。

また、充電インフラ単体では投資回収が難しいケースも多くなっています。今回のように、地域の名産品や観光施設とセットで設計することで、物販・飲食・見学ツアーなどと一体でビジネスモデルを組み立てやすくなります。

Terra Chargeと霧島酒造のモデルと設備構成

Terra Chargeは、商業施設や宿泊施設、ゴルフ場などにEV充電器を展開するスタートアップです。今回の連携では、霧島酒造の施設「KIRISHIMA GREENSHIP icoia(キリシマ グリーンシップ イコイア)」に、急速充電器を導入しました。

https://terra-charge.co.jp/press-release/20260129/

導入されるのは、最大出力120kWの急速充電器(2口タイプ1基)です。2台同時充電に対応し、観光に訪れたEVユーザーが短時間で充電を完了できるスペックになっています。観光拠点での「ついで充電」を想定し、滞在時間と充電時間のバランスを取りやすい容量です。

電力は、霧島酒造が自社工場で運転するサツマイモ由来のバイオマス発電設備から供給されます。焼酎製造の過程で出る芋くずや焼酎粕などの副産物をメタン発酵させ、発電機で電気に変換する仕組みです。これまでは主に工場内のエネルギーとして使われてきた電力を、来訪者がEV充電という形で利用できるようにした形です。

利用者向けには、Terra Chargeの一般的なサービスと同様、スマホでQRコードを読み取ってその場で決済できる「ゲストモード」が提供されます。会員登録やアプリインストールのハードルを避けられるため、観光客など一見客の多い施設でも使いやすい運用です。

サツマイモ発電と地域循環のしくみ

霧島酒造のサツマイモ発電は、焼酎製造から出る副産物を有効活用するバイオマス発電です。公開されている事例資料では、発電設備の合計出力は約1,900kW級、年間発電量は約850万kWhと整理されており、工場の電力需要を大きく賄う規模になっています。

この電力を、工場内の設備だけでなく、観光拠点やEV充電にも活用することで、「さつまいも → 焼酎 → 副産物 → 電気 → EV」という地域循環のループが可視化されます。従来は見えにくかったエネルギー利用が、充電スポットという形で来訪者にも分かりやすくなります。

さらに、同じ敷地にはスターバックスなどのテナントも入り、将来的には「地域店舗から出るコーヒーかすなどもバイオマス電源の原料として活用する構想」が示されています。農産物や食品残渣、飲食店由来の廃棄物を束ねることで、EV充電を起点にした資源循環ストーリーを広げやすくなります。

このようなモデルは、地方自治体や観光地のカーボンニュートラル戦略とも相性が良いです。道の駅や農産物直売所、観光牧場などでも、地域のバイオマス電源とEV充電を組み合わせることで、「地域の電気で走るEV」という分かりやすいメッセージを打ち出せます。

他の再エネ連動型EV充電との比較と事業開発の示唆

再生可能エネルギーとEV充電を組み合わせる方法としては、自前の発電設備以外にも、再エネ電力メニューの契約や、非化石証書の購入、企業間の長期電力購入契約(Power Purchase Agreement、PPA)などがあります。これらは広域的にスケールしやすく、都市部のビルや商業施設でも導入しやすい選択肢です。

一方で、Terra Chargeと霧島酒造の取り組みのような「地域資源と完全に紐づいたモデル」は、施設そのものの物語性が高くなります。EV充電はあくまで入口であり、背後にある農業や食品加工、観光コンテンツなどを含めて一体のブランド体験として設計できるのが強みです。

事業開発の視点で見ると、「再エネ電源×EV充電×地域ブランド」をひとつのパッケージとして企画することで、単なるインフラ投資よりスポンサーやパートナーを集めやすくなります。自治体の観光予算や地域商社、地場スーパー・外食チェーンなど、複数プレイヤーとの連携余地が広がります。

人材面では、エネルギー分野だけでなく、観光・マーケティング・地域商社などのメンバーとチームを組めるかが成否を分けます。技術・制度の知識と同じくらい、「地域の物語をどう翻訳して来訪者に届けるか」という編集力が重要になってきます。

筆者の視点

エネルギー・脱炭素の実務の立場から見ると、今回の事例は「EV充電の案件に、最初からストーリーを組み込んでいる」点が印象的です。充電器の台数や出力の議論に終始せず、サツマイモ発電という文脈から逆算して企画した跡が見えます。

企業にとっては、EV充電を単体の収益事業として成立させるのは簡単ではありません。だからこそ、観光や物販、工場見学などとのセットで「滞在時間」と「消費額」を伸ばす設計が重要になります。今回のように地域ブランドと再エネを掛け合わせると、料金以上の価値を感じてもらいやすくなります。

また、このモデルはサツマイモ発電に限らず、さまざまな地域資源と組み合わせることができます。たとえば、畜産地域のバイオガス発電や、製材所の木質バイオマス、食品工場の廃棄物由来バイオガスなどでも、同じロジックで「資源循環×EV充電」を語ることができます。

今後のポイントは、「どこまでスケールさせるか」と「どこまでローカルにこだわるか」のバランスです。広域展開を目指す事業者は、共通のサービス基盤や料金設計を用意しつつ、地域ごとの資源やブランドをどう織り込むかを考えておくと、スポンサーにも利用者にも選ばれやすいEVインフラを設計しやすくなります。

参考リンク集

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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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