今週は、〔スタートアップ資金調達〕に$18,749m、〔M&A / Exit〕に$41m、〔プロジェクト・デット〕に$1,617mが集まりました(合計$20,407m、非開示は集計外)。
3行サマリー
スタートアップ資金調達動向:
Alphabet傘下の自動運転企業WaymoがSeries Dで$16bnを調達し、核融合や高度原子力、クラウド製造、気象データなど幅広い分野で大型ラウンドが続きました。VCファンド組成も含めると、スタートアップ・コーポレート関連で約$18.7bn規模の資金が動いています。
プロジェクト資金調達動向:
米国の蓄電プロジェクト開発Aypa Powerがバッテリー蓄電システム向けデットで$1.5bnを確保し、欧州・豪州でも建物の熱需要削減や太陽光+蓄電プロジェクト向けに中規模のプロジェクトファイナンスが相次ぎました。
政策動向:
EUが永久貯留型カーボンリムーバルの認証基準を含む枠組み案を公表し、米国ではクリーン燃料生産税額控除(セクション45Z)の具体的な適用ルール案が示されるなど、炭素除去と低炭素燃料の両面で実務的な指針が前進しました。
今週の資金調達動向
サマリー(USD概算)
| グループ | 件数 | 開示額合計 | 主な資金種別 | 代表案件 |
|---|---|---|---|---|
| スタートアップ/コーポレート(エクイティ/研究助成等) | 23 | $18,749m | Seed、Series A〜D、グロース、VCファンド組成 | Waymoの自動運転向けSeries D $16bn |
| M&A / Exit | 6 | $41m | 買収、PEファイナンス、事業停止 | ST Telemedia Global Data CentresのデータセンターPE買収ファイナンス |
| プロジェクト系(PF/デット/資産売買) | 4 | $1,617m | プロジェクトデット、開発ローン | Aypa Powerの蓄電プロジェクト向けデット$1.5bn |
— 注:合計は概算・非開示を除く。為替目安:£→$1.33、A$→$0.68、€→$1.10、C$→$0.74、¥→$0.0067(端数は$0.1m未満切り捨て)。通貨併記は一次発表に準拠。
A. スタートアップ / コーポレート
| 企業/国 | 金額/ステージ | 概要 | 主な投資家 |
|---|---|---|---|
| Waymo/US | $16,000m/Series D | 自動運転ソフトウェアとロボタクシーサービス開発 | T. Rowe Price, Fidelity, Baillie Gifford |
| Bedrock Robotics/US | $270m/Series B | 建設現場向け自律ロボットプラットフォーム | Blackstone, 3L, Northzone |
| Tomorrow.io/US | $175m/Growth | 衛星と気象データを活用した気象インテリジェンス提供 | BlackRock, Koch Disruptive Technologies, National Grid Partners |
| Vention/CA | $110m/Series D | クラウドベース製造自動化プラットフォーム | SoftBank, Inovia, StepStone Group |
| Lunar Energy/US | $232m/Series C+D | 家庭用蓄電池と分散電源ソフトウェア | Khosla Ventures, Earlybird, World Fund |
| newcleo/UK | $85m/Series A | 鉛冷却高速炉など次世代小型原子炉開発 | Exor Ventures, Azimut, Intesa Sanpaolo |
| GrubMarket/US | $50m/Growth | 食品サプライチェーンのオンライン流通とソフトウェア | Blackstone, General Atlantic |
| Avalanche Energy/US | $29m/Series A | 小型核融合マイクロリアクター開発 | Breakthrough Energy Ventures, DCVC, Lowercarbon Capital |
| R3 Robotics/FR | $17m/Series A | EVバッテリー自動解体ロボットシステム | BMW i Ventures, Atomico, Emblem, HCVC |
| Forerunner/US | $26m/Series B | 水道事業者向け洪水・インフラ管理SaaS | Spark Capital, Insight Partners, G2 Venture Partners |
| UBEES/FR | $9m/Series A | 養蜂データと受粉サービスのプラットフォーム | AXA Venture Partners, AgFunder |
| Polaron/UK | $8m/Seed | 電池材料の開発を加速するAI材料設計 | Racine2, Speedinvest, Futurepresent |
| Recupere Metals/FR | $6m/Seed | 金属回収とリサイクルプロセス技術 | Emblem, Elaia, Meridia |
| Powerwave/JP | $6m/Series A | 家庭の電力利用を最適化するAIスケジューリング | UTEC, 国内VC複数 |
| Sparxell/UK | $5m/Seed | 植物由来の高発色顔料と素材開発 | SPARX Group, Rhapsody Venture Partners |
| pHathom Technologies/US | $3m/Seed | 下水からメタンを回収する技術 | Wireframe Ventures, Refactor Capital, Cisco Foundation |
| LOOPARTS/JP | 非開示/Seed | EVバッテリーの再利用と物流プラットフォーム | UTECほか |
| Amperon/US | 非開示/戦略出資 | 電力需要予測と市場分析のエネルギーインテリジェンス | D-ISH |
| Mundi Ventures/ES | $885m/Fund close | 脱炭素インフラ向けKembara Climate Transition Fund | 機関投資家(LP)多数 |
| Daphni/FR | $311m/Fund close | 気候・インパクト系スタートアップ投資ファンドBlue | 機関投資家(LP)多数 |
| Voyager Ventures/US | $275m/Fund II | 北米中心のクライメートテックVCファンド | 年金基金、財団などLP |
| Slate Venture Capital/US | $157m/Fund close | 産業・エネルギー変革領域に投資するVC | 機関投資家(LP)多数 |
| The Footprint Firm/DK | $90m/Fund I | 北欧発の気候ソリューション特化VCファンド | 北欧機関投資家、ファミリーオフィス |
Waymo — 特集

出典:Waymo
会社の概要
Waymoは、米Alphabetグループの自動運転技術会社で、もともとはGoogleの自動運転プロジェクトとして立ち上がった組織です。現在は自社の自動運転システム「Waymo Driver」を軸に、都市部でのロボタクシーサービスや物流向け自動運転サービスを展開しています。
事業の中心は、スマートフォンアプリから呼べるロボタクシーサービスで、米国ではフェニックスやサンフランシスコ、ロサンゼルスなどで無人走行による有料サービスを提供しています。今回の大型調達により、サービスエリアの拡大や車両台数の増強、技術開発への追加投資が期待されます。
何ができるのか
Waymoの提供価値は、運転を人からソフトウェアに置き換えることで、安全性と利便性を高めつつ、移動コストを長期的に下げられる可能性にあります。利用者は通常の配車アプリのように場所を指定して車両を呼び、無人の車に乗って目的地まで移動できます。
事業者向けには、配車プラットフォームやフリート運営サービスと組み合わせての提供が想定されており、将来的には物流やラストワンマイル配送、企業のシャトル運行などへの展開余地も大きいです。タクシーやライドシェアと同じ「移動サービス」でありながら、ドライバーの採用・教育・シフト管理をソフトウェアに置き換えられる点が大きな特徴です。
技術のしくみ
Waymo Driverは、車載カメラ、レーダー、ライダーなど複数のセンサーからのデータを統合し、周囲の車両や歩行者、信号、道路標識をリアルタイムに認識します。認識した情報をもとに、自車の挙動を数秒先までシミュレーションしながら、加減速や車線変更、右左折などの運転操作を自律的に決めていきます。
こうした判断ロジックは、シミュレーターと実世界の走行データの両方を用いて継続的に学習・チューニングされており、異なる都市の道路構造や交通ルールにも対応できるよう設計されています。また、通信ネットワークを通じてソフトウェアを更新できるため、フリート全体に安全性向上のアップデートを配信しやすい構造になっています。
料金・導入の進め方
利用者の体験としては、料金体系は既存のタクシーやライドシェアと近く、距離や時間に応じた運賃がアプリ上で提示されます。都市への導入にあたっては、自治体や規制当局との協議のもと、一部エリアでのパイロット運行から始め、徐々に運行エリアや時間帯を広げていく進め方が一般的です。
事業者側では、自社でフリートを持つか、Waymoとパートナーシップを組んだモビリティ事業者を活用するかといった選択肢があります。車両の調達や保守、保険、ソフトウェア使用料などを含めた総コストを見ながら、既存のタクシー・バス事業との役割分担を検討する必要があります。
他社との違い
- 長年の公道走行とシミュレーションで蓄積した膨大な走行データを持ち、都市ごとの細かな交通パターンを反映した運転モデルを構築している点。
- センサー、地図、運転アルゴリズム、車両インテグレーションまで自社で垂直統合しているため、安全性やサービス品質を一定水準以上に保ちやすい点。
- 一般顧客向けのロボタクシーサービスで既に有償運行の実績があり、規制当局との対話や地域コミュニティとの調整ノウハウを蓄積している点。
どこで効果が出やすいか/日本での示唆
Waymoのモデルは、タクシー需要が高く、渋滞や駐車スペース不足が課題となっている大都市圏で特に効果が出やすいと考えられます。深夜や早朝など人手を確保しにくい時間帯の移動ニーズをカバーしやすく、既存交通との組み合わせで都市全体の移動体験を底上げできる可能性があります。
日本では、自動運転タクシーの実証が各地で進んでおり、地方部の公共交通維持や観光地での周遊交通など、課題は多い一方でユースケースも明確になりつつあります。Waymoのような大規模資金調達は、ソフトウェア企業だけでなく、車両メーカー、地図・センシング、保険、モビリティサービスなど周辺領域にも連鎖的な投資と提携を促す可能性があり、日本企業としては「どこを補完しにいくか」を早めに整理しておくと動きやすくなります。
B. M&A / Exit
| 企業/国 | 金額/資金種別・ステージ | 概要 |
|---|---|---|
| ST Telemedia Global Data Centres/SG | 非開示/PE買収ファイナンス | データセンター事業がPEファンド主導の買収対象となり脱炭素投資を加速 |
| Kingspan/IE | 非開示/M&A | インドのEV充電インフラ施工事業者Multiway Infraを買収 |
| Titan Group/GR | 非開示/M&A | フランスの低炭素セメントターミナル運営会社Vracs de L’Estuaireを買収 |
| Lenzing/AT | 非開示/M&A | 木材由来代替繊維を開発するTreeToTextileを完全子会社化 |
| Marico/IN | $41m相当/M&A | 植物性サプリブランドCosmixを買収しインドでのウェルネス事業を拡大 |
| KOKO Networks/KE | 非開示/事業停止 | バイオエタノール燃料流通網を運営していたが財務悪化により破綻 |
C. プロジェクト系
| 企業/国 | 金額/資金種別・ステージ | 概要 |
|---|---|---|
| Aypa Power/US | $1,500m/プロジェクトデット | 米国各地の大型蓄電プロジェクト向けに長期デットを調達 |
| Digital Halo/DK | $47m/プロジェクトファイナンス | ビルの熱需要削減サービス向けポートフォリオ資金調達 |
| Terra Energy/AU | $70m/プロジェクトローン | 豪州の太陽光と蓄電プロジェクト開発資金を確保 |
| Vorn Bioenergy/DE | 非開示/プロジェクトデット | バイオメタン拠点の開発・拡張に向けた長期融 |
参考文献・出典リンク一覧
一次情報・企業プレス・公的資料
- Waymo Newsroom — Series D資金調達とロボタクシーサービス拡大方針
- Tomorrow.io Press Release — 気象インテリジェンス事業の$175m資金調達発表
- Lunar Energy — 住宅用蓄電とソフトウェア事業での$232m新規調達発表記事
- Avalanche Energy — マイクロ核融合リアクター開発に向けたSeries A資金調達のニュース
- R3 Robotics — EVバッテリー自動解体ロボットへの投資ラウンド概要
- Polaron — 材料科学インテリジェンス層構築に向けた$8m Seed調達のニュースリリース
- Recupere Metals — 金属リサイクル技術に関するSeed調達発表
- Sparxell — 植物由来顔料技術へのSeed資金調達を公表したプレスリリース
- Amperon — D-ISHからの戦略出資発表
- Mundi Ventures — Kembara Climate Transition Fundのクローズ発表
- Voyager Ventures — 第2号クライメートテックファンドのクローズ発表
- ST Telemedia Global Data Centres — データセンター事業のPE買収ファイナンスに関する発表
- Kingspan — Multiway Infra買収に関するニュースリリース
- KOKO Networks — 事業停止および今後の対応に関する公式声明
- Aypa Power — 蓄電プロジェクト向け$1.5bnデットファイナンスに関する発表
- Vorn Bioenergy — バイオメタン事業へのプロジェクトファイナンス契約に関する発表
- Lenzing — TreeToTextile完全子会社化に関するプレスリリース
- Marico — Cosmix買収と評価額に関する開示
- Digital Halo — 建物の脱炭素化プロジェクト向けファイナンス組成に関するニュース
- Terra Energy — 豪州太陽光+蓄電案件のプロジェクトローンに関する発表
- Titan Group — Vracs de L’Estuaire買収に関する発表
- European Commission — Carbon Removal Certification Framework(CRCF)における永久貯留型炭素除去の標準案公表ページ
- U.S. Treasury / IRS — クリーン燃料生産税額控除(セクション45Z)に関する提案規則と解説文書
CTVC
CTVC Issue 282(本稿は同号の「Deals of the Week(2026/2/2–2/9)」を起点に、一次情報で裏取りし独自に要約・分析しました。先週号は #281)。
略語集
| 略語 | 正式名称・説明 |
|---|---|
| VC | Venture Capital(ベンチャーキャピタル投資。未上場企業への株式投資) |
| PE | Private Equity(未上場企業や事業を対象とするプライベート・エクイティ投資) |
| PF | Project Finance(プロジェクト単位のキャッシュフローを返済原資とするファイナンス手法) |

