中型EV Harbingerが$160M調達、インド再エネ ReNewにPFデット$331M|今週のクライメートテック資金調達 #013

今週は、〔スタートアップ資金調達〕に$678.8m、〔M&A / Exit〕に$1200m、〔プロジェクト・デット〕に$1257.6mが集まりました(合計$3136.4m、非開示は集計外)。

目次

3行サマリー

スタートアップ資金調達動向:
Harbingerの$160m Series CとValar Atomicsの$130m Series Aが目立ち、電動商用車と次世代燃料・蓄電池スタートアップに合計$678.8mが集まりました。核融合燃料候補や金属燃料発電、室温フロー電池など、ハイリスクだがスケールポテンシャルの大きい案件が並んだ週でした。

プロジェクト資金調達動向:
AGLの株式セカンダリー(約$510m相当)、ReNewのPFデット$331m、DESFAのEU Innovation Fund助成$196mなど、ユーティリティ・系統・CCS案件向けに$1257.6m規模の長期資本が動きました。液体空気蓄電のHighviewや自然由来CDRのVarahaもプロジェクトファイナンスで前進しています。

政策動向:
欧州委員会はInnovation Fundから61件へ合計€2.9b(約$3.2b)を配分し、エネルギー集約産業・再エネ・CCSなどの大型案件を支援すると発表しました。一方、日本では経産省がトランジション・ファイナンス補助金の採択結果を更新し、製紙・海運などの移行投資を後押ししています。

今週の資金調達動向

サマリー(USD概算)

グループ件数開示額合計主な資金種別代表案件
スタートアップ/コーポレート(エクイティ/研究助成等)11$678.8mSeries A〜C、Seed、Growth、ポストIPO、ファンド組成Harbinger(中型EVトラック)$160m Series C
M&A / Exit5$1200mM&A、事業売却、破産申請Pearce ServicesのCBREによる約$1200m買収
プロジェクト系(PF/デット/資産売買)5$1257.6mPFデット、PFエクイティ、助成金、セカンダリーReNewのADBによる再エネPFデット$331m

— 注:合計は概算・非開示を除く。為替目安:£→$1.33、A$→$0.68、€→$1.10、C$→$0.74、¥→$0.0067(端数は$0.1m未満切り捨て)。通貨併記は一次発表に準拠。

A. スタートアップ / コーポレート

企業/国金額/ステージ概要主な投資家
Harbinger/US$160m/Series C中型商用EV向け電動シャシー開発・量産FedEx, Capricorn TIF, THOR Industries, Tiger Global
Hive Energy/GB$79.8m/Growth(デット)世界各地で太陽光・蓄電池案件を開発HSBC
Infinity Power/NL$40m/Growthアフリカ中心の再エネ発電事業者EBRD
Valar Atomics/US$130m/Series A核技術起点の合成燃料プラットフォームDay One, Dream Ventures, Snowpoint, Anduril
Voya Energy/US$13m/Seed金属燃料を用いたカーボンフリー発電システムEIP, Founders Fund, In-Q-Tel,他
SAIA Agrobotics/NL$12m/Series A室内農業向け自律収穫ロボットと栽培システムCHECK24 Impact, EIC, Navus, OostNL
Quino Energy/US$10m/Series A有機分子を用いるレドックスフロー電池量産Atri Energy Transition
Flux XII/US$4m/Seed水系フロー電池による長時間蓄電Grantham Foundation, WARF, Desai, gener8tor
Lifezone Metals/IM$15m/Post-IPO equityクリティカルミネラルの採掘・精錬技術提供機関投資家(公開株式増資)
Audacia/FR$191.4m/成長ファンド次世代燃料・工業脱炭素向けCalderionファンド年金基金、保険会社など機関投資家
VOX Capital/BR$50m/インパクトファンド農業移行支援ファンドCCATの初回クローズ開発金融機関、財団、民間LP

Harbinger — 特集

会社の概要

Harbingerは2021年創業の米国カリフォルニア州ガーデナ拠点の中型商用EVメーカーです。中・短距離配送やRV向けに特化した電動ストリップドシャシーを自社開発し、車体メーカーやフリート事業者に供給しています。2025年11月にFedExやCapricorn Technology Impact Fundなどをリード投資家とするSeries Cで$160mを調達し、累計調達額は$358mに達しました。

何ができるのか

Harbingerは、クラス5〜6の中型トラック向けに電動専用設計のシャシーを提供し、宅配便・小売・生協などのフリート事業者が既存のボディメーカーと組み合わせてEVトラックを導入できるようにします。FedExは今回のラウンドと同時に53台の車両を発注しており、配送ネットワークの脱炭素化と運用コスト削減を同時に狙う導入モデルが具体化しています。

技術のしくみ

Harbingerのプラットフォームは、電動パワートレインを前提にゼロベース設計されたストリップドシャシーです。バッテリーパック、モーター、インバータ、サスペンション、ブレーキなど主要コンポーネントをフレーム内に一体設計し、重量配分と耐久性を最適化しています。このアーキテクチャにより、既存のディーゼル車の改造では難しいフラットフロアや低床構造を実現しつつ、量産性と整備性を高めています。また、ADAS機能や騒音低減、乗り心地改善によりドライバー疲労を減らす設計が特徴です。

ビジネスモデル

Harbingerの車両は、完成車メーカーや車体架装メーカー経由で販売されるB2Bモデルが中心です。フリート事業者は、①必要な車両クラスと航続距離、②積載量、③ボディタイプ(宅配バン、ボックス車、RVなど)を指定し、シャシーとボディを組み合わせて発注します。資本制約の大きい事業者向けには、リースや長期レンタル、フリート・マネジメント契約と組み合わせた導入スキームも検討されています。FedExのような大口顧客は複数年契約で生産スケジュールを固定し、TCO(総保有コスト)と排出削減の両面でメリットを取る形が一般的です。

他社との違い
  • 中型商用車に特化し、軽商用や乗用EVとは異なる専用シャシーを量産している点。
  • バッテリーや制御系を含めた垂直統合でコストと性能を同時に最適化している点。
  • FedExやTHORなど既に大口顧客を獲得しており、量産立ち上げ段階で需要の見通しが確保されている点。
どこで効果が出やすいか/日本での示唆

Harbinger型の電動中型トラックは、都市部〜近郊の幹線輸送と宅配を兼ねる「中距離・中積載」セグメントで効果が出やすいと考えます。理由は、日々の走行距離と積載量が比較的安定しており、充電計画を立てやすい一方で、騒音規制や排出規制の影響を受けやすいからです。日本では、首都圏・関西圏のラストマイル配送やコンビニ・ドラッグストア向け共同配送などが類似セグメントであり、国内OEMや車体メーカーが同様の電動シャシー型ビジネスを構築するうえで、Harbingerの事例は参考になりそうです。

B. M&A / Exit

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
Kuppa/GB非開示/M&A家庭向けスマートエネルギー最適化ソフトの買収
Tilli/FR非開示/M&A衣類等のリペア・ケアサービスプラットフォームの買収
Pearce Services/US$1200m/M&A再エネ・通信インフラ保守サービス企業の売却
Pachama/US非開示/M&A森林カーボンクレジット市場プラットフォームの買収
Pine Gate Renewables/US非開示/破産米国大手再エネ開発事業者の破産申請・事業整理

C. プロジェクト系

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
AGL Energy/AU$510m/Secondary既存株主からの株式取得によるオーナーシップ再編
ReNew/IN$331m/PFデットインド再エネ発電・送配電案件向け長期プロジェクト融資
DESFA/GR$215.6m/GrantギリシャのCO2輸送・貯留インフラ整備向け助成金
Highview Power/GB$171m/PFエクイティ液体空気エネルギー貯蔵プロジェクトの建設資金
Varaha/IN$30m/PFエクイティ農業由来CDRプロジェクトとカーボンクレジット生成

一次情報・企業プレス・公的資料

CTVC

CTVC Issue 271(本稿は同号の「Deals of the Week(2025/11/10–11/17)」を起点に、一次情報で裏取りし独自に要約・分析しました。先週号は #270)。

略語集

略語正式名称・説明
EVElectric Vehicle:電気自動車。バッテリーとモーターで走行する車両。
PFProject Finance:プロジェクトファイナンス。案件のキャッシュフローを主な返済原資とする融資。
IPOInitial Public Offering:新規株式公開。株式市場への上場による資金調達。
CCSCarbon Capture and Storage:CO2回収・貯留。排出源からCO2を回収し地下等に貯留する技術。
LPLimited Partner:投資ファンドの出資者。年金基金や保険会社などが典型。

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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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