ホットモット等の廃食油回収を拡大—SAF原料の国内調達を後押し

プレナスは2025年11月、神奈川県内の「ほっともっと」全店を廃食用油の回収対象に追加します。店舗で発生する廃食用油(Used Cooking Oil: UCO)を持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel: SAF)の原料として供給し、年約510トンを確保して国産SAFの原料基盤を広げます。

目次

3行サマリー

  • プレナスは神奈川の「ほっともっと」全店を回収対象に追加し、店舗発生UCOをSAF原料として供給、年約510tを見込みます。
  • 政府は2030年に航空燃料の10%をSAFへ置換する方針で、2026年に混合義務ロードマップを策定予定です。
  • 自治体・小売の店頭回収と外食の業務油を同一エリアで集約し、空港近接で前処理する短距離物流が鍵です。

今回の発表の要点

プレナスは「ほっともっと」「やよい軒」「MKレストラン」などの自社店舗から出るUCOを国産SAFの原料として供給しています。2025年11月から神奈川県内の「ほっともっと」全店舗を新たに回収対象に追加します。

2025年10月末時点の国内店舗数は2,809店で、既存の回収参加店舗は全国222店です。今回の拡大により、年間供給量は約510トン、二酸化炭素(CO₂)削減見込みは約1,275トン/年となります。連携先は日揮ホールディングス、レボインターナショナル、SAFFAIRE SKY ENERGYで、Fry to Fly Projectにも参画します(2025年11月4日公表)。

政策の地合い:2030年「10%」と義務化の見通し

国土交通省は、2030年に本邦エアラインの燃料使用量の10%をSAFに置換する方針です。併せて2026年に「中長期SAF混合義務ロードマップ」を策定予定で、段階的ブレンド義務と証書(ブック&クレーム等)の併用により、初期のコスト差(SAFプレミアム)を緩和しつつ需要の確度を高める設計が想定されます。供給側では2025〜2026年に最終投資決定(Final Investment Decision: FID)を複数案件で狙い、ボトルネックは原料・前処理・空港近接インフラです。

回収拠点と都市圏物流が勝負を決める理由

日本では、回収済みの廃食用油(UCO)のうち年間約10万トンが海外へ輸出されています。プレナスが神奈川県内の「ほっともっと」を回収対象に広げる動きは、回収拠点の密度を高めて国内循環を太くすることで、原料の取り合いと供給不安を直接下げます。原料を国内で循環させられるほど、価格変動への耐性が上がり、国産SAFの実量拡大に近づきます。

都市圏の設計では、自治体の家庭油と小売店頭の回収、外食チェーンの業務油を同一エリアで“地区別混載”し、空港・湾岸近接の前処理拠点へ短距離搬入する動線が効率的です。川崎市は市内拠点での回収手順(ボトル→タンク)を明示し、横浜市や東京都も日本航空(Japan Airlines: JAL)と連携した店頭回収・キャンペーンを展開しています。こうした都市圏の“面”づくりに、プレナスの広域ネットワークが加わることで、回収量の平準化と輸送コストの抑制が同時に進みます。

SAF製造のコストと品質

廃食用油(Used Cooking Oil: UCO)からのSAFは、前処理→水素化→異性化・分別→蒸留の順に製造します。

まず前処理で水分・固形分・遊離脂肪酸(Free Fatty Acid: FFA)を下げ、次に加水素処理(Hydroprocessing/水素化脱酸素)で酸素を取り除き、異性化で低温流動性を整え、蒸留で規格に合わせます。完成品は合成パラフィン系ケロシン(HEFA-SPK: Hydroprocessed Esters and Fatty Acids–Synthetic Paraffinic Kerosene)で、国際規格(例:ASTM D7566)に適合させ、通常は化石ジェット燃料にブレンドして使います。

このフローに直結するのが原料品質です。前処理コストは水分・固形分・酸価(FFA)で上下し、FFAが高いほど水素消費や触媒負担が増え、後工程のOPEXに跳ね返ります。チェーン横断で容器仕様や保管温度を標準化し、受け渡し時に重量・含水・FFAを計測・記録すれば、異物混入を抑えつつ工程負荷の見積もり精度が上がります。結果として、HEFA-SPK経路の歩留まりと運転条件を安定させやすくなります。

参考:Fry to Fly Project

Fry to Fly Project(フライ・トゥ・フライ)は、日揮ホールディングスが主導する産学官連携の取り組みです。目的は、廃食用油(Used Cooking Oil: UCO)などを起点に国産の持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel: SAF)サプライチェーンを広げ、社会実装を加速することにあります。

  • ねらい:国産SAFの商用化を後押しし、原料回収から製造・供給までの接続を強化。
  • 主な領域:UCO回収の普及・啓発、前処理〜製造〜供給の実証、LCA/認証に関する共通理解の形成、情報発信。
  • 関係主体:外食・小売、収集運搬、前処理・製造、航空会社・空港、自治体・研究機関・金融など。
  • 本件との関係:プレナスの回収拠点拡大は、「面」で原料を集めるという同プロジェクトの方向性と合致し、地域での協働や認知向上に寄与します。

プロジェクトの全体像や参加団体は、日揮ホールディングスの特設ページに整理されています。詳細は公式情報をご参照ください:Fry to Fly Project(公式)

出典

  • 株式会社プレナス「国産SAFの原料となる廃食用油の供給エリアを拡大—11月より神奈川県内の『ほっともっと』全店舗で開始」(2025年11月4日)PR TIMES
  • 株式会社プレナス「店舗で使用した油を、環境にやさしい航空燃料へ」(2025年2月7日)企業サイト
  • 国土交通省「SAFの導入普及への取り組み」(2025年6月25日)PDF
  • 経済産業省「2030年における持続可能な航空燃料(SAF)の供給目標量の設定について」(2024年1月、官民協議会資料)PDF
  • JGCホールディングス「Fry to Fly Project(特設ページ)」Web
  • 川崎市「家庭からでる廃食用油のリサイクル」(2025年6月10日更新)Web
  • 日本航空(JAL)「すてる油で空を飛ぼう(家庭の廃食油回収の流れ)」Web
  • 東京都環境局「家庭の油で飛行機を飛ばそう(回収キャンペーン)」Web

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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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