素材や建材の分野で、ガラスや太陽光パネルを「捨てずに回す」動きが少しずつ広がっています。三菱UFJ銀行はAGCと組み、2026年1月29日に板ガラスなどの資源循環で協業を始め、中古の太陽光ガラスを自社ビルで再利用する実証に乗り出しました。
3行サマリー
- 2026年1月に三菱UFJ銀行とAGCが、板ガラスなど素材の資源循環で協業する覚書を締結しました。
- 協業の一環として、三菱UFJ銀行のビルに後付け型の太陽光ガラスを設置し、リユースとリサイクルを検証します。
- AGCは2026年度内の実用化を目指し、三菱UFJ銀行は顧客向けの導入支援や金融スキームへの展開を検討しています。
資源循環協業の概要
今回の協業は、三菱UFJ銀行とAGCが締結した「素材(板ガラス等)の資源循環に関する覚書」が出発点です。この覚書では、板ガラスなどの素材について、製造から使用後の回収・再資源化までを一体で設計することをめざしています。いわば、ガラスのライフサイクル全体を二社で組み直そうという試みです。
背景には、板ガラスの原料を海外からの輸入に大きく依存している現状があります。原料価格や調達リスクが変動しやすい中で、国内でガラスや太陽光パネル由来のガラスを循環させることは、脱炭素と資源安定の両面で意味があります。ここに、メガバンクとガラス大手が組んで「国産カレット(廃ガラス)」を増やすという文脈があります。
協業では、サプライチェーンの「動脈側(製造・販売)」と「静脈側(回収・リサイクル)」をつなぐエコシステムづくりがテーマです。三菱UFJ銀行は顧客ネットワークや金融の知見を活かし、導入企業や自治体との橋渡し役を担います。AGCは素材・技術側の設計と実証を進め、循環スキームとして成立する条件を探っていく役割です。
中古太陽光ガラスを使った実証の中身

出典:https://www.bk.mufg.jp/info/pdf/20260129_circular_economy.pdf
協業の「顔」となるのが、建材一体型太陽光発電ガラス「サンジュール®」の後付けタイプです。これは既存窓の室内側に追加で取り付けられる太陽光ガラスで、採光性を保ちながら発電もできるのが特徴です。屋根にパネルを載せにくい都市部のビルでも、窓を使って再エネを取り込める点がポイントです。
実証の舞台は、三菱UFJ銀行大阪ビルと鶴舞支店の2カ所です。大阪ビルでは、AGCが別の場所で使用していた後付けサンジュールの「中古モジュール」を再利用して設置します。そこで、取り外しや再設置がどれくらい容易か、見た目や快適性への影響はどうかといった観点で、リユース性をチェックします。

出典:https://www.bk.mufg.jp/info/pdf/20260129_circular_economy.pdf
さらに大阪ビルでは、使用後のガラス部を砕いて「ガラスカレット」とし、建材用ガラスへの再利用をめざします。再資源化のプロセスにかかるコストやCO₂排出量も合わせて評価し、どこまで「水平リサイクル」に近づけるかを確認する狙いです。ここが、単なる再利用ではなく「資源循環」の実証になっている部分です。
一方の鶴舞支店では、長期間の設置を通じて発電性能と耐久性を見ていきます。窓際という条件で、どの程度の発電量が得られるかを実測し、そのデータをもとにライフサイクルアセスメント(LCA)も実施する計画です。運用中の発電メリットと、製造・リサイクルに伴う環境負荷を同じ土俵で比較できるようにするイメージです。
金融×素材でつくるサーキュラーエコノミーの文脈
三菱UFJフィナンシャル・グループは、2050年までに投融資ポートフォリオのネットゼロをめざす方針を掲げています。その中で、顧客の排出削減に役立つ技術を見極め、金融商品や支援メニューに組み込んでいくことを重視しています。今回のように、自社施設を使って技術の実力や課題を把握するのは、その前段となる動きです。
AGC側も、2050年カーボン・ネットゼロと2030年の温室効果ガス削減目標を宣言しています。製造プロセスの省エネや燃料転換に加えて、カレット活用による資源循環を強化しているのが最近の流れです。太陽光ガラスを含む建材ガラスの循環スキームを整えることは、こうした長期目標に向けた具体策の一つになっています。
今回の協業は、「技術の実証」と「金融スキームの設計」をセットで考えている点が特徴です。たとえば、ビルオーナーが後付けサンジュールを導入し、将来の交換・回収・リサイクルまでを含めた長期契約を結ぶケースが想定できます。そのときに、グリーンローンやサステナビリティ・リンクローンのような枠組みをどう組み合わせるか、という議論にもつながっていきます。
他の選択肢との比較と企業へのインパクト
太陽光パネルのリサイクルでは、これまでも「パネルを破砕して道路用骨材などに使う」といったダウンサイクル事例が中心でした。これに対してAGCは、パネルから分離したカバーガラスを建築用板ガラスに戻す「水平リサイクル」のスキームづくりを進めています。同社は別途、協業パートナーとともに、2030年までに年間数千トン規模のガラスリサイクルを目標に掲げています。
今回のBIPVガラス実証は、その延長線上に位置づけられます。建材ガラスとして使いながら発電し、寿命を迎えたら再び建材ガラスへと循環させるイメージです。一般的な屋根置きパネルのリサイクルと比べて、「建材ガラスメーカー自身がライフサイクル全体を設計できる」という意味では、役割が少し異なります。
企業側のインパクトという観点では、ビルオーナーやデベロッパー、REIT、テナント企業にとって新しい選択肢が増えることになります。BIPVは、「省エネ・再エネ設備」と「環境ストーリー」を同時に提供できる設備です。さらに、将来の撤去や更新時にどう資源循環されるかまで含めて説明できれば、ESG評価やグリーンボンドのフレームワークにも組み込みやすくなります。
実務担当者の立場からすると、「発電量と投資回収」「運用中の保守」「撤去・リサイクルの費用」という三つのポイントを同じテーブルで検討できるのが理想です。今回のように金融機関が協業するケースでは、こうしたセットの議論をしやすくするための情報やモデルが整えられていくことが期待できます。
筆者の視点
このニュースでまず目を引いたのは、「中古の太陽光ガラスを自社ビルに付けてみる」という動きです。多くの実証は新品を導入して終わりになりがちですが、今回はリユースとリサイクルを最初からテーマに据えています。資源循環を本気で進めようとするときの、現場感覚に近い設計だと感じました。
次に気になるのは、金融機関がどこまで具体的なスキームに踏み込むかです。いずれ、中小ビルオーナーや地方の事業者向けに、BIPVや高性能ガラスを対象にしたパッケージ型の金融商品が出てくるかもしれません。そのためには、今回のような実証を通じて、設備投資のリスクとリターンの感覚を銀行側が自分ごととして持てるかどうかが鍵になりそうです。
素材メーカーの視点では、「モノを売る」だけでなく「循環モデルを一緒に設計する」ことの重要性が改めて見えてきます。今回の協業のように、メーカーがリサイクル条件やリユースのしやすさを前提に製品を設計し、金融機関とセットで提案するケースは、他の素材分野にも広がる余地があります。とくに、ガラス、金属、プラスチックといった大量素材では、こうしたモデルの有無が事業の競争力に効いてきそうです。
企業として今できることは、自社の建物や設備の中で「数十年後に大量の廃棄が出そうなもの」を洗い出しておくことだと思います。そのうえで、メーカーや金融機関と一緒に、更新や建て替えのタイミングでどのような資源循環オプションがあり得るかを早めに相談しておくと、選択肢が広がります。三菱UFJ銀行とAGCの取り組みは、そのときに参照できる具体的なモデルケースの一つになりそうです。
参考リンク集
- 三菱UFJ銀行「三菱UFJ銀行とAGC、資源循環に関する覚書を締結」(2026年1月29日|資源循環協業と実証内容の公式発表)
https://www.bk.mufg.jp/info/pdf/20260129_circular_economy.pdf - AGC「三菱UFJ銀行とAGC、資源循環に関する覚書を締結」(2026年1月29日|BIPVガラス「サンジュール®」の位置づけと今後の展開)
https://www.agc.com/news/detail/1210653_2148.html - インプレス SmartGridフォーラム「建材一体型太陽光を資源循環、三菱UFJとAGCが協業」(2026年2月4日|中古モジュール活用と実用化スケジュールの解説)
https://sgforum.impress.co.jp/article/5785 - AGC「Solar Panel Cover Glass Horizontal Recyclingに関する発表」(2025年10月24日|太陽光パネルカバーガラスの水平リサイクルスキーム)
https://www.agc.com/en/news/pdf/20251024e.pdf - MUFG「MUFG Climate Report 2025」(2025年|MUFGグループの気候変動対応方針とネットゼロ目標の概要)
https://www.mufg.jp/csr/report/progress/

