環境省が選んだ「環境スタートアップ大賞」4社 いま日本のクライメートテックで何が伸びている?

環境省の環境スタートアップ大賞受賞4社を解説

環境分野でスタートアップを公的に“見える化”する動きが、日本でも少しずつ厚くなっています。環境省が2026年1月に「環境スタートアップ大賞」の受賞4社(応募71社)を公表し、2月に「Green Startup Pitch」で表彰イベントを開きます。

目次

3行サマリー

  • 環境省は2026年1月、「環境スタートアップ大賞」の受賞者を公表しました。
  • 大臣賞・事業構想賞・選定委員賞の計4社が、Green Startup Pitchでピッチと表彰を受けます。
  • 2026年2月20日に東京国際フォーラムで開催され、会場100名とオンライン配信で実施されます。

今回の発表の位置づけ

環境スタートアップ大賞は、将来有望な環境スタートアップを表彰し、ロールモデルづくりと事業機会の拡大を支援する枠組みです。環境省は、応募のあった申請書をもとに外部有識者による選定委員会を設け、受賞者を選びました。

今回の発表では、受賞企業の公表とあわせて、受賞者がショートピッチと表彰を受けるイベント「Green Startup Pitch」の開催が示されています。省庁主催のピッチと表彰が一体になっているため、スタートアップ側にとっては認知とネットワーキングを同時に得やすい場になっています。

投資家や事業会社にとっては、「環境省が選んだスタートアップはどこか」というシグナルになる点が重要です。個社の技術評価というより、環境政策の文脈で注目されているテーマの方向性を知る手がかりとして使えます。

受賞4社と技術分野の俯瞰

今回の受賞は、「環境スタートアップ大臣賞」「環境スタートアップ事業構想賞」「環境スタートアップ選定委員賞(2社)」の合計4社です。分野としては、エネルギーそのものよりも「食」「資源循環」「カーボンリムーバル」に寄った構成で、日本版クライメートテックを広くとらえる姿勢がうかがえます。

環境スタートアップ大臣賞:Oishii Farm Corporation

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000075385.html


Oishii Farmは、いちごを中心とした植物工場による安定生産を行う企業です。温度や湿度、二酸化炭素濃度、光環境などを精密に制御しつつ、ハチによる自然受粉も組み合わせることで、高品質な果実を安定的に供給することを目指しています。

このテーマは、気候変動の影響を受けやすい露地栽培から、気候影響を受けにくい生産体制へのシフトという意味を持ちます。食の安定供給と環境負荷低減を一体で考えるアプローチとして、大臣賞に位置づけられています。

環境スタートアップ事業構想賞:Planet Savers株式会社

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000130404.html


Planet Saversは、ゼオライトを用いたダイレクト・エア・キャプチャー(Direct Air Capture、DAC。大気中の二酸化炭素を直接回収する技術)の装置開発・事業化に取り組む企業です。吸着材の特性を活かしながら、大気中の低濃度CO₂を効率よく回収することを狙っています。

気候対策は削減だけでは足りず、排出済みのCO₂を取り除くカーボンリムーバルの必要性が高まっています。日本発のDACスタートアップが事業構想賞に選ばれたことは、カーボンリムーバル領域を政策側も重視しているシグナルとして受け取れます。

環境スタートアップ選定委員賞:株式会社エマルションフローテクノロジーズ

https://emulsion-flow.tech/technology/


エマルションフローテクノロジーズは、独自の溶媒抽出技術「エマルションフロー」によってレアメタルを分離・回収する技術を持つ企業です。リチウムイオン電池などから、低コスト・高効率・高純度で金属を回収し、水平リサイクルにつなげることを目標にしています。

再生可能エネルギーや電動化を支えるバッテリーには、多くの重要鉱物が使われます。こうした鉱物の調達リスクと環境負荷を抑えるために、リサイクル技術は必須要素になりつつあり、まさに脱炭素インフラの“裏側”を支える技術です。

環境スタートアップ選定委員賞:株式会社クォンタムフラワーズ&フーズ

https://qff.jp/quantum_tec/

クォンタムフラワーズ&フーズは、「スピーディ育種」と呼ばれる中性子線を用いた育種技術をコアに、植物や微生物の品種改良サービスを提供する企業です。従来よりも短期間・低コストで新品種を生み出せることを特徴としています。

この技術は、乾燥や高温、塩害などの気候ストレスに強い作物開発にもつながる可能性があります。農業・食品分野での気候適応と生産性向上を同時に狙えるテーマとして、クライメートテックの周辺領域を押し広げる位置づけです。

Green Startup Pitchの運営と参加導線

Green Startup Pitchは、令和8年2月20日(金)14:00~17:30に、東京国際フォーラム ホールD5で開催されます。会場参加の定員は100名で、YouTubeによるライブ配信も併用されます。スタートアップ、自治体、企業、投資家など、環境分野に関心のある人が広く対象です。

環境省
令和7年度環境スタートアップ大賞の受賞者発表および「Green Startup Pitch」の開催について 環境省のホームページです。環境省の政策、報道発表、審議会、所管法令、環境白書、各種手続などの情報を掲載しています。

当日のプログラムは、表彰式、受賞者によるピッチ、選定委員による講評、基調講演、パネルディスカッションなどが予定されています。加えて、会場参加者向けにビジネスマッチングの時間が用意されており、受賞企業と大企業・自治体・投資家が個別に対話できる設計になっています。

共催・協賛として特定のVC・CVC名が一覧で示されているわけではありませんが、裏を返せば「一部のプレイヤーだけのクローズドな場」ではない印象を与えます。事業会社にとっては、自らテーマを持ち込んで相談できるオープンな出会いの機会として活用しやすいイベントです。

他の選択肢との比較・棲み分けと、企業・人材への影響

スタートアップが露出する場は、国の支援事業、自治体アクセラレータ、民間アクセラレータなどに分散しています。その中で環境スタートアップ大賞は、環境省が主催し、気候変動や資源循環、自然共生などの政策課題に直結するテーマが選ばれやすいのが特徴です。

たとえばDACやレアメタルリサイクルは、エネルギー供給というより「脱炭素のボトルネックを解消する技術」です。植物工場やスピーディ育種は、農業や食品メーカーのレジリエンス向上に直結するテーマです。こうした「縦割りをまたぐテーマ」がそろっている点が、他の技術カタログや補助金リストとの違いになります。

企業の事業開発の立場では、受賞企業と対話を始める前に、社内の期待値や要件を軽く整理しておくと動かしやすくなります。たとえばDACなら、回収したCO₂を貯留するのか、合成燃料や素材に利用するのか、どの程度の量とコストを許容できるのかといった前提をあらかじめ持っておくイメージです。

人材面では、技術だけを見てPoCを走らせると、途中で法務や調達、品質保証の壁にぶつかりやすくなります。調達部門や環境部門、LCA(ライフサイクル評価)の担当者を早めに巻き込み、評価指標と社内の説明ストーリーを共有することで、PoCから商用化ステップまでを一本の線にしやすくなります。

筆者の視点

事業開発の立場でこのニュースを見ると、まず目が行くのは「エネルギーそのもの」ではなく、その周辺を支える領域が多く選ばれている点です。エネルギーシステムの変化を下支えする食、資源循環、カーボンリムーバル、育種というテーマが並び、日本のクライメートテックの裾野が広がりつつあることを実感します。

次に気になるのは、「PoCで終わらせないロードマップ」を描けるかどうかです。たとえば資源リサイクルなら、パイロットラインでの評価から、顧客製品への採用、長期契約や共同投資の検討、規制対応まで、いくつかのステップをあらかじめ想定しておくと社内合意が取りやすくなります。DACや植物工場でも同じで、設備投資やエネルギー調達まで視野に入れた議論が重要になります。

周辺サービスとの組み合わせも、今後のポイントになりそうです。植物工場は再エネ電力や熱利用、CO₂供給事業とつながりますし、DACは再エネ開発やパイプライン網、クレジット生成のプラットフォームと相性が良いです。レアメタルリサイクルは、既存のリサイクル事業者や製造業の調達網と組み合わせることで、より現実的なビジネスモデルに近づきます。

今回の環境スタートアップ大賞とGreen Startup Pitchは、「受賞企業を眺める場」ではなく、自社の脱炭素テーマと受賞スタートアップの技術を結びつけ、PoCから事業化までの筋書きを持ち帰る場として活用すると、社内外の会話が一段と進みやすくなりそうです。

参考リンク集

  • 環境省 プレスリリース(2026年1月29日)「令和7年度環境スタートアップ大賞の受賞者発表および『Green Startup Pitch』の開催について」:リンク
  • 環境省 行事予定「令和7年度環境スタートアップ大賞の受賞者発表および『Green Startup Pitch』」:リンク
  • 矢野経済研究所「令和7年度 環境スタートアップ大賞/Green Startup Pitch」参加申込ページ:リンク
  • Oishii Farm Corporation:リンク
  • Planet Savers株式会社:リンク
  • 株式会社エマルションフローテクノロジーズ(J-Startup等の紹介ページ):リンク
  • 株式会社クォンタムフラワーズ&フーズ「スピーディ育種」紹介ページ:リンク

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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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