生活者の脱炭素は「やる気」だけでは続きにくく、日常行動に自然と入り込む仕掛けが求められています。日本マクドナルドとEarth hacksが公開した「脱炭素ミッション」は、店舗でできる行動を6種類のミッションに分け、ゲーム感覚で継続させる設計が見えてきました。
3行サマリー
- 2026年1月にEarth hacksと日本マクドナルドが、参加型スタンプラリー企画「ごくごくチャレンジ!」を公開しました。
- 店舗行動を6つのミッションに分け、写真投稿とクイズで参加できる「生活者の脱炭素ミッション」として設計されています。
- 実施期間は2026年1月19日〜2月27日で、スタンプ4つ達成で抽選特典が当たるインセンティブ構造になっています。
制度・枠組み・背景の概要
今回のデカボスタンプラリーは、生活者が日常行動を通じて脱炭素を「体験として理解する」ための参加型企画の枠組みです。店舗での選択や行動をミッションに落とし込み、達成体験を積み上げる構造にすることで、ふだんの外食シーンに環境配慮を組み込んでいます。
脱炭素化は二酸化炭素などの温室効果ガス排出を減らす取り組みで、影響は「二酸化炭素換算(CO2e)」という指標で示されます。Earth hacksは従来品との比較で排出削減率を示す「デカボスコア」を使い、環境価値の見える化を進めています。
背景には、「知る」だけのキャンペーンでは行動が続かないという課題があります。そこでマクドナルドのような大手外食が持つ生活者接点に、スタンプラリーやクイズという“ゲーム要素”を重ねることで、継続しやすい導線を作っているのが今回の特徴です。
企業・プロジェクト・サービスの特徴

本施策は、Earth hacksと日本マクドナルドが連携して実施するスタンプラリー「ごくごくチャレンジ!」です。実施主体はEarth hacks、連携企業は日本マクドナルドで、全国の対象店舗を舞台にした生活者参加型の企画になっています。実施期間は2026年1月19日から2月27日までとされています。
ミッションは全6種で、写真投稿型が3つ、クイズ型が3つという構成です。写真では「ストローレスリッドで飲む様子」「サラダやフルーリーなどの対象メニュー」が題材になり、クイズでは「環境配慮バッグ」「ごみ分別」「食べ残し削減」など、店舗での行動にひもづくテーマが扱われています。
特典設計も分かりやすく、スタンプ1つでキャンペーン限定オリジナル壁紙、スタンプ2つで抽選100名にフードタオル、スタンプ4つで抽選20名にバーガークッションが当たります。「必ずもらえる報酬」と「抽選報酬」を組み合わせて継続参加を促す構造で、もう一度チャレンジしたくなる余地を残しています。
なお、現時点では参加者数や達成数といった定量データは公表されていません。そのため、この企画はまず「生活者がどう反応するか」を見る第一弾としての性格が強いと言えそうです。
政策・地域・市場文脈や導入スキーム
外食・小売の強みは、生活者が「ほぼ毎週通う」リアルな接点を持っていることです。日本では環境省の「デコ活」のように、官民連携で生活者行動を変えていく流れが続いており、マクドナルドのようなチェーンは、その枠組みと接続しやすいプレーヤーです。
今回のスタンプラリーは、ドリンクの「ストローレスリッド」への切り替えや紙容器の活用など、すでに進んでいる環境配慮を“体験”として伝える位置づけになっています。単に情報を告知するのではなく、店舗での選択肢として目の前に置き、行動と紐づける構造です。
導入スキームの面では、「店舗でできる行動」を先に定義し、その上にデジタルのスタンプラリーを重ねる順番がポイントです。レシートや会員IDとの連携をいきなり求めず、QRコードやキャンペーンサイトから入れるようにすることで、店舗オペレーションへの負荷を抑えつつ、参加のハードルを下げています。
他の選択肢との比較・棲み分けと、企業・人材への影響
行動変容系のサービスには、日常の脱炭素アクションをポイント化するアプリや、移動データと連動するカーボンポイントサービスなど、さまざまな選択肢があります。これらは「電車移動」「節電」「エコ商品購入」など行動の幅が広く、生活全体を対象にしているケースが多いです。
一方、マクドナルドのミッション型施策は、ブランドの店舗体験に密着した設計になっています。対象行動は「店舗でのメニュー選択や利用行動」に絞られますが、その分「今日ここでできる」アクションとして伝えやすく、外食の場での体験価値と環境価値を同時に高める狙いがあります。
企業側への影響という意味では、サステナビリティ担当だけでなく、アプリやCRM、販促の担当者が主役になりやすい領域です。行動ログの設計やミッションのKPI設計には、マーケティングと環境情報の両方を理解するスキルが求められ、「サステナ×デジタルマーケ」をつなぐ人材の重要性が高まりそうです。
また、このような仕組みは他の外食チェーンや小売、交通事業者、自治体の住民向け施策にも横展開しやすい構造です。ゲーム要素・ミッション設計・CO2見える化ロジックをパッケージ化できれば、「生活者の脱炭素体験プラットフォーム」としてのビジネス機会も見えてきます。
筆者の視点
事業開発の立場で見ると、まず注目したいのは「行動変容」を成果として扱うKPI設計です。今回のようなミッション型の施策では、参加率だけでなく、初回達成率、複数ミッション達成率、期間中のリピート参加率などを追うことで、どこで離脱しやすいかが見えやすくなります。
次に気になるのは、CO2eの見せ方です。一人あたりの削減量は小さな数字になりがちですが、「従来品との比較」「デカボスコアでの削減率」「年間換算した場合のインパクト」など、生活者がイメージしやすい単位に変換してあげることが重要です。算定範囲やデータベースの出典も整理しておくと、専門家との対話もスムーズになります。
さらに、このミッション設計そのものが「サービス価値」になりうる点も見逃せません。生活者の行動をミッションに分解し、デジタルで判定し、特典とつなげる一連の仕組みは、外食だけでなく、住宅・家電・モビリティ・イベントなど、さまざまな分野に応用できます。
企業として今決めておきたいのは、販促KPIと環境KPIをセットで持つことです。参加率やクーポン利用率に加え、環境配慮メニューの選択率や説明ページ閲覧率も追えるようにしておくと、次のキャンペーン設計に生かしやすくなります。生活者の脱炭素を「ゲーム化」しつつ、どこまでビジネスと環境の両立を設計できるかが、これからの差別化ポイントになっていきそうです。
参考リンク集
- Earth hacks・PR TIMES(2026年1月26日)マクドナルドと連携した参加型スタンプラリー施策の一次情報:Earth hacks、マクドナルドでできる生活者参加型の脱炭素アクションを開始
- Earth hacks公式キャンペーンページ ミッション内容や参加方法の詳細:ごくごくチャレンジ!プロジェクトページ
- Earth hacks CO2削減率の見える化ロジックと算定ルールの整理:デカボスコアの算定方法
- 日本マクドナルド(2025年10月27日)ストローレスリッド導入に関する環境負荷低減の説明:コールドドリンクのフタをストローなしで飲めるフタへ変更
- ELEMINIST(2026年1月31日)施策の背景や狙いを整理した二次報道:Earth hacks、日本マクドナルドと連携し脱炭素体験型スタンプラリー開始
- interviews(2026年1月下旬)生活者参加型の文脈から本施策を紹介:Earth hacks、マクドナルドで生活者参加型の脱炭素アクションを開始

