第3世代DACのGreenlyte|LiquidSolar™でDAC×電解一体のe-メタン5t/年プラント稼働

Greenlyte Carbon Technologiesが、ドイツ・デュイスブルクで第3世代DAC(DAC3.0)の技術を用いたLiquidSolar™ SNGプラントを稼働させました。DACと電解を一体化し、年間5tのe-メタンと40tのCO₂除去を実証する「分子インフラ」の実物が登場したことがポイントです。

目次

3行サマリー

  • Greenlyteは液体吸収と電解再生を組み合わせた第3世代DAC(DAC3.0)を開発し、CO₂除去とグリーン水素生成を同時に行います。
  • デュイスブルクのLiquidSolar™ SNGプラントは、年間5tのe-メタン生産と40tCO₂除去を目標とし、完全電化されたモジュール型システムを実証します。
  • 「DAC×電解×合成燃料」を先行させる事例として、日本の都市ガス会社や燃料需要家にe-メタン・e-メタノール・e-SAF設計のヒントを与えます。

1. Greenlyteは第3世代DAC(DAC3.0)の代表例

この章では、DAC1.0〜3.0の位置づけと、その中でのGreenlyteの立ち位置を整理します。

1-1. DAC1.0〜3.0の簡単なおさらい

NetZero Insights Japanでは、Extantia Capitalの整理を参考に、DAC技術を「DAC1.0〜3.0」の3世代に分類しています。DAC1.0はClimeworksやCarbon Engineeringに代表される高温熱再生型で、液体溶媒や固体吸着材を高温・真空で再生する方式です。

DAC2.0は、電位・pH・膜・湿度スイングなどの非熱ドライバーを使い、低温かつ電化を進めた世代です。Verdoxのエレクトロスイング吸着やRepAirの膜型DAC、Avnosの湿度スイングなどが該当し、再エネ追従性とモジュール量産性の高さが特徴です。

DAC3.0は、液体吸収と電解、低温熱と電位差など複数方式を統合し、補機の簡素化と完全電化を同時に狙う「ハイブリッド最適化型」の世代と整理されます。Extantiaは、このDAC3.0の代表としてGreenlyteやPhlair、Parallel Carbon、Yamaなどを挙げています。

1-2. なぜGreenlyteはDAC3.0に分類されるのか

Greenlyte Carbon Technologiesは、液体溶媒でのCO₂吸収とアルカリ水電解を組み合わせたDACプロセスを採用しています。CO₂はまず液体中に吸収され炭酸塩として固定され、その後アルカリ電解でpHを切り替えながらCO₂を放出し、同時に水素(H₂)を生成します。

Renewable Carbon Initiativeなどの紹介では、Greenlyteのプロセスは「液体での吸収 → 沈殿 → アルカリ電解による脱離」の3段階で構成され、CO₂ 1tあたり約600kWhの電力で高純度CO₂を得ながらH₂を生成するとされています。熱ではなく電力を主なエネルギー入力にする完全電化型であり、DACと水電解を物理的にも制御的にも統合している点がDAC3.0らしい特徴です。

Greenlyteは、液体ソルベントDACとアルカリ電解を一体モジュールにまとめたDAC3.0企業として、プロセス統合と電化の両方を進めていると位置づけられます。

1-3. DAC概説・スタートアップ比較への読み替えガイド

DACの基礎から整理したい読者には、NetZero Insights Japanの技術概説記事「Direct Air Capture(DAC)とは|仕組み・方式・世代比較(1.0/2.0/3.0)・コストと事業化条件を徹底解説」が役立ちます。この概説では、各世代の方式・エネルギー要件・事業化条件を、数値を交えて整理しています。

Greenlyteを他のDACスタートアップと比較したい場合は、「DACスタートアップ紹介:主要なスタートアップの方式の違い、技術的特徴を一挙に紹介&解説!」も参考になります。同記事では、Greenlyte・Phlair・Parallel CarbonをDAC3.0グループとして整理し、DAC1.0・DAC2.0企業との違いを俯瞰しています。

要点: Greenlyteは、液体吸収×電解再生を組み合わせた第3世代DAC(DAC3.0)の代表格であり、CO₂除去とグリーン水素生成を同時に実現するプロセス統合に特徴があります。

2. Greenlyte LiquidSolar™プラントの全体像

デュイスブルクのLiquidSolar™ SNGプラントの規模と目的を整理します。

Greenlyteは2025年11月、ドイツ・デュイスブルクで世界初の「LiquidSolar™ e-fuel plant」を稼働開始しました。プラントは水素・燃料電池技術センター(ZBT)の敷地内にあり、「DACからのCO₂ × 電解由来H₂ × SNG合成」を1カ所にまとめた実証プラントです。

このLiquidSolar™ SNGプラントは、年間5tの合成天然ガス(e-メタン)生産と、年間40tCO₂の回収・除去を目標としています。規模は研究開発寄りですが、「CO₂除去とe-fuel製造を同時に行う統合プラント」という点に特徴があります。

GreenlyteはZBTやデュイスブルク=エッセン大学、RWTHアーヘン工科大学と協業し、エンジニアリング開始から立ち上げまで12カ月未満、建設工事は3カ月未満で完了させたと説明しています。モジュール型電解システムを前提にした設計であり、「小規模でも早く建てて回す」ことを重視しています。

「DAC+電解+合成燃料」を1つの完全電化ユニットとしてまとめた実プラントが立ち上がったという事実が、この案件の最大のポイントです。

要点: デュイスブルクのLiquidSolar™プラントは、年間5tのe-メタンと40tCO₂除去を目指す小型設備ですが、DAC3.0コンセプトを検証する統合ファーストプラントという位置づけです。

3. LiquidSolar™が目指す「分子インフラ」とは何か

この章では、LiquidSolar™がe-fuelバリューチェーンのどの部分を担おうとしているかを整理します。

GreenlyteはLiquidSolar™を「グリーン分子プラットフォーム」と位置づけ、CO₂と水と電力から多様なe-fuelを合成できるインフラとして設計しています。今回のデュイスブルク案件はSNG(e-メタン)ですが、e-メタノールやe-SAF(持続可能航空燃料)、eディーゼルにも拡張可能と説明しています。

LiquidSolar™の役割を整理すると、次のようになります。

  • DACで大気中CO₂を回収し、高純度CO₂として確保する。
  • アルカリ水電解でグリーン水素を生成し、同時にCO₂を放出・濃縮する。
  • CO₂とH₂から合成ガスをつくり、下流のメタネーションやメタノール合成ユニットに供給する。

この構造により、下流の合成ユニット側は「高純度CO₂とH₂がセットで届く前提」で設計できます。e-メタン向けメタネーション反応器、e-メタノール向け合成反応器、FT合成など、用途に応じてユニットを切り替えやすい設計です。

Greenlyteは、2027年までにドイツ・Marlでe-メタノール向けのスケールアップ設備を計画し、2030年までに国際市場への展開を構想しています。LiquidSolar™を「CO₂とH₂の共通インフラ」としてシリーズ展開し、用途側は地域や顧客ごとに設計するイメージです。

LiquidSolar™は、電力系統だけでなく「分子サプライチェーン側」にも共通プラットフォームを築く構想だと整理できます。

要点: LiquidSolar™は、DAC由来CO₂とグリーンH₂から合成ガスをつくり、用途別の合成ユニットと組み合わせる「分子インフラ」を目指すプラットフォーム構想です。

4. 技術の肝:液体ソルベントDAC×アルカリ電解の統合

この章では、Greenlyteの技術構成とエネルギー面の特徴を整理します。

4-1. 液体吸収→沈殿→アルカリ電解の3ステップ

Renewable Carbon Initiativeなどの情報によると、Greenlyteのプロセスは大きく次の3ステップで構成されます。

  • ステップ1:液体溶媒で大気中のCO₂を吸収し、炭酸塩として溶液中に取り込む。
  • ステップ2:条件を調整して炭酸塩を沈殿させ、CO₂を濃縮した形に変える。
  • ステップ3:アルカリ水電解でpHを切り替えながらCO₂を放出し、同時にH₂を生成する。

これは、DAC1.0で一般的な「KOH溶液+高温カルシネーション」の液体吸収ループと、従来の水電解技術を組み合わせて電化した構造とも言えます。高温熱源ではなく電力を主なエネルギーインプットにする点が、完全電化型の特徴です。

4-2. エネルギー消費とH₂副産物の意味

公開情報では、GreenlyteはCO₂ 1tあたり約600kWhの電力で高純度CO₂を生成しつつ水素を副産物として得ると説明しています。この値は、DACと水電解を別々に運転する場合と比べて、電力利用効率と設備利用率の両面で優位に働く可能性があります。

CO₂分離とH₂生成を同じスタックで行う発想は、「CO₂コスト」と「H₂コスト」の切り分け方を再設計するものと見ることができます。将来、e-fuelや化学原料のバリューチェーン全体で、CO₂除去コストとH₂コストをどう配分するかが論点になりそうです。

要点: Greenlyteの技術の肝は、液体溶媒DACとアルカリ電解を統合し、電力600kWh/tCO₂程度でCO₂とH₂を同時に生み出すDAC3.0型のプロセス統合にあります。

5. スケールとスピード:12カ月で建設された完全電化プラント

この章では、LiquidSolar™プラントのスケール戦略と、短工期が持つ意味を整理します。

Greenlyteは、デュイスブルクのプラントについて「エンジニアリング〜立ち上げまで12カ月未満、建設期間は約3カ月」と説明しています。モジュール化された電気化学機器と中小規模の合成ユニットを組み合わせた結果、短工期を実現したと考えられます。

また同社は、パイロット段階で累計1.3万時間以上の運転実績を持ち、「技術は市場投入準備が整い、モジュール化・量産によるコスト低減フェーズに入った」とアピールしています。これは、学習曲線を前提としたDAC3.0企業全般の戦略とも整合します。

ExtantiaはDAC3.0企業について、ギガトンスケールまでの拡大により100ドル/tCO₂前後のコストレンジに到達し得ると試算しています。モジュール電解システムは、この学習曲線に乗せやすい設計です。

短工期の小規模実証から段階的に拡大し、量産効果でコストを下げるというアプローチは、DAC3.0企業の基本戦略のひとつと考えられます。Greenlyteは、その典型例です。

要点: デュイスブルク案件は小型ですが、モジュール電解と標準化設計により「12カ月未満の立ち上げ」と「量産前提の学習曲線」を狙う、DAC3.0らしいスケール戦略を体現しています。

6. 欧州での拡張計画とオフテイクの姿

この章では、Greenlyteの拡張計画と需要家との連携を概観します。

Greenlyteはデュイスブルク案件の次のステップとして、2027年までにドイツ・Marlでe-メタノールプラントを計画しています。この案件では、より大きなスケールでLiquidSolar™を展開し、化学原料や燃料用途への本格供給を目指しています。

同社はLufthansaグループのEurowingsやMB Energyとの長期オフテイク契約を確保しており、航空燃料やe-fuel需要家と早期に連携を進めています。航空会社にとっては、CO₂除去と燃料供給を一体で扱えるスキームが、スコープ1排出とCDR調達の両面で設計しやすい選択肢になります。

さらにGreenlyteは、カナダのCDR開発企業Deep Skyとの連携により、北米でのDAC+合成燃料・CDRプロジェクトの検討も進めています。欧州と北米という二つの主要市場で、DAC3.0技術を軸とした事業展開の足場を築こうとしている構図です。

Greenlyteは技術実証だけでなく、航空会社やエネルギー企業とのオフテイク連携を通じて「燃料」と「CDR」の両市場に同時にアクセスしようとしています

要点: Greenlyteは、デュイスブルク→Marl→北米と段階的に拡張しつつ、航空会社などのオフテイカーと連携することで、e-fuelとCDRの両市場を狙う事業戦略を取っています。

7. 日本企業への示唆:メタン・メタノール・SAFの三つ巴

この章では、日本の電力・ガス・航空・化学企業にとっての示唆を整理します。

日本の都市ガス会社や発電事業者にとって、e-メタンは既存のガスインフラを活用できる選択肢です。GreenlyteのLiquidSolar™は、e-メタンを皮切りにe-メタノールやe-SAFにも拡張可能な構成であり、日本側の用途選択と相性が良いアーキテクチャと言えます。

日本の製造業や化学産業にとっては、e-メタノールやCO₂由来原料としての活用の方が馴染みやすい場合もあります。その場合、e-メタンではなくメタノールや合成ナフサをターゲットにしたLiquidSolar™型システムの検討も視野に入ります。

航空会社や空港事業者の観点では、e-SAFとCDRを組み合わせた「燃料+耐久CDRパッケージ」の設計が重要になります。GreenlyteのようなDAC3.0企業と連携すれば、電源・立地・インフラを日本の条件に合わせて設計しやすくなります。

日本企業は、e-メタン・e-メタノール・e-SAFの三つ巴の中で、自社インフラと強みに合うルートを選びつつ、DAC3.0技術との組み合わせを検討する余地があります

要点: Greenlyte型の「DAC3.0×e-fuelプラットフォーム」は、日本でもe-メタン・e-メタノール・e-SAFのいずれにも応用可能であり、各社が自社インフラとの適合を前提に検討する価値があります。

8. 筆者の視点

GreenlyteおよびDAC3.0企業を見る際に押さえたい論点を整理します。

  • エネルギー効率・運転データ
    CO₂ 1tあたり600kWhという指標が、実設備でどこまで再現・改善されるか。
  • スタック寿命とメンテナンス
    電解セルや吸収液の寿命、交換サイクル、OPEXへの影響。
  • オフテイク条件
    e-fuel価格、CDRクレジット価格、長期契約の期間や価格調整メカニズム。
  • スケール設計
    数百トン/年から数万トン/年へのスケールアップ時に、モジュール構成とBOP(付帯設備)の最適化がどう変化するか。
  • 政策との接続
    EUや北米のCDR・e-fuel制度、日本のGX-ETSや今後のCDR受け皿制度との整合性。

これらは、前述のDAC概説記事やDACスタートアップ紹介記事で整理した「DAC事業成立の4条件(立地・電源/熱源・オフテイクと金融・MRVと価格帯)」とも共通する論点です。

第3世代DACの成否は、1tあたりコストだけでなく、「どの市場で・どの規模で・どの契約形態でスケールさせるか」の組み合わせで決まります。Greenlyteは、その一つの実例として今後の動向が注目されます。

参考リンク集

GreenlyteとDAC3.0、LiquidSolar™プラットフォームを深掘りする際に役立つ一次情報・解説記事を整理しました。

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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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