長瀬産業、Reivalueへ出資—分散エネルギー等のソリューション強化

長瀬産業は2025年11月4日、エネルギーソリューションを手がけるReivalueへ出資し、資本業務提携を締結しました。商社の調達力と需要家側の運用力を束ね、PPAやDR、EMSまで一体で提供する体制を整えます。

目次

3行サマリー

  • 長瀬産業はReivalueへ出資し、エネルギーソリューション事業の拡張を表明(2025/11/04)。
  • Reivalueは小売取次・環境価値販売・PPA/DR運用を強みに、提案の柔軟性を高める方針。
  • 長瀬産業は姫路15MW/48MWh蓄電所にも参画し、商社×電力アセットの両輪を固める。

ねらい:需要家側ソリューションの「面」を増やす

長瀬産業は、工場やオフィスなど電気を使う側(需要家)の支援を強めます。提携先のReivalueは、小売電気事業者と需要家の間に入り料金メニューを設計する「取次」や、再生可能エネルギー由来を示す非化石証書(トラッキング付きを含む)の手当を担います。両社は、契約の見直しと現場の運用改善を同時に行い、電気代の低減とCO₂削減の“両立”を狙います。

ポイントは「組み合わせ」です。料金契約の最適化だけでは効果が頭打ちになります。一方で、設備更新だけでも投資が重くなりがちです。長瀬産業とReivalueは、契約(料金・環境価値)×運用(需要家の使い方)×設備(蓄熱・蓄電・制御)を束ね、会社ごとの制約に合わせた“現実解”を作ります。

Reivalueの実力:PPA・DR・蓄熱/蓄電の運用設計まで

Reivalueは再エネの調達使い方の最適化を一体で設計します。まずPPA(電力購入契約)は発電事業者と長期で電気を売買する仕組みで、敷地外でも導入できるオフサイトPPAなら屋根や用地が限られる企業でも再エネを確保できます。次にDR(デマンドレスポンス)は系統の需給に合わせて需要を調整する制度で、余剰時に需要を増やす「上げDR」と、逼迫時に抑える「下げDR」を使い分けます。氷蓄熱で余剰時に氷を作り、ピーク時に冷房へ放出する運用が典型です。

さらに蓄電池とEMS(エネルギーマネジメントシステム)で、安い時間帯に充電・高い時間帯に放電し、データに基づいて空調やモーターの運転を自動最適化します。

  • オフサイトPPA: 敷地外の再エネと長期契約。環境価値の手当と合わせてスコープ2を削減。
  • 上げ/下げDR: 需給に応じて増減。標準手順化で現場負担を最小化。
  • 蓄熱/蓄電+EMS: 昼夜の負荷移行とピーク対策を自動化し、効果を見える化。

姫路の蓄電所が示す“運用できる商社”への転換

長瀬産業は兵庫県姫路市で、系統用蓄電池(出力15MW・容量48MWh)の運転を2025年10月10日に開始しました。数値の意味をかみ砕くと、最大15MWで約3.2時間(48MWh÷15MW)放電できる規模です。昼間に余った電力で充電し、需要が高い時間帯に放電して電力の需給をならします。

この運用で得る収益の柱は、①非常時に備え供給力を確保する「容量市場」、②周波数維持のため短時間で増減できる電源を評価する「需給調整市場」です。長瀬産業はエンジニアリングやO&M(保守運用)にも関与し、“機器を売る”から“自ら運用して価値を生む”へと重心を移しています。上流(蓄電所の実運用知見)と下流(工場・オフィスの省エネ/再エネ導入支援)の両輪を持つことで、顧客への提案に実効性が加わります。

なぜ今、契約×運用×機器を束ねるのか

電気料金の高止まりや再エネ出力抑制の増加で、契約見直しだけ・設備導入だけ・運用改善だけでは効果が頭打ちになりがちです。商社は機器・証書・保守・金融の“目利き”を持ち、Reivalueのような電力小売・需要家運用プレイヤーと組むことで、ESCO/PPA/DR/EMSを一体で設計できます。

要は、契約(料金・環境価値)×運用(使い方)×設備(蓄電・蓄熱・制御)をそろえることで、電気代とCO₂の同時低減を現実的なコストで実現しやすくなります。

私は、勝敗を分けるのは案件の組み立て(どのメニューをどう組み合わせるか)と運用データの蓄積(請求額・稼働率・削減量)だと考えます。実績が信用力となり、次の案件ほど資金・部材の調達条件が良くなり、導入スピードも上がるためです。

筆者の視点

私は、今回の出資で長瀬産業が契約×運用×アセットを実務レベルで一体運用する段階に入ったと考えます。理由は、PPAやDRといった“契約・オペレーション”に、姫路の蓄電所で得る実運用の知見が重なり、提案の検証性(数字で示せること)が高まるからです。次の勝負所は、複数拠点・複数手段(PPA/DR/蓄熱・蓄電/EMS)を束ねるポートフォリオ最適化の早期確立だと思います。

出典(一次情報・公式)

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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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