電気代の上昇と停電リスクの高まりで、住宅向けの太陽光+蓄電「サブスク(PPA/リース)」が再加速しています。J:COMのように通信事業の商流・ノウハウを活かして調達・設置・保守を一体運用すると、顧客獲得コスト(CAC)と解約率を同時に抑えられるのが勝ち筋です。
3行サマリー
- 家庭向け太陽光+蓄電のサブスクは、初期費用0円×長期契約が基本設計。J:COMは15年契約・満了時の所有権移転・中途解約金を事前に公開し、LTV(契約期間の総利益)を守る運用にしている。
- 国内の主要プレーヤー(例:京セラ、Looop)は10〜15年契約と5.5〜16.5kWhの容量を用意。容量が大きいほど「停電時に動かせる家電の時間」が伸び、安心度と月額のバランスを比較しやすくなる。
- ZEHやDR蓄電など国の補助に、自治体の上乗せを重ねると自己負担が下がる。補助の“重ね掛け”と申請代行まで用意する事業者は、比較サイト経由でも成約率が上がりやすい。
「J:COM方式」で読む—量産調達×標準施工×保守一体の設計
J:COMは「初期費用0円×15年契約」「満了後の無償譲渡」「途中解約金」などの条件を事前公開し、(一部エリアでは)既築の安全対策費(月額加算)も明示しています。通信会社は大量調達で機器単価を下げ、標準化した施工・点検で工事コストを均すのが得意です。既存のコールセンターや訪問サポートの運用資産も流用しやすい設計です。
- 調達(量で下げる):インバータ・パネル・蓄電池の型番を2〜3種に絞り、四半期ロットで共同調達。単価と在庫回転を同時に改善。
- 施工(型を作る):屋根材別の標準工法と治具で工期と品質のばらつきを抑制。既築は足場・配線経路の追加作業を前提に見積もり。
- 保守(運用の仕組み化):遠隔監視→一次切り分け→現地対応の三段運用を整備。問い合わせ窓口と請求窓口を分け、滞留を減らす。
契約年数と容量レンジ—「15年×10〜16kWh」で停電耐性を訴求
他の国内主要プレイヤーである、京セラ「ハウスマイルe」は10年/15年の契約と5.5/11/16.5kWhの階段設計、Looopは15年リースを軸に自家消費と停電対応を訴求します。ここでのポイントは、kWh=蓄電池の“ためられる電気の量”であり、数字が大きいほど停電中に使える時間が延びるという直感的な分かりやすさです。
- 容量の考え方(目安):稼働時間 ≒ 容量(kWh) ÷ 使用電力(kW) × 安全係数0.8。
例:10kWh ÷ 0.5kW × 0.8 ≒ 16時間(冷蔵庫+照明+通信など“必要最低限”の負荷を想定)。 - 標準家庭プラン(5〜8kWh):半日〜1日程度の非常用をカバー。夜間の停電で冷蔵庫・照明・スマホなどを維持したい世帯に向きます。
- 安心重視プラン(10〜16kWh):1〜2日相当の延命を想定。省エネ運転なら日中の太陽光で追い充電し、生活の“止めたくない回路”を長く支えられます。
- 契約年数の使い分け:10年は買い替え柔軟性と早期譲渡を重視、15年は月額低減と長期稼働の安心を重視。
筆者の視点
私は、この動きを「機器販売」から金融・運用サービスへの本格シフトだと受け止めます。長期契約(Power Purchase Agreement:PPA等)を前提に、仕様を絞り、保守の手順を標準化できる事業者は、調達単価と資本コストを下げやすい。言い換えると、分散した家庭設備が“まとめて評価される資産”に近づく、ということです。
一方で、仮想発電所(Virtual Power Plant:VPP)の“束ね役”は、制度・実務上はエネルギー事業者(アグリゲーター)が担うのが自然だと考えます。J:COMが直ちに束ね役になるという話ではなく、前段(獲得・設計・遠隔監視・保守)の標準化を進め、連携しやすい母集団を形成する点に価値がある。ここが整えば、需要応答(Demand Response:DR)やVPPへの接続コストが下がり、上位レイヤーの収益機会が広がります。

