蓄電・地熱・レアアースに資金が集まる週:terralayr $223m、Sage Geosystems $97m、Cyclic Materials $75m|クライメートテック資金調達 #022

蓄電・地熱・レアアースに投資が集まる週を表すアイキャッチ画像

今週は、〔スタートアップ資金調達〕に$1554.4m、〔M&A / Exit〕に$144.3m、〔プロジェクト・デット〕に$64.7mが集まりました(合計$1763.4m、非開示は集計外)。

目次

3行サマリー

スタートアップ資金調達動向:
今週のスタートアップ/コーポレートは、スイス発の蓄電池開発事業者terralayrが€192m(約$211.2m)のSeries Bを調達し、osapiensやSage Geosystemsなど欧州・北米の成長ラウンドが目立ちました。全体では、エクイティとファンド組成を合わせて$1554.4mが集まり、その多くが蓄電池、地熱、素材リサイクル、サステナブル包装に向かっています。

プロジェクト資金調達動向:
プロジェクト・デットは、ポルトガルの再エネ開発Greenvoltがハンガリーでの太陽光・蓄電ポートフォリオ向けに€58.9m(約$64.7m)のPFデットを調達し、ECO STORがEVバッテリーのセカンドライフ蓄電案件向けにNord/LBから非開示のPFデットを得ました。PF系の開示額は$64.7mと小ぶりですが、いずれも蓄電池アセットをバランスシート外で活用する動きを示しています。

政策動向:
政策面では、米エネルギー省(Department of Energy、DOE)が約$830億規模のローンプログラムの見直しとエネルギー効率・再エネ関連予算の増額を公表しました。連邦エネルギー規制委員会(Federal Energy Regulatory Commission、FERC)も、データセンターなど大口需要家の系統接続審査を迅速化する新プロセスを承認しました。

今週の資金調達動向

サマリー(USD概算)

グループ件数開示額合計主な資金種別代表案件
スタートアップ/コーポレート(エクイティ/研究助成等)21$1554.4mエクイティ(Seed〜Series C)/VC・インフラファンド組成terralayr Series B(€192m≒$211.2m)、Gore Street Capital GS EU Fund SCSp(ターゲット約$550m)
M&A / Exit3$144.3m企業買収(100%株式取得)SPX TechnologiesによるThermolec買収(約$144.3m)
プロジェクト系(PF/デット/資産売買)2$64.7mPFデット(プロジェクトファイナンス)Greenvoltの再エネPFデット€58.9m(約$64.7m)

— 注:合計は概算・非開示を除く。為替目安:£→$1.33、A$→$0.68、€→$1.10、C$→$0.74、¥→$0.0067(端数は$0.1m未満切り捨て)。通貨併記は一次発表に準拠。

A. スタートアップ / コーポレート

企業/国金額/ステージ概要主な投資家
terralayr/CH$211.2m/Series B欧州で系統用蓄電池プロジェクトを開発・運用Eurazeo, Earlybird, Norrsken Launcher, Picus Capital

osapiens/DE
$100m/Series Cサプライチェーンのコンプライアンス・ESG管理SaaSDecarbonization Partners, Goldman Sachs Alternatives, Armira Growth
Sage Geosystems/US$97m/Series B地熱発電と地熱由来の蓄電を開発Chesapeake Energy, Blue Bear Capital, Others
Cyclic Materials/CA$75m/Series C使用済み磁石からレアアースを回収Energy Impact Partners, Volvo Cars Tech Fund, Planetary Technologies
Orbem/DE$61.0m/Series BAIとMRIで卵や農産物を非破壊検査83North, General Catalyst, Possible Ventures, La Famiglia
Jetson Home/CA$50m/Series A家庭の電化改修と資金調達をワンストップ提供Eclipse, 8VC, Activate Capital, Active Impact Investments
SunLib/FR$29m/Seed個人向け屋根太陽光のサブスクリプションÉpopée Gestion
Cloover/SE$22m/Series A分散電源の販売・設置向けファイナンスOSMMC Ventures, QED Investors, Bosch Ventures, Earthshot Ventures
Karman Industries/US$20m/Series A工業プロセスの電化・脱炭素ソリューションRiot Ventures, Others
Cambio/US$18m/Series A不動産ポートフォリオの脱炭素計画・管理ソフトMaverick Ventures, Adverb Ventures, Peterson Ventures, Y Combinator
one.five/DE$16m/Series Aブランド向けに低炭素パッケージ素材を設計・供給Green Generation Fund, KIMPA, Planet A Ventures, Revent
Transvolt Mobility/IN$15m/Series Bインドで電動商用車を製造・リースFinnfund, Others
Whizzo/IN$15m/Series Aソフトとハードを組み合わせた物流最適化プラットフォームFundamentum, BEENEXT, LB Investment, Lightspeed
Aerem/IN$15m/Series A中小企業向け太陽光発電の設計・資金調達プラットフォームSMBC Asia Rising Fund, Avaana Capital, Blume Ventures, BII
ABZ Innovation/HU$8.2m/Seed農業用ドローンと散布システムを設計・製造Vsquared Ventures, Assembly Ventures, Dayone Capital
Octarine Bio/DK$6m/Series A微生物を使ったサステナブル染料・成分を開発Edaphon, Oskare Capital, The Footprint Firm, Unconventional Ventures
Grove/SA$5m/Seed建設・不動産向けの気候リスク・省エネプラットフォームOutlier Ventures
Enerzolve/IN$5m/Seed商工業施設向け電力使用の最適化ソフトと制御システムJungle Ventures, Kae Capital, Ramakant Sharma
Dripl/BE$5m/Seedオフィス向けリフィル型ドリンクステーションAbacus Investments, Faraday Venture Partners, Spadel
Gore Street Capital/UK$550m/Fund target蓄電池・再エネアセットに投資するインフラファンドEuropean Investment Fund, ISIF, Other LPs
2150/UK$231m/Fund II都市・産業の脱炭素分野に特化したVCファンド複数の機関投資家・ファミリーオフィス

terralayr — 特集

欧州でグリッド規模蓄電池プロジェクトを展開するterralayrのイメージビジュアル
terralayrが展開するグリッド規模バッテリー蓄電のイメージ。
再エネと組み合わせた大規模BESSポートフォリオで柔軟性を提供する姿を象徴している
(出典:Picus Capital)
会社の概要

terralayrはスイス・ツークに本社を置き、英国や欧州各国で系統用蓄電池プロジェクトを開発・保有・運用するスタートアップです。今回のSeries Bで調達した€192m(約$211.2m)は、既存パイプラインの建設と新規案件の取得を加速するための成長資金です。欧州の卸電力市場や調整力市場で、再エネの変動をならすインフラプレーヤーとしての役割が期待されています。

何ができるのか

terralayrは発電事業者や電力小売、データセンター事業者などに対し、大規模蓄電池(Battery Energy Storage System、BESS)を活用した柔軟な電力供給を提供します。自社で開発した蓄電所を通じて、容量市場や調整力市場、スポット市場の複数の収益源を束ね、長期のオフテイク契約や収益シェア契約を組成できる点が特徴です。需要家側から見ると、系統容量を確保しつつ再エネ電力の利用比率を高めるための「ワンストップ窓口」になっています。

技術のしくみ

BESSは一般にリチウムイオン電池とパワーコンディショナ、制御ソフトから構成されますが、terralayrは案件ごとに最適な構成を設計し、複数市場への自動入札アルゴリズムで収益を最大化します。需給予測モデルとリアルタイムの価格シグナルを組み合わせることで、周波数調整やピークカットなどのサービスを同じアセットから同時に提供できるように設計している点がポイントです。技術そのものは汎用的でも、プロジェクト開発力と市場運用ノウハウの積み上げが競争力になっています。

料金・導入の進め方

蓄電所は資本集約的な設備のため、terralayrは自社バランスシートやプロジェクトファイナンスを用いて設備投資を行い、オフテイク契約で回収するモデルをとります。需要家側は容量料金やサービス料金を長期契約で支払う一方、スポット取引で得られる追加収益の一部をシェアする形が一般的です。系統運用者や大口需要家は、プロジェクト単位での検討から入り、系統制約や土地制約を踏まえて最適なロケーションを絞り込んでいく進め方になります。

他社との違い
  • 欧州各国で10GWh級の蓄電池パイプラインを構築しており、開発済み案件の厚みがある点。
  • 長期のオフテイク契約と短期市場取引の両方を前提に収益設計しており、金融機関からのPF調達と相性が良い点。
  • データセンターや製造業などセクター別のソリューション設計を打ち出し、単なる卸市場トレーダーにとどまらない点。

B. M&A / Exit

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
RESMAN Energy/NO非開示/買収油井の流量や水飽和度を無線でモニタリングするサービス。SLBが買収。
Kylmontage/SE非開示/買収冷凍機器の設置・保守サービス。Tedge Energyが買収。
Thermolec/CA$144.3m/買収電気式暖房機・HVAC機器メーカー。SPX Technologiesが買収。

C. プロジェクト系

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
Greenvolt/PT$64.7m/PFデットハンガリーの太陽光・蓄電ポートフォリオ向けにUniCredit Bank HungaryがPFデットを提供。
ECO STOR/DE非開示/PFデットEVバッテリーのセカンドライフ蓄電システム向けにNord/LBがPFデットを組成。

参考文献・出典リンク一覧

一次情報・企業プレス・公的資料

  • Eurazeo(2026年1月)terralayrへの€192m Series B投資を発表するプレスリリース。リンク
  • osapiens(2026年1月)US$100mのSeries C調達を公表したニュースリリース。リンク
  • Sage Geosystems(2026年1月)$97m Series B調達を伝えるプレスリリース。リンク
  • Cyclic Materials(2026年1月)$75m Series C調達とレアアースリサイクル事業の拡大計画を公表。リンク
  • SPX Technologies(2026年1月)Thermolec買収(対価C$195m)を公表したニュースリリース。リンク
  • Greenvolt(2026年1月)UniCredit Bank Hungaryからの€58.9m PFデット調達について発表。リンク
  • Gore Street Capital(2026年1月)GS EU Fund SCSpのターゲット€500mとEIF等からのコミットメントを公表。リンク
  • 2150(2026年1月)気候テック特化ファンド「2150 Green Transition Fund II」の最終クローズを発表。リンク
  • 米エネルギー省(DOE)(2026年1月)ローンプログラムの見直しおよびエネルギー関連予算についての公式発表。リンク
  • 米連邦エネルギー規制委員会(FERC)(2026年1月)大口需要家の系統接続審査を迅速化する新プロセス承認の通知。リンク

CTVC

CTVC Issue 280(本稿は同号の「Deals of the Week(2026/1/20–1/26)」を起点に、一次情報で裏取りし独自に要約・分析しました。先週号は #279)。

略語集

略語正式名称・説明
PFProject Finance(プロジェクトファイナンス。案件単位でキャッシュフローを返済原資とする融資スキーム)
BESSBattery Energy Storage System(大規模蓄電池システム。系統や需要家側に設置される電池設備)
DOEDepartment of Energy(米国エネルギー省。エネルギー政策やローンプログラムを所管する省庁)
FERCFederal Energy Regulatory Commission(米連邦エネルギー規制委員会。送電・市場ルールなどを規制する独立機関)

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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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