カーボンクレジット開発のhummingbirdsが€50m調達、Verley・Metafuelsも続く欧州Series Aの週|クライメートテック資金調達 #026

深いグリーンの熱帯雨林の上空を、1羽の鮮やかなハチドリが飛んでいる。背景に向かって、樹冠がゴールドとティール(青緑)の六角形をした「カーボンクレジットトークン」の抽象的なパターンへと溶け込むように変化している。左側からは柔らかな朝の光が差し込み、白く澄んだ空が広がっている。画像中央には白抜きで「カーボンクレジット開発のhummingbirdsが€50m調達 Verley・Metafuelsも続く欧州Series Aの週」というタイトルと、その下に「クライメートテック資金調達 #026」というサブタイトルが配置されている。

今週は、〔スタートアップ資金調達〕に$146.0m、〔M&A / Exit〕に非開示(IPO1件含む)、〔プロジェクト・デット〕に$343.1mが集まりました(合計$489m、非開示は集計外)。

目次

3行サマリー

スタートアップ資金調達動向:
仏hummingbirdsがDFI3機関から€50m($55m)のSeries Aを調達し、高品質な自然ベースカーボンクレジット開発を加速。精密発酵のVerley($30m)やe-SAFのMetafuels($24m)など欧州勢のSeries Aが目立つ週だった。

プロジェクト資金調達動向:
EIBがPetit Forestier Groupに€150mのデットを供与し、EU域内で4,000台のBEV冷蔵車導入を支援。Andion CH4もGoldman Sachsから€67mのプライベートクレジットを獲得し、欧州バイオメタン投資が活発化している。

政策動向:
米DOEがSouthern Company子会社へ史上最大の$26.5Bローンを実行(ガス・原子力・蓄電・送電)。ドイツは水素プロジェクトを「最重要公共利益」に格上げし、許認可迅速化へ。

今週の資金調達動向

サマリー(USD概算)

グループ件数開示額合計主な資金種別代表案件
スタートアップ/コーポレート(エクイティ/研究助成等)12$146.0mSeries A, Seedhummingbirds $55m, Verley $30m
M&A / Exit3非開示(IPO1件含む)IPO, 買収CleanMax IPO, HyCC買収
プロジェクト系(PF/デット/資産売買)5$343.1mDebt, PF EquityPetit Forestier $165m, Andion $73.7m

— 注:合計は概算・非開示を除く。為替目安:£→$1.33、A$→$0.68、€→$1.10、C$→$0.74、¥→$0.0067(端数は$0.1m未満切り捨て)。通貨併記は一次発表に準拠。

A. スタートアップ / コーポレート

企業/国金額/ステージ概要主な投資家
hummingbirds/FR$55.0m(€50m)/Series A自然ベースのカーボンクレジット開発プラットフォームBritish International Investment, Proparco, Swedfund
Verley/FR$30m/Series A精密発酵による代替タンパク質の開発Alven, Blast, Bpifrance, Sofinnova, Founders Future
Metafuels/CH$24m/Series Aメタノールからのe-SAF合成技術UVC Partners, Energy Impact Partners, Contrarian Ventures, Fortescue Ventures
BeyondMath/UK$10m/Seed Extension(累計$18.5m)物理AIモデルによる建築・製造シミュレーション高速化Cambridge Innovation Capital, Insight Partners, UP.Partners, InMotion Ventures
Grevoro/IN$5m/Seed低炭素産業向けデータOSAtha Group, Misra Group
Reduced/DK$4.4m(€4m)/Series A食品副産物のアップサイクルによる天然香料生産Delphinus Venture Capital, Novo Holdings, European Circular Bioeconomy Fund
CLIMATEX/CH$4m/Seedサーキュラーテキスタイル技術の開発Collateral Good
PolyGone Systems/US$4m/Seedマイクロプラスチック濾過・モニタリングシステムFYRFLY Venture Partners, Golden Seeds, Tech Council Ventures
Grodi/ES$2.7m(€2.5m)/Seed温室栽培向け自律型ロボティクスSwanlaab, Axon Partners Group, CDTI Innovación
Einklang/DE$3m/Seed産業用蓄電池を活用したエネルギー最適化サービスVireo Ventures, Angel Invest, DnA Ventures, Saxovent
Ark Climate/DE$2.3m(€2.1m)/Pre-seed自治体向け気候変動対策ソフトウェアSatgana, another.VC, Voyagers Climate Fund
Sparqle/NL$1.6m(€1.5m)/SeedEC向けゼロエミッション・ラストマイル配送European Union

hummingbirds — 特集

会社の概要

hummingbirdsは2022年に仏旅行大手Voyage Privéの創業陣により設立された、自然ベースのソリューション(NbS)に特化したカーボンプロジェクト開発企業である。アフリカ、中南米、東南アジアを中心に、森林保全・生態系復元型のカーボンクレジットプロジェクトを20件以上手掛け、累計4,500万tCO2e以上の削減・隔離をパイプラインに持つ。本社は仏エクサンプロヴァンスに置き、パリ・アクラ・ナイロビ・メキシコシティ・サンパウロ・メルボルンの6拠点でグローバルに活動している。

何ができるのか

hummingbirdsは自然ベースのカーボンクレジットを「企画段階から」支援する。具体的にはプレフィージビリティ調査やパイロット段階に資金と技術援助を投入し、プロジェクトの実現可能性を実証することでリスクを低減する。これにより後続の大規模投資家が参加しやすい状態をつくり、高品質クレジットの供給パイプラインを構築する。対象はREDD+(森林減少防止)、植林・再植林、マングローブ復元(ブルーカーボン)、改良型調理用コンロの配布など多岐にわたる。

技術のしくみ

同社のプロジェクトは衛星リモートセンシングやGIS解析を組み合わせた独自の評価フレームワークに基づく。IFCパフォーマンス基準やVCS/CCBといった国際的に認知された認証基準に沿ってプロジェクトを設計し、土地利用変化のモニタリング、生物多様性の定量評価、地域コミュニティへの社会経済的便益の追跡まで一貫して管理する。テクノロジーそのものというよりも、「初期段階のリスク資本+専門的プロジェクト開発能力」を一体で提供するのがコアの強みである。

料金・導入の進め方

hummingbirdsのモデルはカーボンクレジットの売買を軸としたプロジェクトファイナンス型である。企業がネットゼロ目標達成のためにオフセット需要を持つ場合、hummingbirdsのポートフォリオから長期オフテイク契約でクレジットを購入する形が基本となる。初期段階で同社が開発リスクを負い、クレジット生成後にリターンを回収する構造のため、企業バイヤーにとっては「品質保証済みの高信頼クレジット」を比較的確実に確保できるメリットがある。

他社との違い
  • 初期段階特化のリスク資本:多くのカーボンクレジット仲介業者がプロジェクト完成後のクレジット売買に注力するのに対し、hummingbirdsはフィージビリティ段階から資金を投入しプロジェクトを「つくる」立場にある。
  • DFI3機関の信頼性:今回のSeries Aに参加したProparco、Swedfund、British International Investmentはいずれも政府系開発金融機関であり、プロジェクトの社会・環境的信頼性に対する強いシグナルとなっている。
  • グローバルな多様性:アフリカ・中南米・東南アジアにまたがるプロジェクト分散により、特定地域の規制変更リスクに対するレジリエンスが高い。
どこで効果が出やすいか/日本での示唆

hummingbirdsのモデルは「高品質NbSクレジットの需給ギャップ」が最も大きい地域で価値を発揮する。日本企業はGXリーグやTNFD対応でネイチャーポジティブ目標を掲げる動きが加速しており、高品質クレジットの調達先として同社のようなDFI認証済みデベロッパーへの関心が高まる可能性がある。BeyondMathが日本市場への展開を明言しており、クライメートテック分野での日欧連携が広がる兆しも見られる。

B. M&A / Exit

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
CleanMax/IN₹3,100 crore(約$370m)/IPOインド最大のC&I再エネプロバイダー、BSE・NSE上場、初値は公開価格から約9%下落
Solar Juice/AU非開示/買収太陽光発電システム卸売、SPI Chinaによる買収
HyCC/NL非開示/買収大規模グリーン水素プロジェクト開発、Power2Xによる買収でオランダ・ドイツの水素セクター統合が進展

C. プロジェクト系

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
Petit Forestier Group/FR$165.0m(€150m)/Debt(EIBローン)EU域内でBEV冷蔵車約4,000台を2029年まで導入、フランス・イタリア・スペインが中心
Andion CH4/IT・LU$73.7m(€67m)/Debt(プライベートクレジット)有機廃棄物→バイオガス・バイオメタン、イタリア・北欧でのパイプライン拡大
Kalfresh/AU$54.4m(A$80m)/PF Equity豪州初の農業廃棄物→バイオガス統合プレシンクト、31,000世帯分の再エネ発電
Spiro/AE$50m/Debtアフリカ最大のEVモビリティ事業者、バッテリースワップインフラ拡充
Linea Energy/US非開示/PF EquityDESRIとの優先エクイティ契約によるクリーンエネルギー開発

参考文献・出典リンク一覧

一次情報・企業プレス・公的資料

CTVC

CTVC Issue 285(本稿は同号の「Deals of the Week(2026/2/23–3/2)」を起点に、一次情報で裏取りし独自に要約・分析しました。先週号は #284)。

略語集

略語正式名称・説明
BEVBattery Electric Vehicle(バッテリー式電気自動車)
C&ICommercial & Industrial(商業・産業用)
CTVCClimate Tech VC(Sightline Climate運営のニュースレター)
DFIDevelopment Finance Institution(開発金融機関)
DOEDepartment of Energy(米国エネルギー省)
EIBEuropean Investment Bank(欧州投資銀行)
e-SAFElectro-Sustainable Aviation Fuel(合成持続可能航空燃料)
ETSEmissions Trading System(排出権取引制度)
GXGreen Transformation(グリーントランスフォーメーション)
IPOInitial Public Offering(新規株式公開)
M&AMergers & Acquisitions(合併・買収)
NbSNature-based Solutions(自然ベースのソリューション)
PFProject Finance(プロジェクトファイナンス)
TNFDTaskforce on Nature-related Financial Disclosures(自然関連財務情報開示タスクフォース)
VPPVirtual Power Plant(仮想発電所)





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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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