ネブラスカで大型e-メタン計画 伊藤忠、大阪ガスら日米欧5社がFEED共同開発に合意

米ネブラスカ州で、年間約7.5万トンの合成メタン(e-メタン)を製造する「Live Oakプロジェクト」が動き始めました。TotalEnergiesとTESのプロジェクトに、伊藤忠商事・大阪ガス・東邦ガスが参画し、2030年度の日本向け供給を見据えて基本設計(FEED)の共同開発契約を締結しました。

目次

3行サマリー

  • 2025年12月2日、TotalEnergies・TES・大阪ガス・東邦ガス・伊藤忠が、米ネブラスカ州のLive Oak e-メタン事業でFEED共同開発契約を締結しました。
  • 再エネ由来のグリーン水素とバイオエタノール工場のCO₂から、年間約7.5万トンのe-メタンを製造し、日本への輸出を目指す構想です。
  • 既存のLNG・都市ガスインフラを活用しつつ、大阪ガス・東邦ガスが掲げる「2030年度ガス供給量の1%をe-メタン等で賄う」目標達成に貢献します。

1.Live Oakプロジェクトの概要とスケジュール

Live Oakプロジェクトは、ネブラスカ州で年間約7.5万トンのe-メタンを製造し日本へ輸出することを目指す日米欧5社の共同事業です。参画企業はTotalEnergies、TES、大阪ガス、東邦ガス、伊藤忠商事の5社で、日本企業3社の合計参画比率は33.3%とされています。

※ 大阪ガスと伊藤忠商事の2025年12月2日付プレスリリースでは、2027年度内の最終投資意思決定(FID)と、2030年度中の製造開始・日本向け輸出を目指すことが明記されています。

  • 場所:米国ネブラスカ州
  • フェーズ:FEED(基本設計)実施に向けた共同開発契約を締結
  • 製造能力:e-メタン年間約7.5万トン
  • スケジュール:2027年度内にFID、2030年度中に製造開始・日本輸出
  • 参画比率:TotalEnergies 33.35%、TES 33.35%、日本企業3社合計33.3%(伊藤忠商事が日本側の取りまとめ)

要点:2030年度に年間約7.5万トンのe-メタンを日本へ送り出す計画で、日米欧5社が早期から権益を押さえた上流案件になっています。

2.技術とサプライチェーン:グリーン水素×バイオCO₂×LNGチェーン

Live Oakでは、再生可能エネルギーでつくるグリーン水素と、バイオエタノール工場から回収するバイオマス由来CO₂を原料に、メタネーション反応でe-メタンを製造します。グリーン水素は水の電気分解で製造され、製造過程でCO₂を排出しない水素と定義されています。

データでは、大阪ガスの公表資料が、ネブラスカ州の再エネ電源とバイオエタノール工場のCO₂を活用すること、そしてe-メタンがLNG・都市ガスと同じメタン成分であるため既存インフラをそのまま使えることを強調しています。欧米ではe-NG(electric natural gas)という呼び方も普及しつつあります。

製造されたe-メタンは、米国内の天然ガスパイプラインに注入され、既設のLNG液化設備で液化した上で日本に輸送される想定です。日本側では既存のLNG受入基地や都市ガス配管網、需要家の燃焼機器をそのまま活用できるため、新たな専用インフラ投資を抑えながら脱炭素を進められます。

要点:再エネ由来のグリーン水素とバイオCO₂を組み合わせ、既存のLNGチェーンをフル活用することで、e-メタンは「インフラを変えずに進めるガス脱炭素」の実験場になります。

3.日本企業3社の狙い:1%導入目標とポートフォリオ戦略

大阪ガスと東邦ガスは、2030年度に自社のガス供給量の1%をe-メタンやバイオメタンなどで賄う数値目標を掲げています。Live Oakからのe-メタン輸入は、この1%目標を支える海外案件の一つとして位置づけられています。

根拠:大阪ガスのプレスリリースでは、Live Oakからのe-メタン輸入が「2030年度1%」のe-メタン等導入目標の達成に寄与することが明記されています。また、大阪ガスは米Archaea Energyとのバイオメタン調達契約など、e-メタンとバイオメタンを組み合わせたポートフォリオ構築も進めています。

伊藤忠商事は、日本側3社の取りまとめ役として参画し、長期オフテイク契約の設計や、日本市場での需要家開拓・認証スキームの整理を担う立場です。総合商社として、LNG・再エネ・環境価値を束ねるノウハウをe-メタン分野にも広げる動きだと考えられます。

要点:Live Oakは、日本の都市ガス会社が掲げる「2030年e-メタン等1%導入」の実現に向けた海外の有力供給源となり、伊藤忠商事は日本側コンソーシアムのハブとして機能します。

4.e-メタンは「第3の輸入エネルギー」になりうるか

アンモニアや液体水素と比べると、e-メタンは物理的な性質こそ従来の天然ガスと同じで、インフラ面の新規性は小さい一方、脱炭素エネルギーとしての評価軸はやや異なります。燃焼時にはCO₂を排出するため、バリューチェーン全体でカーボンニュートラルかどうかを証明する必要があります。

データでは、同種のe-メタン・e-NG案件で、プロジェクトの収益性は再エネコスト、水電解設備のCAPEX・OPEX、CO₂回収コスト、そして米国のIRA(インフレ抑制法)などの税控除の活用可否で大きく変動すると整理されています。Live Oakも、ネブラスカ州の再エネとバイオエタノール工場のCO₂という比較的有利な条件を活かしつつ、LNGチェーンのコストと日本側のグリーンプレミアム受容度のバランスが焦点になります。

事業開発の観点では、今後の論点として、①LNGスポット価格に対してどの程度のプレミアムで長期オフテイクが成立するのか、②アンモニア・水素サプライチェーンと比較したIRRレンジ、③e-メタンの環境価値を認定する認証スキームやトラッキング手法をどう整備するか、などが重要になります。

要点:e-メタンは、既存インフラを活かせる分だけ「導入のしやすさ」が大きな武器であり、価格レンジと環境価値認証の設計が進めば、アンモニア・水素に続く「第3の輸入エネルギー」候補として存在感を高めます。

5.今後の論点:価格・認証・国内プロジェクトとの組み合わせ

Live OakはまだFEED段階であり、2027年度のFIDまでは設備仕様やコスト前提、オフテイク条件が固まっていきます。日本側の都市ガス会社・電力会社にとっては、同時期に検討が進むアンモニア・水素・バイオメタンなどの案件と比較しながら、どの程度のボリュームをe-メタンに割り当てるかを見極めるプロセスになります。

根拠:大阪ガスの資料では、国内でのe-メタン実証や、米国からのバイオメタン輸入など複数のオプションを組み合わせて、2050年カーボンニュートラル実現に向けたポートフォリオを構築すると説明されています。Live Oakは、その中で「海外e-メタンクラスターの第1号候補」として位置づけられると言えます。

我々としては、今後のフォローアップとして、①FEED完了時点での設備規模・コスト前提のアップデート、②FID時点で公表される長期オフテイクの条件、③国内のe-メタン・バイオメタン案件との役割分担、の3点をウォッチしておくと、ガス・電力のGX戦略全体を立体的に捉えやすくなります。

要点:Live Oakは、日本の都市ガス脱炭素における「海外e-メタンモデルケース」として、今後の価格・認証・ポートフォリオ議論の基準点になるプロジェクトです。

参考リンク

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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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