分譲マンションにEVを「WeCharge」—共用100Vから充電

分譲マンションの電気自動車(Electric Vehicle: EV)充電は、「工事が重い」「課金が面倒」が壁でした。ユビ電の「WeCharge」は共用部の電源や区画ごとのコンセントを活かし、スマホ決済で運用を簡素化します。集合住宅の省エネ・創エネと両立する設計なら、初期負担と合意形成のハードルを下げられます。

目次

3行サマリー

  • ユビ電はマンション向けEV充電「WeCharge」を拡大し、共用設備の電気料金を切り分けつつ、アプリ課金で運用負担を軽減します。
  • 料金は月額プラン+電力量/時間課金の併用。2025年10月末時点で充電場所300か所コンセント3,799口普通充電58基を公開。電力量の単位はキロワット時(kWh)です。
  • 大京の分譲物件で採用事例が公表され、マンションのカーシェア(Car Sharing)や省エネ施策との相性が注目されています。

マンション×EVのボトルネックは「日常の充電」

都市部でEVを使いこなすには、夜間の「基礎充電」を自宅駐車区画で確保することが要点です。政府は2030年までに充電口30万口(うち最大20万口を集合住宅等)へ拡大する方針を掲げています。マンションが基礎充電を内蔵すれば、購入前の心理的障壁は下がります。要は、“買っても困らない”状態を先につくることが普及の最短路です。

WeChargeの基本モデル:区画コンセント+アプリ課金

ユビ電は駐車区画ごとに200ボルト(200V)コンセント(出力3キロワット(3kW))を個別設置し、QRコード(Quick Responseコード)認証からクレジット決済までをアプリで完結させます。特徴は、共用部の電気料金と充電利用の電力を切り分けられる点です。管理組合は集金や按分から解放され、運用設計を簡素化できます。

料金は「Guest〜Super Long」の月額プラン(0円/月〜7,980円/月)と電力量課金(例:Guest 60円/kWh)、時間課金(例:3kWで3円/分)を組み合わせます。プランには定額内のkWh/時間枠があり、超過分には所定単価が適用されます。マンション側はアプリ課金に一本化でき、理事会の事務負担を抑えられます。

ZEH-M/省エネ施策との連携ポイント

集合住宅版ネット・ゼロ・エネルギー住宅(Net Zero Energy House for Mansions: ZEH-M)は、断熱・高効率設備に加えて太陽光発電(Photovoltaics: PV)や蓄電を組み合わせ、一次エネルギー消費量の削減を狙います。EVの基礎充電を“負荷の平準化”に活かせば、昼の余剰電力を夜間の充電に振り向ける運用が可能です。大京の分譲物件での採用公表は、こうした省エネ施策と充電運用の両立に現実味を与える事例と言えます。

電力購入契約(Power Purchase Agreement: PPA)や時間帯別料金(Time of Use: TOU)と連動すると、日中は清掃・点検に合わせて補充、夜間は追い充電といった配分がしやすく、共用部の契約電力の抑制にも寄与します。

筆者の視点:EVカーシェアとの相性

私は、分譲マンションでのEV導入は「シェア(Car Sharing)×充電」の同時立ち上げが要だと考えます。国内ではREXEV(レクシヴ)が分譲物件での実証を進め、平時は移動サービス、非常時は“走る蓄電池”という二面性を示しています。需要(乗る)と供給(充電)を同じ場所・同じアプリで回すほど、体験の満足度と投資回収は同時に高まります。

“面白い”と感じる理由は次のとおりです。

  • 体験の入口を作る:所有前の試乗ハードルを下げます。居住者は自宅下で気軽にEVを試し、良い体験が購入意欲に直結します。
  • 回転率が素直に上がる:返却→即充電→次予約の循環を仕組み化すると、都市部特有の短距離予約連続でも稼働が落ちません。目標の充電残量(State of Charge: SOC)を40〜80%で周回させる運用が現実的です。
  • 小さく生んで太くする投資:共用100ボルト(100V)から数口で着手し、実績データを根拠に200ボルト(200V)/3キロワット(3kW)へ段階増強します。少数高稼働の方が合意形成と原価回収を読みやすいです。
  • 料金と電力の最適化:アプリ課金ならTOUや屋上PVの余剰に合わせて充電優先度を自動制御できます。
  • パートナー拡張の余地:保険、決済、電力小売、カーシェア運営とのOEM(Original Equipment Manufacturer)提携でメニューを広げられます。“移動×電力×防災”の複数価値を一契約で提供できるのは、マンションという“面”ならではです。

要するに、ハード単体ではなく「運用の線」を太くする取り組みです。返却すれば“勝手に充電されている”体験が当たり前になれば、カーシェアの回転率は上がり、同時にマンションのEV普及も進みます。REXEVの示す平時/非常時の二面性は、その未来像を具体化する好例だと私は考えます。


出典

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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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