今週のクライメート最前線:契約CF×DSCRで進むPF、Aira・Equatic・3DCほか #002

今週は、データセンター開発(低炭素電源連動)に$325m再エネ製造(ポリシリコン上流PF)に$250meVTOLに$230mが集まりました。

PFではUnited Solar Group(オマーン)$250m、Green Genius(リトアニア)€64mが、長期PPAや容量・周波数収入を織り込んだ構造で成立。

スタートアップ側では、Evolution Data Centres($325m)、Aira(€150m)、Eve Air Mobility($230m)、Vulcan Elements($65m)、Equatic($11.6m)など、サプライチェーン強靭化・需要家の電化・CDRといったテーマに成長資金が流入しました。

目次

3行サマリー

プロジェクト資金調達動向
H2やPV上流の製造PF、系統直結BESS/太陽光のグリーン・ローンが進展。
評価軸は稼働率・オフテイク・DSCRに回帰し、契約キャッシュフローの“見え方”が調達可否を左右しました。
欧州では公的系金融(NIB)と商業銀行(Nord/LB)を組み合わせた構造が増加。

スタートアップ資金調達動向
“現場のボトルネック解消”に資金が集中。
家庭用ヒートポンプ(Aira)、レアメタルサプライチェーン(Vulcan Elements)、分散化電源の系統接続ノード(National Renewable Network)、eモビリティ(Ultraviolette)といった分野にエクイティが流入。
CDR(Equatic)やアグリ・ロボ(Saga)も実装フェーズに前進。

政策動向
米国はデータセンター関連インフラの許認可迅速化(大統領令)で設備投資促進の地ならし。
英国では系統接続の最新TEC(Transmission Entry Capacity)レジスター更新が継続され、接続待ちの見通しに関する開示が定例化。PF側の前提(接続・容量契約)に影響します。

今週の資金調達動向

サマリー

大型資金はプロジェクト系(PF/デット)に集中、スタートアップ資金は小〜中口が中心。
M&Aはデータの抱き合わせで稼ぐ方向に寄っています。

  • プロジェクトはエクイティだけでなく「借りて増やす」段階。
    IFC主導の製造PF(United Solar)と、NIB+Nord/LBの太陽光PF(Green Genius)は、為替・金利環境下でも長期契約×グリーン・ローンが成立することを再確認。
  • スタートアップは“現場が困っている所”にお金。
    ヒートポンプ(家庭熱の電化)、レアメタルサプライチェーン、分散再エネの系統接続ノード整備などに資金が流れました。
  • M&Aは「データ×既存顧客」へ。
    既存の販売網やアセット運用にデータ(DaaS/ソフト)を重ねてARPU向上と解約抑止を狙う動きが継続。
グループ件数開示額合計主な資金種別代表案件
プロジェクト系(PF/デット/資産売買)2$320mグリーン・ローン/輸出入系・公的系+商業銀行の協調United Solar $250m PF(製造)/Green Genius €64m PF(太陽光)
スタートアップ/コーポレート(エクイティ/成長資金)11$569m成長ラウンド/PE拡張/ポストIPO増資Evolution Data Centres $325m(PE拡張)/Aira €150m(Growth)/Eve Air $230m(Post-IPO)
M&A / Exit2〜3非開示事業・資産買収/統合(今週非開示多数。データ連携型の買収が中心)

— 注:合計は概算・非開示を除く。為替目安:£→$1.33、A$→$0.68、€→$1.10、C$→$0.74、¥→$1=¥155(四捨五入。$1m未満は切り捨て)。

A. プロジェクト系

  • United Solar Group(オマーン/ポリシリコン):IFC主導で約$250mデット、販売契約で将来CFを可視化し、為替・商品ヘッジ+歩留まり/スループットKPIでDSCRを下支え(製造でもエネ原単位・排出係数などの“グリーン適格性”を考慮)。
  • Green Genius(リトアニア/太陽光):NIB+Nord/LBが€64m協調、長期PPAに容量/バランシング/スポットを足し算+キャッシュスウィープで保守的運営、EPC/O&MとEMS保証で稼働率担保=返済安定。
  • 示唆(PF全般):①収入は契約で見える化(PPA/容量/周波数)②価格・為替はヘッジで先に守る③技術KPIをコブナンツ化(稼働率・歩留まり・劣化)してDSCRを安定
企業/国金額/資金種別・ステージ概要
United Solar Group(オマーン)$250m/PFローン多結晶シリコン上流製造のPF。オフテイクと技術KPIに基づきDSCRを設計。IFC主導の公的系+商業銀行協調。
Green Genius(リトアニア)€64m(≈$70m)/グリーンローン太陽光ポートフォリオのPF。NIB(InvestEU枠)とNord/LBの協調。PPA+容量・周波数収入の複合化。

B. スタートアップ / コーポレート

Evolution Data Centres(アジア/データセンター)資金:~$325m(報道ベース、PE拡張)
再エネをPPA/CFDで長期確保し、ラック当たりの電力を高めて“電力1kWあたりの収益”を引き上げる。
KPIはCFE比率・PUE・kW/ラック・CAPEX/MW・予約/稼働MW。課題は系統接続・許認可・建設コストの上振れ。

Eve Air Mobility(米/eVTOL)資金:$230m(Post-IPO Equity;Embraer+BNDES)
安全認証の遅れに備えつつ、量産立ち上げ資金を厚く積む一手。
収益化の要はオーダーブック×生産歩留まり;主なリスクは規制対応・電池性能・離着陸や整備拠点など運航インフラ。

Aira(欧州/家庭用熱の電化)資金:€150m(≈$165m、グロース)
施工・在庫・サブスク融資まで自前で回し、“FinTech化したヒートポンプ”で普及を早める。
KPIは解約率・CAC回収期間・戸当たりの削減kWh・粗利。課題は職人の確保と季節変動、稼働後の保守品質。

Equatic(米/海洋系CDR)資金:$11.6m(Series A)
電解でCO₂を鉱物に固定する方式のDOC。一次データに基づくMRVで見える化。
商用化のカギはMWh/除去tCO₂の引き下げと環境影響の検証、そして除去クレジットの長期オフテイク

※ DOCについて解説↓記事はこちら

3DC(日本/次世代カーボン材)資金:総額¥24.5億(うちエクイティ¥14.5億≈$9m)+NEDO助成
Li-ion電池向け導電助剤「GMS」を量産し、粒子の分散と導電ネットワークで容量と寿命の両立を狙う。
KPIは分散性・初期容量・サイクル寿命・コスト/kg。勝負どころは量産の安定と顧客の量産認定。

企業/国金額/ステージ概要
Evolution Data Centres(アジア)$325m/PE拡張低炭素電源前提のDC開発。電力密度・PUE・長期PPAがKPI。
Aira(EU)€150m(≈$165m)/Growth熱ポンプD2C。施工・在庫・ファイナンスの垂直統合でCAC回収短縮。
Vulcan Elements(米)$65m/Series Aレアアース磁石の内製化。量産歩留まりと品質トレーサビリティが命。
National Renewable Network(豪)$44m/Series A分散再エネの系統接続ノードを束ねる基盤運用。PPA成立率を改善。
Eve Air Mobility(米)$230m/Post-IPO EquityeVTOL量産立上げ。認証・歩留まり・CAPEXの三重管理。
Equatic(米)$11.6m/Series A海水由来CDR。電解×鉱物固定。MRVは一次データ比率が肝。
Saga Robotics(ノルウェー)$11.2m/SeedUV-Cロボで病害抑制とデータ化。面積当たり処理量がKPI。
3DC(日)¥2.45bn(うちEquity ¥1.45bn≈$9m)GMS(導電助剤)の量産。スラリー分散制御で内部抵抗低減。
Prefer(米)$4m/Seedデータ・中間レイヤー。欠損補完と現場適用の速度で評価。
Ultraviolette(印)$21m/戦略エクイティeバイクのSKU拡張。航続・充電・コスト/台の三立。
Manastu Space(印)$3m/Series Aグリーン推進。安全性と比推力の両立でコンステ向けに展開。

C. M&A / Exit

  • (非開示案件)
    運用中アセットの取得にデータ(モニタリング・予知保全)を抱き合わせ、ARPU向上と解約抑止を狙う“オペレーション一体”の買収が継続。
  • (非開示案件)
    既存顧客基盤にカスタマーサクセス(省エネ・稼働率改善)を載せる統合。SaaS×O&Mのハイブリッド化。
企業/国金額/資金種別・ステージ概要
非開示非開示DaaSと既存販売網の統合で、継続課金化とアップセルを狙う買収。
非開示非開示O&Mの統合により、返済原資の安定(稼働率KPI)を確保。

政策・規制アップデート

データセンター許認可の迅速化 — 米国大統領令(2025/7/23)

  • 何が起きた?
    連邦レベルでデータセンターおよび関連インフラ(送電・変電等)の許認可迅速化を指示。対象はAI大規模データセンターを含む。
  • どこに影響?
    新設DCの接続確度・工期が改善。PFではC.O.D.の確からしさと材料高の変動条項が焦点。
  • 原典リンク

系統接続の可視化アップデート — 英国TECレジスター(2025/8/12)

  • ベースライン
    National Grid ESOはTEC(接続容量)レジスターを定期更新。プロジェクトごとの接続見通しや変更情報が反映。
  • なぜ?
    系統のボトルネックを前提に、BESSやPVのポートフォリオ分散・順序入替を投資判断に反映させるため。
  • ただし
    接続枠の繰越・キャンセル待ち等の不確実性は残る。PFモデルでは接続遅延ペナルティCODスライドの条項設計が必須。
  • 原典リンク

参考文献・出典リンク一覧

一次情報・企業プレス・公的資料

政策・統計・当局資料

  • 米国:データセンター許認可迅速化 大統領令(2025/7/23)— White House
  • 英国:TECレジスター(2025/8/12)— National Grid ESO

補助的ソース・業界メディア

CTVC

AI’s megawatt moment(Issue #259)(本稿は同号の「Deals of the Week」を起点に、一次情報で裏取りして独自に要約・分析しました)。

略語集

略語正式名称・説明
PFProject Finance(プロジェクト・ファイナンス)
DSCRDebt Service Coverage Ratio(債務返済余力指標)
BESSBattery Energy Storage System(大規模蓄電設備)
O&MOperations & Maintenance(運用・保守)
EMSEnergy Management System(エネルギー管理/制御システム)
PPAPower Purchase Agreement(電力購入契約)
CODCommercial Operation Date(商用運転開始日)
SMRSteam Methane Reforming(天然ガス改質)
CCSCarbon Capture and Storage(炭素回収・貯留)
LCOE / LCOHLevelized Cost of Electricity / Hydrogen(均等化発電/水素コスト)
MRVMeasurement, Reporting and Verification(計測・報告・検証)
DaaSData as a Service(データ提供型サブスク)
ARPUAverage Revenue Per User(顧客当たり売上高)
CSRDCorporate Sustainability Reporting Directive(EUのサステナ報告指令)
LMILow- and Moderate-Income(低・中所得層)
EPAU.S. Environmental Protection Agency(米国環境保護庁)
EIAU.S. Energy Information Administration(米国エネルギー情報局)
AEOAnnual Energy Outlook(年次エネルギー見通し)
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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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