自動運転トラックと次世代核燃料に資金が集まる週:Waabi $750m、Standard Nuclear $140m、Redwood Materials $75m|クライメートテック資金調達 #023

自動運転トラックと小型原子炉、バッテリーリサイクル工場を描いたクライメートテック投資のイメージイラスト

今週は、〔スタートアップ資金調達〕に$1,236.1m、〔M&A / Exit〕に$0.0m、〔プロジェクト・デット〕に$0.0mが集まりました(合計$1,236.1m、非開示は集計外)。

目次

3行サマリー

スタートアップ資金調達動向:
北米発のディープテック大型ラウンドが目立ち、トロント拠点の自動運転スタートアップWaabiがSeries Cで$750mを調達しました。地熱探査のZanskar、次世代核燃料のStandard Nuclear、バッテリーリサイクルのRedwood Materialsなどが続き、開示ベースのスタートアップ資金は合計$1,236.1mとなりました。

プロジェクト資金調達動向:
プロジェクト系では、東京拠点のNautilus Data TechによるAI・HPCデータセンター向けのデットファイナンスが報じられましたが、金額は非開示でした。開示額ベースの集計は$0.0mとなり、今週はエクイティ中心のスタートアップ案件が全体を牽引した週になりました。

政策動向:
今週、主要当局からクライメートテック関連で大きく資金フローに影響する新規政策アナウンスは特段なしでした(本稿執筆時点で一次ソースを確認できた範囲)。

今週の資金調達動向

サマリー(USD概算)

グループ件数開示額合計主な資金種別代表案件
スタートアップ/コーポレート(エクイティ/研究助成等)19$1,236.1mSeries C, Series A, Seed, Pre-seedなどのエクイティ・成長資金Waabiの$750m Series C(自動運転トラック向けAI)
M&A / Exit0$0.0m該当なし該当なし
プロジェクト系(PF/デット/資産売買)1$0.0mデット(条件非開示)Nautilus Data TechのAI・HPCデータセンター向けデットファイナンス

— 注:合計は概算・非開示を除く。為替目安:£→$1.33、A$→$0.68、€→$1.10、C$→$0.74、¥→$0.0067(端数は$0.1m未満切り捨て)。通貨併記は一次発表に準拠。

A. スタートアップ / コーポレート

企業/国金額/ステージ概要主な投資家
Waabi/CA$750m/Series C自動運転トラック向けAI開発プラットフォームKhosla Ventures, Uber, Coatue, D1 Capital
Standard Nuclear/US$140m/Series ATRISO燃料を製造する次世代原子燃料メーカーDecisive Point, Andreessen Horowitz, Chevron Technology Ventures, StepStone Group
Zanskar/US$115m/Series CAIで地熱ポテンシャルを探査する地熱開発プラットフォームObvious Ventures, DCVC
Redwood Materials/US$75m/Series DEVバッテリーリサイクルと正極材製造Capricorn Investment Group, Goldman Sachs Asset Management, Google
Applied EV/AU$40m/Series B自動運転対応のソフトウェア定義EVプラットフォームNational Reconstruction Fund Corporation, IAG Capital Partners
XFuel/IE$20m/Series Aバイオマス由来低炭素液体燃料の製造SOSV, Union Square Ventures, Future Planet Capital, AENU
GlassPoint/US$20m/Series A産業プロセス熱向け集光型太陽熱システムNew Investment Solutions, MIG Capital
Gigablue/DE$20m/Series A系統用蓄電プロジェクトの開発とEPC非公表
metergrid/DE$11.0m/Series A集合住宅向け分散型太陽光とエネルギー共有プラットフォーム非公表
Co-reactive/DE$7.1m/Seedセメント向けCO2鉱物化技術開発High-Tech Gründerfonds, NRW.Bank, AFI Ventures, HBG Ventures
AZX/US$6m/Pre-seed電力系統と重要インフラ向けAIソフトウェアPowerhouse Ventures, KOMPAS, Founders’ Co-op, Sustainable Future Ventures
Relement/NL$6m/Seedバイオベース化学品インターミディエイト製造KIKK Capital, The Yield Lab, TNO Ventures, Brabant Development
Rainbow Weather/PL$6m/Seed高解像度気象予測と気候リスク解析プラットフォームYuri Gurski
Vimag Labs/IN$5m/Seedレアアースフリー電動モーター開発Accel, Chakra Growth Capital, Thinkuvate
CVector/US$5m/Seed産業向けエネルギーデータ解析SaaSPowerhouse Ventures, Fusion Fund, Hitachi Ventures, Schematic Ventures
Refurbi/CO$4m/SeedリファービッシュスマホのオンラインマーケットプレイスLatin Leap, PSM Impact Ventures, Epic Angels, Inter-American Development Bank
Billdr/CA$3m/Seed住宅リノベーションのAI見積とプロジェクト管理プラットフォームWhite Star Capital, One Way Ventures, Desjardins Capital, asterX
TetraxAI/ES$2m/Pre-seed再エネプロジェクト管理向けAIプラットフォームThe Footprint Firm, Carbon13, CDTI, Norrsken Evolve
EarthSync/IN$1m/Pre-seed再エネ発電所の運転最適化SaaSTheia Ventures, Eximius Ventures

Waabi — 特集

自動運転スタック「Waabi Driver」を搭載した長距離トラックのイメージ(出典:Waabi)
自動運転スタック「Waabi Driver」を載せた長距離トラックのイメージ。
トラックOEMへの組み込みを前提にしたプロダクト設計が特徴
(出典:Waabi)。
会社の概要

Waabiはカナダ・トロントに本社を置く自動運転トラック向けAIスタートアップで、創業者は自動運転研究の第一人者として知られるRaquel Urtasun氏です。長距離トラック輸送に特化したソフトウェアスタックとシミュレーション環境を武器に、米国南部を中心に商用パイロットと実運行を拡大しています。今回のSeries Cで調達した$750mは、自社のAIドライバーと「Waabi World」と呼ばれるシミュレーション基盤の高度化、ならびに車両OEM・物流事業者との提携拡大に使われると説明しています。

何ができるのか

Waabiのプロダクトは、トラックに搭載される「AIドライバー」と、その学習・検証のための仮想世界「Waabi World」の組み合わせです。荷主や運送会社は、特定区間の長距離輸送をWaabi対応トラックに任せることで、ドライバー不足の緩和や運行コストの低減、夜間・深夜帯の安定運行などを期待できます。Waabi側はAIドライバーをサービスとして提供することで、走行距離や稼働時間に応じた料金モデルを組みやすくし、物流事業者の初期投資負担を抑える構えです。

技術のしくみ

Waabiの特徴は、大量の実車走行データに依存する従来型の自動運転開発ではなく、生成AIを用いたシミュレーション中心のアプローチを取っている点です。Waabi Worldと呼ばれる仮想空間では、現実の道路構造や交通ルールを再現しつつ、危険なシナリオや稀な事象を安全に大量生成し、AIドライバーを学習させます。これにより、実車走行でカバーしきれない「ロングテール」のケースにも対応しやすくなり、テストコストを下げつつ安全性の水準を高める狙いがあります。

料金・導入の進め方

公表情報では、Waabiはトラックメーカーやフリートオペレーターと提携し、「ドライバー・アズ・ア・サービス」に近い形で展開する方針を示しています。具体的な料金体系は明示されていないものの、物流会社が車両そのものではなくソフトウェアと運行能力に対して支払うモデルを想定しており、マイル単価や月額利用料など変動費寄りの設計が軸になりそうです。導入プロセスとしては、限定ルートでのパイロット運行から始め、規制当局との調整と安全性検証を踏まえて対象路線や車両数を段階的に拡大する流れが現実的です。

他社との違い
  • ロボタクシーではなく長距離トラック輸送に特化し、ユースケースとビジネスモデルを絞り込んでいる点
  • 生成AIと高精度シミュレーション(Waabi World)を中核に据え、実車走行よりも仮想環境での学習比率を高めている点
  • 自社でトラックを保有するのではなく、AIドライバーをソフトウェアとして提供し、既存物流プレイヤーとのパートナーシップ型でスケールを狙う点
どこで効果が出やすいか/日本での示唆

Waabi型の自動運転トラックは、長距離幹線輸送や港湾〜物流拠点間のシャトル輸送のようにルートが比較的単純で、交通量が多いがパターンが読みやすい区間で効果を発揮しやすいと考えられます。日本では高速道路網が整備されており、ドライバー不足と2024年問題で長距離輸送の効率化ニーズが高まっているため、幹線区間だけを自動運転化しラストマイルは人が担う「ハイブリッド運行」のシナリオが現実的です。物流やエネルギー企業の立場では、自社で自動運転技術を開発するのではなく、Waabiのようなプレイヤーと連携して試行する前提で、保険・安全基準・車両調達を組み替える議論を進めておくと動きやすくなります。

B. M&A / Exit

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
$0m/該当なし今週のCTVC「Deals of the Week」ではM&A / Exit案件は取り上げられず

C. プロジェクト系

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
Nautilus Data Tech/JP非開示/デットAI・HPC向け水冷式データセンター開発

参考文献・出典リンク一覧

一次情報・企業プレス・公的資料

CTVC

CTVC Issue 281(本稿は同号の「Deals of the Week(2026/1/26–2/2)」を起点に、一次情報で裏取りし独自に要約・分析しました。先週号は #280)。

略語集

略語正式名称・説明
AIArtificial Intelligence(人工知能)。コンピュータによる学習・推論・最適化の総称
EVElectric Vehicle。バッテリーなどで駆動する電動自動車
LDESLong Duration Energy Storage。10時間以上の長時間蓄電を主対象とする蓄電技術群
SMRSmall Modular Reactor。工場製造可能な小型モジュール炉タイプの原子炉
TRISOTRi-structural ISOtropic fuel。セラミックと炭素で多層コーティングされた耐熱性の高い核燃料粒子
HPCHigh Performance Computing。科学技術計算やAI学習などに用いる高性能計算システム

ニュースレターを購読する

NetZero Insights Japanの新着・注目トピックを週1で配信します。更新情報を見逃したくない方は是非ご登録ください。

 

※ 時々メールマガジン限定の情報も配信するかもしれません。

 

 

このフォームで取得したメールアドレスは、NetZero Insights Japanのニュースレター配信にのみ利用します。

ニュースレターの購読を申し込むことで、プライバシーポリシーに同意したものとします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

目次