次世代航空機体と核融合に資金が集まる週:JetZero $175m、Startorus $143m、Type One Energy $87m|クライメートテック資金調達 #021

「次世代航空機体と核融合に資金が集まる週 クライメートテック資金調達 #021」というタイトルが入ったアイキャッチ画像。左側には雲の上を飛行するブレンデッドウイングボディ(BWB)型の未来的な航空機、右側には紫色のプラズマがリング状に発光するトカマク型核融合炉が描かれている。背景は濃いブルーを基調とし、世界地図や投資資金の流れを示すグラフのラインが重なる、ビジネス・金融レポート風のデザイン。

今週は、〔スタートアップ資金調達〕に$1768.0m、〔M&A / Exit〕に$0.0m、〔プロジェクト・デット〕に$864.6mが集まりました(合計$2632.6m、非開示は集計外)。

目次

3行サマリー

スタートアップ資金調達動向:
開示額最大のスタートアップ・エクイティは、JetZeroのSeries B $175.0m。ファンド・プラットフォームでは、ALTÉRRAの$1.2bnが目立ちました。

プロジェクト資金調達動向:
Aer Soléirが蓄電池案件でPFデット£216.3mを確保し、米国ではDeutsche BankがAspen PowerとHeelstoneにそれぞれ$200mのデット枠を供給する動きが続きました。

政策動向:
特段なし

今週の資金調達動向

サマリー(USD概算)

グループ件数開示額合計主な資金種別代表案件
スタートアップ/コーポレート(エクイティ/研究助成等)15$1768.0mSeries B, Series A, Seed, Convertible Note, ファンドクローズALTÉRRAが気候投資ファンド1200.0m
M&A / Exit4$0.0m買収, 破産手続きEnact SolarがPVComplete買収
プロジェクト系(PF/デット/資産売買)4$864.6mPFデット, 開発向けデット枠, 公的融資Aer SoléirがPFデット£216.3m

— 注:合計は概算・非開示を除く。為替目安:£→$1.33、A$→$0.68、€→$1.10、C$→$0.74、¥→$0.0067(端数は$0.1m未満切り捨て)。通貨併記は一次発表に準拠。

A. スタートアップ / コーポレート

企業/国金額/ステージ概要主な投資家
JetZero/US$175.0m/Series Bブレンデッドウイング機開発B Capital, 3M, Northrop Grumman, RTX Ventures, United Airlines Ventures
Startorus Fusion/CN$143.0m/Series A核融合の基盤技術開発CICC Capital, 産業系ファンド, 国有系投資機関, 既存投資家
Type One Energy/US$87.0m/Convertible Noteステラレーター型核融合の設計開発非開示
Accelsius/US$65.0m/Series Bデータセンター向け液冷技術Johnson Controls, Legrand, 既存投資家
BillionE/IN$25.0m/GrowthEV充電ネットワーク運営SBI Ventures
MYCOPHYTO/FR$19.0m/Series A菌根菌バイオ資材の商用化BNP Paribas, Bpifrance, Innovacom, CDG Invest, Crédit Agricole CIB
SkyFi/US$13.0m/Series A衛星画像の調達プラットフォームBeyond Earth Ventures, DNV Ventures, J2 Ventures, Rsquared VC, TFX Capital
Transition Biomining/US$6.0m/Seed金属回収のバイオプロセスTransition VC, Climate Capital, Juniper Ventures, SOSV
SenseUP/DE$3.0m/Seed産業向け水素漏えい検知非開示
GreenTech/IN$3.0m/Seed風力運用の最適化ソフトTransition VC
CLT Toolbox/AU$3.0m/Seed木造建築の設計支援ソフトElectrifi Ventures, Energy Lab, Giant Leap Fund, Impact Ventures, Understorey Ventures
BirdsEyeView/GB非開示/非開示気候リスクの保険分析24 Haymarket, ACF Investors, SFC Capital
Superorganism/US$26.0m/Fund closeネイチャーテック向けVCファンドCisco Foundation, Builders Vision, AMB Holdings
ALTÉRRA/AE$1200.0m/Opportunity Fund気候投資の共同投資ファンドBBVA

JetZero — 特集①

JetZeroが開発するブレンデッドウイングボディ(BWB)機の試作機コンセプト。
翼と胴体を一体化した形状により、空力抵抗を抑え燃料消費の50%削減を狙う
(出典:U.S. Air Force / Wikimedia Commons)
会社の概要

JetZeroは、従来の旅客機とは異なる機体形状であるブレンデッドウイングボディ機の開発を進める航空機スタートアップです。2026年1月の資金調達では、航空・防衛・エアライン関連の投資家が参加し、開発の加速を掲げています。

何ができるのか

ブレンデッドウイングボディ機は、機体全体で揚力を得やすい構造を狙うことで、燃費改善や運航コスト低減に寄与する可能性があります。JetZeroは、こうした機体アーキテクチャを商用航空に適用することを目指し、実機開発と実証の前倒しを進めています。

技術のしくみ

一般的なチューブ胴体と主翼を分けた形状に対し、胴体と翼を一体化することで空気抵抗の低減を狙う設計コンセプトです。これにより、同等の輸送能力に対して燃料消費を抑えられる設計余地があるとされ、航空分野の脱炭素に向けた一つの選択肢になり得ます。

他社との違い
  • 航空・防衛・エアライン系の投資家が同時に関与する資本構成
  • 機体形状の抜本変更による燃費改善を狙うアプローチ
  • 商用航空の現場導入を見据えた開発資金の大型化

Startorus Fusion — 特集②

スタートラス・フュージョンのネガティブ三角性球状トカマク(NTST)
https://startorus.com/progress-news/300.html
会社の概要

Startorus Fusionは、中国で商業核融合発電の実用化を目指す民間スタートアップです。清華大学系の研究者らを中心に設立され、現在は100名超のチーム規模で開発を継続しています。上海市系のファンドなどから出資を受けており、今回のシリーズAでは約10億元(約$143m)を調達し、中国の民間核融合企業としても大きなラウンドの一つとなりました。

何ができるのか

Startorus Fusionが目指しているのは、実験炉レベルにとどまらない商業炉としての核融合発電です。自社の検証装置で物理・工学的なコンセプトを確認しつつ、その先にデモ炉建設と商業運転を見据えたロードマップを掲げています。世界的に「2030年代の商業化」をうたうプレーヤーが多いなか、同社も30年代前半の実用化を目標とする、比較的アグレッシブな時間軸を示しています。

実現すれば、大規模なゼロエミッションのベースロード電源として、再エネ大量導入後の系統安定化や産業用電力の脱炭素に大きく寄与し得るポジションです。特に中国国内の工業地帯や大都市圏での電源ポートフォリオに組み込まれる可能性が意識されています。

技術のしくみ

Startorus Fusionは、高温超伝導(HTS)磁石を用いた球状トカマク型の装置コンセプトを採用しています。HTS磁石により高い磁場をコンパクトな装置で実現し、プラズマの閉じ込め性能を高めつつ、装置コストと運転コストの低減を狙う設計思想です。

自社の検証装置では、高温超伝導コイルによる強磁場と、磁気リコネクションを活用した加熱手法などを組み合わせ、プラズマ温度1億度クラスの達成を目標としています。この検証段階での成果を踏まえ、将来的にはHTSベースの球状トカマク実証機やデモ炉の建設へと進む計画です。

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他社との違い
  • 上海市系ファンドなど、地方政府主導の「未来産業」戦略の一角として位置づけられている点
  • 高温超伝導磁石を用いた球状トカマクにフォーカスし、コンパクトかつ高磁場な装置コンセプトを前面に出している点
  • 2030年代前半の商業出力デモを標榜するなど、商業化タイムラインが比較的前倒しである点

B. M&A / Exit

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
Aqua Cultured Foods/US非開示/破産手続き代替シーフード企業の破産申立て
Enact Solar/US非開示/買収PV設計ソフトPVComplete買収
Fortech/IT非開示/買収EV充電管理ソフトElectriEase買収
EA Technology/GB非開示/買収配電系の電圧制御Fundamentals買収

C. プロジェクト系

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
Aer Soléir/IE$287.6m(£216.3m)/PF Debt伊蓄電池250MW案件のプロジェクトファイナンス
Heelstone Renewable Energy/US$200.0m/Debt再エネ開発パイプライン向けデット枠
Aspen Power/US$200.0m/Debt分散型太陽光と蓄電池の開発資金
Inpasa/BR$177.0m(R$950m)/PF Debtトウモロコシ由来エタノール設備の建設融資

参考文献・出典リンク一覧

一次情報・企業プレス・公的資料

CTVC

CTVC Issue 279(本稿は同号の「Deals of the Week(2026/1/12–1/19)」を起点に、一次情報で裏取りし独自に要約・分析しました。先週号は #278)。

略語集

略語正式名称・説明
CTVCCleanTech VCのニュースレター名
M&AMergers and Acquisitions 合併と買収
PFProject Finance 事業からのキャッシュフローを返済原資とする資金調達
VCVenture Capital ベンチャーキャピタル

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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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