AIデータセンターに巨額資金が集まる週 DayOne $2.0B、Taaleri €630m、Exus PFデット$400m|クライメートテック資金調達 #020

AIデータセンターと再生可能エネルギー設備に巨額投資が流れ込む様子を描いたイラストアイキャッチ

今週は、〔スタートアップ資金調達〕に$4,141.3m、〔M&A / Exit〕に$64.0m、〔プロジェクト・デット〕に$760.0mが集まりました(合計$4,965.3m、非開示は集計外)。

目次

3行サマリー

スタートアップ資金調達動向:
DayOneがAIデータセンター向けプラットフォームとして$2.0BのシリーズCを調達し、Oranoの核燃料契約$900mやTaaleri SolarWind IIIの€630m(約$693m)ファンドクローズが続くなど、大型案件が集中しました。

プロジェクト資金調達動向:
Exus Renewablesの再エネポートフォリオ向けPFデット$400mに加え、インドのJuniper Green Energy/Waaree Energy Storage SystemsやフィンランドAistiの案件が並び、プロジェクト系の開示済み資金は合計$760.0mとなりました。

政策動向:
米国エネルギー省(DOE)がウラン濃縮の国内供給網構築に向けて3社に合計$2.7Bの長期契約を発注した一方、日本を含む他地域での今週の大きな新制度・価格シグナルは特段なしでした。

今週の資金調達動向

サマリー(USD概算)

グループ件数開示額合計主な資金種別代表案件
スタートアップ/コーポレート(エクイティ/研究助成等)13$4,141.3mSeries B/C、Seed、Growth、政府契約、ファンドクローズDayOneのシリーズC$2.0B、OranoへのDOE契約$900m、Taaleri SolarWind III Fund €630mクローズ
M&A / Exit4$64.0m買収、持分取得Plan Aの企業価値約$64mでのExit
プロジェクト系(PF/デット/資産売買)4$760.0mプロジェクトファイナンス・デット、PFエクイティExus Renewablesの再エネPFデット$400m、インド再エネ・蓄電案件のPF

— 注:合計は概算・非開示を除く。為替目安:£→$1.33、A$→$0.68、€→$1.10、C$→$0.74、¥→$0.0067(端数は$0.1m未満切り捨て)。通貨併記は一次発表に準拠。

A. スタートアップ / コーポレート

企業/国金額/ステージ概要主な投資家
DayOne/US$2000.0m/Series CAI向け大規模データセンターと電源インフラを統合したプラットフォーム開発Coatue、Indonesia Investment Authority系ファンドなど
ReElement Technologies/US$200.0m/Growthレアアースと臨界鉱物のリサイクル・精製拠点拡張のための成長資金Transition Equity Partners
Azimuth AI/US非開示/Growth自動運転やモビリティ向けAIモデルのシミュレーション評価プラットフォーム複数VC(詳細非開示)
Photonic/CA$130.0m/Growthシリコンフォトニクスベースの量子コンピューティング・通信プラットフォームBCIなど機関投資家
Cambium/US$100.0m/Series B防衛・航空宇宙向けの高度材料を開発するマテリアルプラットフォームSeries Bラウンド参画VC(詳細非開示)
Renewable Properties/US$40.0m/Growth商業・コミュニティ向け小規模太陽光発電プロジェクトの開発会社AB CarVal
Renewco Power/UK$39.0m/Growth欧州で太陽光・風力・蓄電プロジェクトを開発する再エネプラットフォームScottish National Investment Bankほか
Array Labs/US$20.0m/Series A多数の小型衛星からのデータを組み合わせた地球観測プラットフォームVCシンジケート(詳細非開示)
Biographica/UK$10.0m/Seed作物の環境応答データを活用するAI育種・アグリテック基盤Ag系VCファンド(詳細非開示)
Bloemteknik/DK$4.0m/Seedデータセンター冷却やパワーエレクトロニクス向けの高効率冷却技術開発クライメートテックVC(詳細非開示)
Black Bull Biochar/UK$5.3m/Late Seed林業残渣などを原料にしたバイオ炭生産とカーボンクレジット販売TSP Venturesほか
Orano Federal Services/US$900.0m/政府契約米国での低濃縮ウラン供給能力拡大に向けたDOEとの長期契約米国エネルギー省(DOE)
Taaleri SolarWind III Fund/FI$693.0m/Fund Close風力・太陽光・蓄電(BESS)案件に投資する第3号再エネファンドの最終クローズEBRD、European Investment Fund、欧州機関投資家

DayOne — 特集

DayOneがSeries Cで調達した資金をもとに拡大するAI対応ハイパースケールデータセンター事業のイメージ(出典:DayOne)
DayOneのSeries C超大型調達とAI対応ハイパースケールデータセンター戦略を象徴する公式ビジュアル
(出典:DayOne「DayOne Data Centers Announces Over US$2.0 Billion Series C Financing」)
会社の概要

DayOneは、米国を拠点にAIワークロード向けの大規模データセンターキャンパスを開発する新興プラットフォームです。電力コストが低く、低炭素な電源と送電インフラにアクセスしやすい地点に拠点を置き、マルチギガワット級のデータセンター容量を順次立ち上げる構想を掲げています。今回のシリーズCで$2.0Bという非常に大きな資金を確保し、一気にパイプラインの開発・建設フェーズへ加速しようとしています。

何ができるのか

DayOneが提供しようとしているのは、AIやHPC向けのハイパースケールデータセンターと、その裏側で動く長期的な電力調達をワンストップでまとめた「インフラプラットフォーム」です。クラウド事業者や生成AIスタートアップは、自ら電源開発や系統接続の調整を行う代わりに、DayOneが開発したキャンパスに対してラック容量や電力枠をまとめて確保するイメージに近いです。また、エネルギー事業者にとっては、新規の低炭素電源や送電設備に対して長期の安定需要を提供してくれるオフテイカーとして機能し、プロジェクトファイナンスを組み立てやすくする役割も期待できます。

技術のしくみ

DayOneの技術的な特徴は、IT設備そのものの革新というよりも、「電源とデータセンターの統合設計」にあります。具体的には、再エネや原子力、ガス火力など低炭素電源の新設・増強と、AI対応の高密度ラックや液冷対応のサーバールーム設計を同時に進めることで、PUEや電力コストを抑えつつ、系統制約の大きい地域でも追加のデータセンター容量をひねり出す発想です。また、需要側として柔軟に負荷をシフトできるデータセンターの特性を活かし、グリッドにとっての調整力としても機能させる構想が語られています。

料金・導入の進め方

料金体系は公式には細かく開示されていませんが、一般的なハイパースケール向けと同様に、ラック数や契約電力、契約期間をベースにした長期の容量予約契約が中心になるとみられます。顧客側は、個別プロジェクトごとに土地や変電所、電源開発を調整するのではなく、DayOneがまとめて開発したキャンパス単位で「〇MW×〇年」といった形で契約することで、社内の意思決定やプロジェクト管理を簡素化できます。このため、AIクラスタを急速に立ち上げたいプレーヤーほど、早いタイミングで候補サイトの選定や容量枠の事前交渉に動くことが重要になりそうです。

他社との違い
  • 従来のコロケーション事業者と異なり、発電所や送電インフラの開発とデータセンター開発をセットで進める「エネルギー+DC一体型」モデルである点
  • 設計段階からAI/HPC用途を前提に高密度ラックや液冷などに対応させ、将来の負荷増加にも追随しやすいキャンパス構想をとっている点
  • 長期の電力調達とデータセンター容量契約を組み合わせることで、電源側と需要側の双方にとって金融機関が評価しやすいキャッシュフロー構造をめざしている点
どこで効果が出やすいか/日本での示唆

DayOneのモデルが特に効果を発揮しやすいのは、AI向けデータセンター需要が急増する一方で、系統の空き容量や低炭素電源の開発余地が限られている地域です。電力会社やガス会社、再エネデベロッパーが協調しながらキャンパス単位で電源・送電・負荷をパッケージ化できれば、従来は接続困難だった場所にも新たなAIインフラを載せやすくなります。日本との直接的な資本関係や提携は現時点で特記なしですが、GX戦略地域でのAIデータセンター構想や、電源近接型データセンターの議論を進めるうえで、DayOneのような「電源込みDCプラットフォーム」の資本集約度やスピード感は強い示唆になりそうです。

B. M&A / Exit

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
ioki/DE非開示/買収ドイツ鉄道系のオンデマンドモビリティ・デジタルプラットフォーム事業の売却
Njord/NO非開示/買収洋上風力向けサービス船舶ポートフォリオを保有する事業の持分取得
IWS Services/NO非開示/統合洋上風力関連サービス会社同士の統合によるスケールメリット追求
Plan A/DE$64.0m/Exit気候会計・ESGデータSaaS企業のExitで、企業価値約$64m規模の取引

C. プロジェクト系

企業/国金額/資金種別・ステージ概要
Exus Renewables/PT$400.0m/PF Debt欧州と北米の再エネ発電ポートフォリオ拡大に向けたプロジェクトファイナンス・デット
Juniper Green Energy/IN$226.0m/PF Debtインド国内の太陽光・風力発電案件向けプロジェクトファイナンス
Waaree Energy Storage Systems/IN$111.0m/PF Equityインドでの蓄電システムおよび関連再エネプロジェクトへのPFエクイティ投資
Aisti/FI$23.0m/Debt木質系を活用した音響・断熱パネル工場建設のためのEIBによるデットファイナンス

参考文献・出典リンク一覧

一次情報・企業プレス・公的資料

CTVC

CTVC Issue 278(本稿は同号の「Deals of the Week(2026/1/5–1/9)」を起点に、一次情報で裏取りし独自に要約・分析しました。先週号は #277)。

略語集

略語正式名称・説明
AI人工知能(Artificial Intelligence、AI)。大量のデータから学習して予測や判断を行うソフトウェア技術全般。
DOE米国エネルギー省(U.S. Department of Energy、DOE)。エネルギー政策や研究開発、原子力燃料供給などを所管する米国の政府機関。
BESS蓄電システム(Battery Energy Storage System、BESS)。電池などで電力を蓄え、需要ピーク時などに放電する設備。
HALEU高アッセイ低濃縮ウラン(High-Assay Low-Enriched Uranium、HALEU)。ウラン235濃度が5〜20%の原子炉燃料で、次世代炉での利用が想定される。

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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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