Natureが「EV Switch」発売—家庭コンセントをスマート化し自家消費率向上

Natureは2025年10月31日、家庭用EVコンセントをIoT化する「EV Switch」を発売しました。既設200Vを生かし、アプリとLTEで賢く制御します。太陽光の余剰をEVに回す“低コストな自家消費”が現実味を帯びてきました。

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3行サマリー

  • Natureは「EV Switch」を2025年10月31日に発売。既設200V+Mode2ケーブルで遠隔・自動化します。
  • 内蔵LTEでクラウドと連携し、タイマー・天気予報連動・売電連動などで自家消費優先の充電を実装します。
  • 東京都の「戸建住宅向け充電設備普及促進事業」で「外付け通信機器」に該当。条件充足で機器代の助成対象です。

EV Switchの要点(何が新しいのか)

Natureは「EV Switch」で、家庭のEV充電を見える化と自動化の両面から刷新します。発売日は2025年10月31日です。提供は当初、正規取扱企業やパートナー経由の法人向けに限定します(個人向け直販は検討中)。

本体はEV用200Vコンセントに接続し、4G LTE(LTE-M常時接続)でクラウドに連携します。ユーザーはアプリから遠隔ON/OFF、スケジュール充電、状態監視(充電中/待機中/停止、経過時間、kWh、料金目安)を行えます。IP44相当の防雨、単相200V・16Aの普通充電に対応します。

さらに「Nature Remo E」とスマートメーターを組み合わせると、契約容量に応じたブレーカー落ち防止や、売電発生時に自動で充電開始する余剰連動を使えます。サイバーセキュリティはIPAの「JC-STAR★1」に適合し、アグリゲーション連携の下地も整えます。

アプリとサービスの位置づけ(Nature Home/他社連携)

Natureの制御アプリは基本的に「Nature Home」です。一方、パナソニックの「おうちEV充電サービス」は同等ハードを採用し、パナソニック専用アプリで操作します。要するに、ハードは共通、アプリはサービス別(=ハード共通×アプリ別)という設計です。

この二層化により、提供各社はアプリ側で料金メニューや需要応答(DR)連携、見守り機能などを柔軟に追加・更新できます。機器は据え置きで、運用だけをアプリ更新で変えられるため、普及のスピードが上がりやすい構造です。

どう自家消費率が上がるのか

自家消費率を上げる鍵は「余剰時間に自動でEVへ送る」ことです。日中の晴天ピークに合わせて充電を前倒しすれば、売電より自家消費を優先する運用になります。タイマーに「平日昼の窓」「週末前夜の窓」を設定し、天気予報連動を併用すると効果的です。

余剰連動は「売電が発生したら有効」をオンにするだけです。あらかじめ設定した売電量を超えた時に自動で充電を開始します。家庭の購入電力を抑制しつつ、PVの自己利用を増やす設計です。負荷が重なる時間帯は、ブレーカー保護ロジックが充電開始を遅らせます。

なぜ今か(制度・料金の背景)

2025年度下期から、屋根設置や住宅用の調達価格に「初期投資支援スキーム(いわゆる二段階価格)」が適用されます。初期の数年間に回収を前倒しし、後半は低単価になります。結果として、後半になるほど「売るより使う」の動機が働きます。

住宅の売電単価は中期的に低下傾向です。だからこそ、PV・EV・蓄電の三位一体で、昼の自家消費と夜間の安価帯充電を組み合わせる設計が現実解です。EV Switchは、この運用をタイマーと自動化で無理なく実装します。

導入のハードルと助成(東京の例)

EV Switchは、東京都の「戸建住宅向け充電設備普及促進事業」における「外付け通信機器」に該当します。申請・要件充足で機器代の全額助成対象です。設置には電気工事が必要で、壁埋込、露出ボックス、屋外支柱など複数の施工パターンがあります。

価格は未公表ですが、既設200Vコンセントを活かす設計のため、専用ウォールボックス新設と比べて初期費を抑えやすいと見込めます。

制約と確認事項

仕様は単相200V・16Aの普通充電です。急速充電、V2H/V2Gは対象外です。利用には200VコンセントとMode2ケーブルが必要です。計量制度は適合ですが、アプリでの計量表示は未実装と明記されています。精算や課金用途は適合可否を事前確認してください。

家庭の同時使用機器が多い場合、契約容量(A)に合わせたブレーカー保護を有効にし、夜間安価帯と日中余剰帯を上手に切り替える運用が安全・経済の両面で有効です。

日本の市場的意味(HEMS×EVの再定義)

国内ではPV・蓄電・EVの統合制御需要が拡大しています。EV Switchが大手の住宅向けサービスに採用された事実は、HEMSを「EV起点の操作パネル」として再定義する動きだと解釈できます。DRやアグリゲーションとつながる前提のセキュリティ適合も市場形成に寄与します。

私は、当面は既設200Vを賢く使う「低コスト×スマート充電」が量産モデルになると思います。理由は、配線更新や大規模工事を避けられ、導入体験がシンプルになるからです。ユーザーの費用負担が下がれば、普及カーブは一段と立ち上がります。

出典(一次情報・公式ページ)

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この記事を書いた人

・ニックネーム:脱炭素メガネ
・所属:国内大手エネルギー企業
・担当領域:新規事業開発(経験10年以上)
・主なテーマ:次世代再エネ、カーボンリムーバル(DAC/DOC/BECCS/CCUS)、グリーン水素(AEM/PEM等)、LDES、次世代原子力(SMR)、核融合 など
・役割:クライメートテック分野の全社的な戦略策定・実行のリード、スタートアップ出資(スカウティング〜評価〜実行)

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