パナソニックは2025年10月31日、「おうちEV充電サービス」を拡張しました。IoT制御で夜間の割安時間に自動充電し、アプリで料金と使用量を見える化します(2025年9月時点DL1万)。
3行サマリー
- パナソニックはIoT制御モジュールを提供開始し、時間帯最適化と電気代の見える化を実装した(2025年10月31日)。
- アプリは丸紅新電力(11/10予定)とENEOS Power(12/1予定)のプランを追加し、料金提案機能を強化する。
- 特定計量制度の活用でEV分の電力量を分離可能となり、家庭側EMSの実装が現実解に近づく。
何が起きたか:アプリ×IoTで“時間連動”を標準化
パナソニック エレクトリックワークス社は、戸建てEVユーザー向けアプリ「おうちEV充電サービス」の機能を拡大した(2025年10月31日)。同社は2025年2月に同アプリを提供開始し、2025年9月に累計1万ダウンロードを突破した。今回の拡張では、アプリと通信するIoT制御モジュールの提供を開始し、電気料金の低い時間帯に自動で充電する「オフピーク充電」と、充電量や電気代の見える化を実現した。さらに、家庭の充電行動を“挿すだけで最適化”する日常体験を前提化した点が前進だ。
仕組み:モジュール+200Vコンセント+アプリの三点セット
同社は「IoT EVコンセント」をIoT制御モジュールと200V EVコンセント、アプリで構成する。IoT制御モジュールはNature社製の専用品番(EVSW-6B1-P)で、アプリと連携して充電量・料金を見える化し、スケジュールに沿った制御を行う。
特定計量制度の活用時は、EV充電分の電力量を分離計量してEVのみ割安単価を適用できる設計を採用する(制度適用には同モジュールとパナソニック製200V EVコンセントの設置が必要)。また、遠隔操作や自動スケジュールで“手放し運用”を実現できる点も利点だ。
料金メニュー連携:丸紅新電力とENEOS Powerを追加
アプリの「電気料金プラン・シミュレーション」には、2025年11月10日(予定)に丸紅新電力、2025年12月1日(予定)にENEOS Powerのプランが追加される。丸紅新電力のプランは、EV充電量とそれ以外の電力量を分離し、EV充電のみ安価な単価を設定する国内初の枠組みと説明されている。さらに、アプリ上の試算で“安い時間にどれだけ充電できたか”を即把握できる点も、継続利用に効く。
背景:制度とスマートメーター高度化で家庭EMSが主役に
日本の制度整備は、特定計量制度の導入で家庭内の分散エネルギー資源(DER)を対象にした新サービスを後押ししている。次世代スマートメーターの導入準備も進み、アグリゲーター制度やDR(デマンドレスポンス)の普及と合わせて、家庭側EMS(エネルギー管理システム)の基盤が整いつつある。家庭のEV充電が時間連動で最適化されれば、再エネ余剰の吸収や需給ひっ迫時の抑制に寄与する。
ユーザー価値:支払い最適化と“気にしない運用”
利用者の主価値は、夜間など割安時間帯への自動シフトによる電気料金の低減である。アプリの見える化機能は、充電量と請求インパクトの把握を容易にし、料金プラン選択の合理性を高める。また、IoT制御モジュールの遠隔制御やスケジュール運転により、「挿しておく→あとは自動最適化」という運用が定着しやすくなる。さらに、ポイント付与や節約額の即時提示が続けば継続率は上がる。
日本の接点:DRメニューとVPPへの“入口”
特定計量でEVだけを切り出す設計が一般化すれば、家庭がDRやVPP(仮想発電所)に参加しやすくなる。送配電事業者のDRメニューや小売各社の時間帯別料金と連動することで、家庭のEVは「系統の柔軟性」を担う小さな電力リソースとなりうる。最終的には、家庭のEV・PV・蓄電池を統合した“ミニEMS”が価値を最大化する。
競合・補完関係:家庭×マンション×公共の役割分担
戸建ては200Vコンセント+アプリ制御が主戦場になる。一方、マンションは共用部の課金・予約・監視が鍵で、クラウド課金や認証基盤を持つ事業者が強みを持つ。公共や商業施設の急速充電と自宅の普通充電は補完関係にあり、どこで充電しても家計に最適化される「総合最適」の実現が差別化要素になる。併せて、課金・認証・予約の一体UXが鍵だ。
筆者の視点:UXが普及速度を決める
私は、家庭向けDR/VPPはUXが普及速度を決めると考えます。根拠は3点です。
- 導入がラクであること。 工事と初期設定を同梱し、訪問は最短一度。迷わず始められれば離脱は減ります。
- 効果がすぐ見えること。 夜間シフトの節約額をアプリと請求で即表示。「安くなった実感」が翌月に明快だと継続します。
- つながりが広いこと。 料金プラン、車載アプリ、PV・蓄電池、スマートメーター、地域DRを横断連携。連携が増えるほど節約幅は伸びます。
制度の下地は整いました。残る差はUI/UXの作り込みと、パートナー連携の厚みです。ユーザーが「挿すだけで賢くなる」と体感できれば、普及は加速します。
出典(一次情報・関連情報)
- PR TIMES|パナソニック「おうちEV充電サービス」機能拡大(2025年10月31日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000006465.000003442.html - パナソニック「おうちEV充電サービス」製品ページ(最新情報・アプリDL)
https://www2.panasonic.biz/jp/energy/ouchiev/

